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シャドウノート - shadow note -  作者: シャーネ
プロローグ -王城崩壊編-
6/6

1-6.王城崩壊



夜を瞬間的に昼に変えた鮮烈な白き光が、城門から城の入り口上部に浮くオバハンに向けて牙をむく。


白き雷光はその暴力を解き放って、余波で城門の一部と城の入り口を破砕し、崩れた瓦礫が地に落ちて爆音をたてるより早く、


腹の底から鳴り響くような轟音が鼓膜に打撃をあたえる。


ゴロゴロロロオゴロロロロ!!!!!!!!!!!!!


天地が壊れるような轟音に思わず、耳をふさいでしまったため、右手に持ったエリスが地面にベチャリと落ちる。

再度持ち上げると、エリスは血を垂らしながら弱々しく抗議した、しっかり持ってなさいよ・・・と、ほんとすまん。


「・・しぶとい。が、ロゼ様の呼んでらっしゃいます。 ここは逃して差し上げますわ。ご老体。」


そうクスリと嘲るとセラフィナは蒼白な顔に無理に笑顔を作ると、城門上部からフラフラと飛んで、俺達に合流。

俺の傍までくると、前のめりに倒れそうになったので、抱きとめる。真っ黒に炭化した左腕が白い肌と相まって強烈な

違和感を出している。


「大丈夫・・・なわけないな。 だが、死ぬなよ!」


コクンとだけ頷くとセラフィナにはもはや、国旗を纏う力も残されていないのか、ハラリ国旗が落ち、美しいが一部が黒炭と化した裸体をさらけだす。

抱きとめたセラフィナの脇に腕を通して、右腕で同じく蒼白の表情をして苦悶する蓑虫エリスを、右手で気絶しているポンの首を後ろから掴み、

セラフィナの右手を俺の肩に回させ、左腕でセラフィナを脇から持ち上げ駆ける。

柔らかい感触。  っは!!

手がああああ、 手があああ、 セラフィナの豊かな乳房にジャストフィットしていた。

口に入り込む鉄の味。 鼻血。 ううむ。 緊急事態だから許してください! 


