びんちょうのなつにほんのなつ
もやしとツナの蒸し煮
水洗いしたもやしはひげ根を取る。別にとらなくてもよい。
土鍋(無ければフライパン)にもやしを敷き詰め上からツナ缶(中の汁ごと)を入れる。他の野菜を入れても美味、キャベツやきのこを混ぜても良い。意外とトマトやセロリもいい味が出る。
少々の塩、酒を振りかけて蓋をして蒸し煮にする。
最後に粗挽き胡椒か七味を振りかけて出来上がり。
ある程度蒸しあがってから卵を落とし入れて巣篭もり卵にしても美味。半熟状態の黄身をもやしに絡ませるのも個人的には好みである。卵は人数分入れる方が安全、けんかになることがあります。
熱々を楽しみながら麦焼酎のロックでも、飯の菜にも良い。
タイトルにつきましては除虫菊由来の香とは特に関係ありません。まったくないと言ってもいい?今日はビンナガマグロについて騙りましょう。
ビンナガ、通称としてはビンチョウマグロ、トンボ、ビンナガといってもあまり通じません。ビンチョウで普通に通じておりますが語尾にタンとつけないでください。それはすでに別物です、幼女に擬人化しないでください。
拙作では通りの良さと私が馴染んでいるのでビンチョウという名称で通させてもらいます 。
名前の由来は胸鰭(鬢)が長いこと、比較的小柄なマグロでかつおサイズの冷凍物がよく入荷しております。冬場には10キロサイズのものがフィーレ(三枚卸)やコロ(固まり)で入荷されますし、夏ごろには丸(一匹丸ごと)で入荷されることが多いです。このマグロ自体もよく食べられるようになったのはここ十数年くらいでしょうか?それまでは関西のほうで食べられていたりツナ缶の材料として利用されていた気がします。
利用法としましては刺身にスシネタと定番を初めといたしまして切り身にいたしましてムニエルとか煮付け等もおいしい物であります。私のいた店では切り身のたれ付けでねたの薄い時期に冷凍物のビンチョウを切り身といたしましてタレに絡めて売るということはよくやっておりました。一番よく売れているのは西京味噌と照り焼きのタレ……西京味噌は何につけても売れ筋になりますな、ということで
「西京味噌最強!」
等と言っておりましたら駄洒落かよと突っ込みの声が、実際にデータで示したら
「西京味噌最強!」
と同調しております。はいはい……
身の質はマグロと考えますと薄紅色の肉質とか少々マグロと違った気がいたしますが、マグロと考えずにビンチョウと考えればこれはこれで美味なものでございます。ビンチョウは食べるに値しないと言う人が多いですが美味な部分に当たっていなかったのか単純に好みでなかったのか前者ならば何たる不幸と笑って………げふんげふん。
お客様の中でも薄紅色の身の質を見て最初これはマグロ?などとご質問がちらほら、実際にマグロでございます。サイズはカツオだったりいたしますがマグロです。味わいについてもマグロと思って食べるからハテ?となってしまう部分がございます。ビンチョウと思って食べればそういう魚なんだなと馴染めるのではないのでしょうか?脂ののりのよい部分はトロビンとか称して売られておりますし、最近では認知されてきているのでありましょう。おかげでツナ缶がカツオに変わって………ツナってマグロじゃないのかと思って調べてみたらカツオもツナに入るとか英語圏の適当さはどうしたものでありましょうか(笑)
分類学上から考えればサバ科マグロ族でって、魚屋の考えることではない………魚食わない連中に細かい分類は必要ないってことでありましょう。最もツナ缶はグロッサリー(乾物や缶詰、調味料等比較的保存が利く商品を扱う部門。)の担当だから私には関係ございませ……
「ねぇねぇ、ばろちゃん(仮名)お客様から質問でどうしてカツオ使っているのにツナ缶なの?という質問が……」
おぃ!グロッサリー担当のパートさんよぉ、自分とこの商品くらい自分で説明できるようになっとけや!私鮮魚だぞ!
おっと、言葉遣いが……説明自体は先程の英語でのツナの基準を申し上げれば納得されました。そしてよく見ればマグロを利用した商品とカツオを利用した商品がございましてマグロのほうが高価だったりいたします。マグロが安かった時代というものは遠くなってきておりますねぇ、物価が上がっているのに給料は上がらない。悲しいものでございます。
「だから、ばろちゃん(仮名)派遣してないでうち来いよ!お前ならば売り場長まではすぐだからよぉ!給料だって出世すれば上がるぞ!」
どうしてそっちに持っていくのでありましょうか店長。
「店長、彼がばろ君(仮名)か?最近鮮魚の成績がよいからその原因が彼と?」
「切り手としての実力はそこそこなんでしょうが、接客と商品知識面で固定客をつかんで近海対面を中心に前年比……」
どうしてそっちに持っていく!そして何で本部のお偉いさんが私のところに
「そういえば彼は某店舗に暫く居たが彼がいなくなってから前年比………」
「あの某店舗の悲劇(笑)……関連商材まで微妙に落ち込んで立て直すのに売り場長が泣いていたあれですか?」
そこまで面倒見切れません。
ビンチョウマグロの加工としてはマグロというよりもカツオの加工法に通じるものがございまして大型のマグロですと固まり(コロ)にしてから柵取りいたしますが、小型のマグロですと筋(三枚おろしにしてから半分に割る)で提供することが多く皮引き等もカツオの手法を流用いたします。
そして面倒臭がって結構無視いたしますが血合いとか頭とかも身あらで出して追加利益も得ることがあります。取れたてならば内臓も……と言いたい所ですがそこまでは中々、マグロ類は内臓から焼けて痛むことが多いので小さなマグロでなければ内臓は即抜いてしまいますので。
しかしカツオよりビンチョウマグロの皮は薄く柔らかいからかきれいにいかないのであります。こればかりは数をこなして感覚をつかんでもらわないと………
ところで新人君、何アップしているのかね?
「ばろさん(仮名)売り場での取り組みとか工夫点をアップして自分の名前を売ろうと、将来店長とか目指したいじゃないですか!腕のいい派遣さんを見て自分のスキルアップ!とりあえず、目標としておいて……『オレが楽するために腕のいい派遣さんに寄生すれば……』」
寄生云々は書くなよ。怒られるから(笑)で、返信が来て『では、練習用に送り込むからどんどん売り込め!』……お前何しやがる!『ついでだから派遣さんにきり方教わっておけ!』おいっ!『いつになったら彼は来るのかね?ちゃんと口説かないと……』ここでもかい!
そう言う事でどんどん商品化、
「親方失敗しました!」
親方言うな!失敗したら刺身に作り直すんだ。これで刺身の練習にもなる。どうした?
「お客様の注文が来て、オレやっていいんですか?」
どんどんやればいいだろう、やれば成長するんだ。所で何手が震えているんだ?
「緊張して……」
「新人君が固まっているわね。これが緊張の夏というべきかしら。」
お客さん、誰がうまいことを言えと………
新人君、今日もがんばっております。
そういえば、一番最初に切った魚が冷凍物のビンチョウで当時トロビンの握りとか称して馬鹿に売れていたのを思い出した。スシネタばかり切っていたら『ネタ師』なんて呼ばれた覚えが……それ違うから!
今日もしけ続きでろくな魚が無いか高い。早めに切り上げて酒でも飲もう。