俺の後方の中空では、白煙が視界を妨げているが、夜風によってそれが取り払われると、 杖と手をクロスして 防御しているオバハンが確認できた。

だが、防御は完璧ではないようで、衣服は焼けただれ、帽子は吹き飛び、むき出しになった肌からは黒ずみとなった部分が目立ち、

満身創痍な様子が見て取れる。かろうじて、浮かんでいられるといったところだ。

いや、オバハン? ババアだな。

明らかに一挙に年老りに変貌したババアは、か細い光を全身から発散させると、眼下に向けて唇を震わす。


「小娘がああああああああああああああああ!! デプスっ!!!! シャドウノートをだせ! 彼奴らを逃すでないっ」


背後からそのような怒声がきこえ、横目でみやりながら、足は止めない。


「シャドウノートっ? し、しかし、あれは前作が失敗に終わってから試作運転すら・・ 」


「ワシの言うことが聞けんのかっ 小童!! 炭に変えられる前にとくゆけ!!」


慌てふためく金ピカが姿を消し、広く馬車が3台は横に通れそうな石橋上で、散発的な兵士を蹂躙し、

時には川にゴブリンが人間を川底に突き飛ばしながら、走る、走る。

間もなく、対岸だ。 俺が公開処刑の憂き目にあった噴水の、壊れた女神像を視界に収めることができた。

思い出したくもない記憶がよみがえる。 思えば、ここにいる大半は俺と同じような格好だ。 ナカーマ。

対岸に向かう橋の上には兵は10を超えない。


いける。 逃げ切った。


走る隣の人間やゴブリンから、安堵と喜悦が入り混じった感情が表情となって溢れ出る。

怖気づいている障壁を切り飛ばし、投げ捨て、突き殺し、突破。

天に輝いていた星空は息を潜め、遥か彼方にみえる山脈から青白い光が漏れ光っている。



その時、巨大な地響きを立てて、へしゃげた城門を吹き飛ばしたソレが顕現した。


ソレは一体なんだというのか。

背丈は城壁と同じくらい、ゆうに5mはあるだろう。

どこのガン○ムだよ・・・  いや、使徒か? なんの使徒かっていうと、あれな。

全身を黒く染め、ところどころに奇妙な黄色と紫の線が入っている。

四肢を持つ人型ではあるが、手足の形状は細く長い。反して肩部分は膨れ上がっている。

巨体に見合わぬほど小さな頭部は仮面のような無機質な形状をしており、やはり黒で染められ、首にあたる部分はなく、

これ以上の詳細はこの距離ではわからない。


右肩の先端に先ほどのババアが乗っており、逆側には金ピカは震えながらもが肩の黄色の歪な穴に剣を差し込み、落ちないように

両手で剣の柄を握っていた。


「カカカッ!! 薙ぎ払え! 」


その言葉にラピュ○が思い出された俺を責めないでほしい。

思考をかき消すような白い発光が巨体の胸部、紫の穴から出力され、角度を45度から水平へと撃ち流す。

ジュワッと触れた先から溶かすほどの超超高温度の電子ビームとしかおもえないその光線は地を溶かし、

橋に一文字の穴を穿ち、俺らの集団を駆け抜け、背後で横たわる砕けた噴水の女神像の首を両断し、中央通りと思しき

4車線はある広大な街路の中央に亀裂をつくり、街なかを切断していった・・・・。

ぶっとびすぎている威力だった。

そして、背後に住民が寝ているであろう街に向けての砲撃。

頭のネジもぶっとんでいるに違いない。


さりとて、その攻撃で、集団の中の人間とゴブリンの子供が死神の光線から逃れられずに身体を焼かれ、絶息している。


死体の断面は焦げており、血も出ず、半身となって横たわる様は嘔吐感がこみあげる。


嘔吐感が収まるに連れ、反比例して血圧が急上昇していく。


「主サマ!! ヒキマショウ! ハヤク!」


ゲティスの叫びが背後から掛かる。


首を掴んでいたポンを怒りの形相をはりつけたままゲティスに預ける。


恐慌状態となった集団は、バラけて逃げ出そうとするが 恐怖のため足がもつれて倒れた者もいる。


橋に足をめり込めせながら巨体が橋の中腹まで指し掛かる。

ババアの狂った笑声が癇に障る。


2本目のビームは、川底に向かって放たれ、盛大な水しぶきを上げながらやはり角度を徐々に持ち上げて、

東の街路へと逃げ駆けている先頭を行く人間を溶かし葬ると、背後にある3階建ての屋敷を一刀両断にしたところで光線がおさまった。

撃つごとに魔力を消費するのか、砲門と思しき胸部の紫の穴は黒に近づいていっている。


「カッカ、、、カカカカカッ!! 逃がすものかっ! ま~~~ずは逃げるものからじゃ。

 誰一人として許容せぬ。一欠片の肉片すら残さず、一切の感情すら灰にし、

 泣きわめけ、叫べ、そして死ねえ!死にさらせ!! 下等生物どもっ!」


穿たれた穴、光線によって甚大な被害をだしつつある街なみ、そして、焼け焦げ、もはや焦点のあわぬ永遠に意志のもどらぬ

目をした男性の死体、祈る間もなく殺された半身しかこの世にないゴブリンの子供。

ババアの声にこみ上げている怒りメーターがさらに上昇、レッドゾーンに突入。

俺の怒りが伝わったのか、意識を取り戻したエリスがか細い声を紡ぐ。


「なにしてんのよ・・・ 逃げなさい・・ もうアタシも・・助けてやれないわよ・・」


「エリス、頼みがある。力を貸せ。 おまえの持つ最高級の魔法を今、俺に教えろ。」


「なにいってんの・・ できるわけないじゃない・・ 魔素をさっき認識したばかりの貴方じゃ構成式もしらないじゃない・・」


「ああ! わっかんねーよ! だから、構成だけ頼む、 俺は結局おまえらの足手まといにしかなってねえ、俺の力で救えるとは

全員おもってねえ、 必ず復讐してやるとかいいながらここまでの惨状になるとは考えていなかった俺の判断ミスだ。

変な力を手に入れてうぬぼれて、おまえらみたいな存在がはじめて見て、浮かれ上がっていたよ。

おまえにはじめ、俺は上からみてんじゃねえっていったが、本当の意味でそんな目でみてたのは俺のほうかもしれねえ。

俺はあのババアや、 糞みたいな連中と同じになりたくないっ。 だから、 壊す。 力を貸してくれ。魔力は俺が全て注ぐ!!!!」


「はは・・・ アンタやっぱり馬鹿だったのね。」


エリスの弱々しく悪態を継ぐが、顔を挙げて柔らかく微笑む。


「いいわ! やってやろうじゃないのっ」


そう言葉を紡ぐと、朝日が照らす光で赤色の髪で反射しつつ、詠唱をしはじめる、俺は鎖の中を、強引に指の皮を掻きむしりながらなんとか

ねじりこますと、エリスの手を握って力を注ぐ。


体中の力が右腕から吸い取られていくようだ。


歯を食いしばり、それでも全力の力を右腕にそそぎつつ、エリスを握る右腕に力を込める。


明朝の清浄な空気を肺に吸い込んで 後ろに控えるゲティスに叫ぶ。


「ゲティスっ!!! ポンを降ろして、こっちに来い!! 次にあのデカブツが攻撃しようとしたときに一瞬でいいから気を引いてくれ!

頼む。 おまえにしか頼めん!」


「ウケタマワッタ!」


ゲティスはポンを瓦礫に頭を添えるように寝かすと、右手に槍をもったまま、左手の剣をかなぐりすてて、噴水へと走りだす。


「侯爵!!!!  生き残った者を率いて逃げろ!!」


「何!? しかし、そなたらはどうするのじゃ!」


「問答している暇はないっ 早く行け!!」


「・・・承知!必ず生きて追ってこい。」


侯爵に助け起こされ、負傷したものたちは肩をよせあって、ゆっくりと、だが確実に東へと歩を踏み出す。

収まることをしらないババアの笑いが怨嗟を含み、デカブツがゆっくりと胸部を逃げ出そうとする集団に向きなおり、

黒紫色から紫に変色、淡い光が胸部に灯り始める。


「ゲティーーーーーーーーッス!!!!!!」


噴水に水の中で静かに横たわる女神像の頭部をゲティスは右腕で引きずりだすと、助走をつけて全力でデカブツに向けて投擲!

さらに左手の槍を右手に持ち替えて、走りを止めることなくもう一擲!

魔力を帯びて、青白い光の軌跡を描く2条の光。

ひとつは、右肩に鎮座するババアへ、 もうひとつは左肩で剣の柄を握りしめている金ピカへ。

音速を超えるようなスピードで迫った石塊は金ピカの足元、デカブツの左肩に刺さる剣の柄に直撃し、粉砕された

石破片が金ピカを打って、川底へ叩きおとして、盛大な水しぶきを上げる。


一方、ババアを狙った青槍は杖によって叩き落とされるが、金ピカが落ちたことで剣の制御がなくなったのか

デカブツの姿勢が崩れ、天へ向って胸元から凶悪な光を迸らせ、雲に吸い込まれる。

全身火傷のボロボロババアは即座に左肩へと飛び移り、杖を捨て、剣の柄に手を携えている。


「おしかったのう!! しかし、ワシが制御するからにはそんな攻撃はもはや効かぬ!!」


そういうと、セラフィナがさきほど放ったと同様の紫色のドーム状態の不透明な干渉壁がデカブツを覆った。

そして、姿勢を立て直すと、砲門を再度逃げゆく集団に向けようとする。


くそっ!! まだだっ! まだっ!たりないっ!


朗々と詠唱を奏でるエリスの顔は青白さを通り越して、白くなり、冷や汗がとめどなく流れている。

対して、俺は全身全霊の力をエリスの手を介して送り届けているが、エリスの身から発生する文様は ところどころに

薄くなり、崩壊しようとする。

俺の魔力に依存している分、俺自身が構成式への理解が足りず、ミスリルの吸収力に負けているのだ。


があああああああああああっっっ!


そのとき、左腕にかかえる、セラフィナがぼうっと呆けた表情でこちらを見る。直視する。


白昼夢、 霞む視界、 力を入れ続けているのに、 視界が重なる、 意識が遠くなる。






人目を盗むかのように、大自然の中にある麗しい村。

周りは山脈で囲まれ、高低差のある地形であるため、自分が住む家からこじんまりとしているとはいえ情緒ある村と森が一望できる。

扉を開けて、静謐な空気を吸い込み、瞳を開けると、紫の輝きが森林から風にのって、青色の空に幻想的な光景を醸し出している。

小麦が植えてある場所から見知った顔がこちらに向かって歩いてくる。


「お父様! おかえりなさいっ。」


「ただいまっ! 俺の愛しい天使ちゃん!!」


切れ長の紅い瞳に、目を隠すくらい長い前髪に、同じく腰までたれかかるような長い艶やかな直毛。

少し彫りが深いが、イケメンの4文字をほしいままにするだろう 背丈は190cmはあるのではないかとおもうほどで

引き締まった身体が服の上からもわかる。

その男は精悍な顔つきをだらしなく弛緩させて俺の頭を優しく撫でた。


「元気だったかい? お母さんも帰ってくる予定だったんだけどね、仕事がさ 立てこんでてね。

 お父さんしかもどれなかったよ、ごめんね」


「ううん、お母さんがいそがしいの、わたくはしっていますもの!お父さんだけでも、帰ってきてくれてありがとう!」


長髪の男は優しい笑みをうかべると、膝を屈めて両腕で俺を抱きしめると手をとって家の中に一緒にはいった。


「またすぐ発つことになるかもしれないけど・・・ 時間がゆるすかぎりはここにいるよ。」


笑みと同じ、優しい声音が耳に心地よい調律を奏でた。




・・・



・・・





「ちがうぞ~~。 天使ちゃん。 構築しながら魔力を注ぎこむんじゃ~ない。 魔力を注いでから構築するんだ。」


「構築・・  ああ、 作るという意味だよ。 築くという意味もあるかな。 家とかね、牧場とかね、つくり上げることをさして用いる言葉なんだ」


「お、 できるじゃないかー。 さすが俺の天使ちゃん!」


「む、そうか 分かった。 じゃあ マイハニーでどうだ。 あ、 マイハニーはお母さんだった。 むううう。 では、マイスウィートだ!」


「そ、そうか。 なら天使ちゃんで。」


「こればかりは譲れん! というのは建前でな。 名はあまり呼んじゃいけないんだよ。 特に俺たちはね、 ちょっと人とは違うんだ。

 気軽に名前をよべば、束縛してしまうほどの魔力をもっているから・・・ だから、あだ名でよぶことをクセづけたほうがいいんだよ。」


「やったな! おめでとう! しっかし凄い威力だなあ。 お母さんびっくりするぞ!」


「うんうん、ウィンディアもあの年では並外れているからなあ。 だが、天使ちゃん? あれでもウィンディアはおまえの2倍

 いきてるんだ。 ・・・ あん? あったりまえよ。」


「こら、天使ちゃん!! いくら飛べるようになって嬉しいからといって、高度がたかすぎるぞ。 いっきに高いところにいくと大気がうすくなるわ、

気圧がひくくなるわで体調をこわしちゃうぞ?」


「まあ・・・ たしかにそうだが、 娘よ、いつのまに。 俺、まじで抜かれちゃうかも?」


「おーい、遊びにいくならウィンディアちゃんにこれわたしてくれー、お父さん特製弁当だっ!一人でたべちゃだめだぞ。」


「ん~。 これはお父さんの必殺技だっ、教えるわけにはいかんなあ。  ぬぐぐ、 仕方ないなあ。」


「おぉぉぉ、 できるようになってきたじゃないかー。 だが、まだまだだな。 ハッハッハ。」


「こーら。 牛や馬が怖がるから 村の中でやるんじゃありません。 罰として今晩は飯抜き!  ・・・お父さんも抜くから・・。

もう村で練習しちゃダメだよ。」


「天使ちゃん、ウィンディアもやるなあ。 」


「ほら、飲みなさい。 いいかい、天使ちゃん。 君には天賦の才能がある。 だけどね、 世の中にはその才能を妬む人もたくさ~んいるんだ。

  ・・・  そう。 だから、ここにいるんだよ。   ・・・ いや、厳しいだろうね。 天使ちゃんは、村のみんなが好きかい?

 ・・・  だよね。 俺もね、天使ちゃんが大事だよ、だけどお母さんも、村のみんなもだ~~~い好きなんだ。 一族とはいえ、俺らみたいなのは珍しいほうなんだよ。

だから、この環境を壊したくないんだ。」



「なに? ウィンディアが? どうしてそんな所へ。  ・・・  連れ戻すぞ。俺がいこう。   ・・・ああ。 シルフィーに連絡を頼む。」


焼け落ちる村。 錯乱した大人達。  焼けただれる肌。 触れることが叶わない透明な壁。

鎧に身を包んだ集団。 黒い巨大な影。 そして、 その影に腰掛ける黒いとんがり帽子を深くかぶっている、小太りな女性。

 

爆光が村と山脈の一部を切り取り、右腕を失った、長髪の男性。

鎧をきた黒ずくめの男達に連れさらわれる金髪の少女達。

男性から迸る白き雷光、 倒壊する巨大な影。

天に顕現し、炎を振り落とす茶髪の女性。




「・・・天使。 俺を、、、 飲め。   ・・・ああ。 いつまでも一緒だ。 おまえの中に俺がいる。 逃げろ。

 そして、シルフィーのやつに伝えてくれ。 すまなかった、と。 約束をまもれなか・・」


止めどなく溢れる涙。身を焦がす激情。明滅する意識。


割れた窓ガラスが俺の姿を映す。


紫銀の美しい髪、 紅い目をした少女。




ああ・・・  これは・・・  セラフィナの記憶・・・ か。


突如として、視界が一転、血の気を失ったセラフィナが首にかけた腕をはずし、背中から俺を抱きすくめる。

凄絶な赤光と文様に埋め尽くされた俺の右腕に白く美しい右手を重ねあわせ、優しげに言う。


「エリスが”唄う” ので、 続いて 言の葉を重ねてください・・・。」


赤光に紫銀の光が混じり、光り輝くバイオレットの色が俺の持つ白光色に交じり合って、薄い赤桃色となって荒れ狂う。

薄れた文様がクッキリと浮かび上がり・・・ 構築の過程が理解、膨大な情報量が頭の中を駆け巡る。

全力で全開でエリスの手を握る右手に力込め、俺の腕に添えられているセラフィナの右手を左手で重ねる。

その様子に魔法ババアが一際甲高い怒声をあげて、デカブツがかつてない光を胸部に灯し、その熱量を物理世界に召喚、

一条の光が眼前に迫るっ!!



「仮初の主である我が命じる「仮初の主である我が命じる」「仮初の主である我が命じる」」


「汝・・・「汝」「汝」」


「地に穿て、海を裂け、天を滅ぼす炎となりて、灰塵と化せ「地に穿て、海を裂け、天を滅ぼす炎となりて、灰塵と化せ」「地に穿て、海を裂け、天を滅ぼす炎となりて、灰塵と化せ」」


「第9階位業炎魔法  天翔烈超炎 <<ヘル・フェニックス>>!!」


「第9階位業炎魔法  天翔烈超炎 <<ヘル・フェニックス>>っ!」


「第9階位業炎魔法  天翔烈超炎 <<ヘル・フェニックス>>!」




刹那、 俺達を覆う規模の大容量の幾何学文字郡が俺達から消失、突如として天を貫く火柱が橋を崩して巻き上がり、


辺り一帯を完全なる昼へと変貌させる、


デカブツの放った光線を吸収! 紅蓮の炎を持つ神鳥が火柱から羽ばたき、紫状のドームを火の海に変えて蹴散らすと神速でデカブツを貫き、


触れたところから闇色の炎がデカブツを瞬時に灰へと変貌さしめ、


鳥の羽ばたきはもはや瓦礫とかしている城門を完膚なきまで粉砕、


とどまることを知らず、城の右側の支柱をへし折り、炎上させ、城の裏側の城壁すら燃やし溶かし、


鳥はその神がかり的な速度で直進し、裏城壁の奥に見える草原に火柱を上げると、天の雲を吹き飛ばしてようやく消えた。




さぞかし壮麗であったろう城を繋ぐ橋は焼け落ち、瓦解し、下半身を残して消失したシャドーノートと呼ばれていたデカブツは橋とともに水面へと沈む。


頑強で、何十人が押そうとしてもビクともしなかったであろう城門は原型すら留めておらず、無防備な内面をさらけだしている。 


内面である城は、6つある塔の内、3つが倒壊し、本丸である城は、もはや城とはいえない。


入り口は崩壊し、柱は倒壊し、庭園から、部屋から、瓦礫が散乱する入り口から、切断をのぞかせる塔から炎の息吹が聞こえる。 


燃え盛る音だけを耳に残して、 セラフィナを担ぎ、エリスを持ち上げると、ゲティスを従えて、侯爵の向かったであろう路地に歩を進めた。


朝日が城を照らし、水面に光を反射させながら、不自然なまでに静まり返った城下町は鳥の鳴く声すらしない。







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