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魚屋がふざけて言ってみる  作者: valota666
適当に綴る日々
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ねこまたぎ

ひらめの肝


ひらめの肝を塩水で洗い血とか抜く。

酒と塩を振り掛ける。

あらかじめ熱しておいた蒸し器で蒸す。時間は20分くらい。(肝の大きさと量にも拠る)

たたいてひらめの刺身に合わせる肝だれを作るのもよく、そのまま辛味大根のおろしと醤油、好みでポン酢もよろしい。塩気の強い味噌と合わせて肝味噌なんていうのも嬉しい。肝味噌は大蒜等と合わせてトーストに塗るのも美味美味。


肝味噌トーストは冷やした酒にあう。肝味噌に砕いた胡桃とかというのもなかなか悪くない。浅葱やラッキョウの微塵も加えても美味と思われる。私もこれはと思えるひらめの肝に出会えた機会が少ないので、試すのはなかなか少ない。




 猫もまたぐ魚というものは多々あるとされておりますが今回はその中でもヒラメについて騙ろうかと思います。タイトルは猫にかまってもらえない私の悲哀がこもっているわけではありません。最近猫撫でくりまわしていないなぁ。


 ヒラメと言いますとカレイの親戚筋の高級魚なのではございますがやはり旬がございまして冬が美味で梅雨頃から夏場は産卵して身が痩せてしまい『六月ヒラメの猫マタギ』等と言われたりするのでございます。それでも水揚げされていますので物がよろしければ刺身材料として利用するのでございます。そんな言葉を知っているお客様なんてそれほどいませんけどそれはそれ………

 勿論につけやら焼き物にしても美味ではありますがカレイと比べてやや身が堅めなので刺身が美味とされております。逆にカレイの刺身がちょっと身が柔らかくておろしづらいかななんて言うのは私の感想ですが………

 まぁ、それはそれといたしまして天然でも養殖でも相場は高めでありますので刺身以外で使うとなると売りづらいのは現状でございます。


 さて、ヒラメと言えば刺身。この辺は定番と言えば定番と言えますでしょう。生食系の食べ方ですとこぶ〆やサラダ仕立て、カルパッチョ(常々思うのだが以下略)、漬けにしてヒラメ茶漬けなんて言うのも美味美味。

「にーちゃんヒラメって縁側だけを売ることできないのか?」

 忘れていました、縁側。カレイ、ヒラメ類のひれ周りの筋肉あれは独特の触感で美味なんですよね。そればかり好むお客様は存在いたします。この時はヒラメが1キロサイズでしたので量がなくてごめんなさいしたのですが、冗談半分にアブラガレイの縁側を用意したらパック(500グラム)で買ってくださいました。どれだけ縁側が好きなのかと思ったけど美味しいは正義なのだろう。

 

 ヒラメの産地と言えば日立沖から三陸沖が関東では有名であります、先の震災で一時入荷がありませんでしたがここ最近となって日立沖、三陸沖を中心としておりますが入荷しております。風評があるからなのか震災前より安めな気がいたしますが味もよく、重宝しております。

 ここで、放射能が心配と言っているお客様に懐かしいわね故郷の味だと言われるお客様、大体どちらもお年を召したお客様なんです。若いお客様だと放射能検査しているから大丈夫でしょとドライだったり、どちらかというと脂ののっている魚を選ばれたりでヒラメは特別な日のご馳走的なとらえ方をしているみたいであります。別に気取ったものとして取らないでもよろしいですよ。相場が安い時はお手頃価格にしておりますから。

「懐かしいわね、あの海…………やっと、魚が戻ってきたのね。」

 お客さん、お客さん………色々とコメントしづらいので私は黙っていていいですか…………はたから見ていると何かの物語のエンディングみたいなんですけど…………


 ヒラメが刺身だけと考えていらっしゃるお客様、切り身にして煮つけやらムニエルやら………

「よく考えましたら舌平目のムニエルというものがありますね。」

 ヒラメはヒラメでもヒラメ違いです。そんな勘違いはとりあえず心の内にしまってお勧めするのでございます。普通においしいですし………ついでにムニエル粉も売れますし(ゲス顔)。美味しく食べてもらってお客様に満足して購入してもらえれば多少の勘違いや沈黙も問題ないでしょう。

 とりあえず韓国産ヒラメを国産としなければ(韓国産ヒラメについている寄生虫で発症事例あり、国産養殖物には防疫体制が存在するが韓国産には不明。)とはいえ、天然物が十分にあるからあまり養殖物は利用していないのでございますが。


 勿論、ヒラメの身だけを売った後に残る骨等も美味なのであります。あら煮を作ったり、骨を煮出して煮凝りにしたり………大きなヒラメの新鮮な肝を蒸してアン肝みたいに食べてもこれは美味美味。知られていないのを良いことに肝だけオミヤにしていた職人さんを私は知っています。肝が美味なことはその職人さんに教わったことなのですが………

「うん、ばろちゃん(仮名)は良い酒飲みになりそうだからこれは覚えておいてもいいだろう。」

 若かった私は酒飲みになるのかと思っていましたが今となって思えば酒飲みになっております。あの職人さんの言っていたことは間違いではなかったと…………一升瓶片手に綴っていたりしています。おかげで赤い鼻と突き出た腹、その体型のおかげで美味しいものを知っていると認識されて売り上げに貢献したりしているのですからどうしたものでありましょうかね。

「にーちゃんがいると旨い魚を教えてくれるから楽でいいや。ずっといるんだろ?」

 いえいえ、私は派遣。刃を抱いた渡り鳥なんで………

「渡り鳥?どう見てもドードー鳥とかカカポとか……丸々太ったカモでも……」

 やめて、私絶滅しちゃう!って言うか旨いものを知っている職人さんは絶滅傾向だよなぁ……後太ったカモってなんだよ、ネギしょっているのか?

 

 さて、梅雨時期だけどヒラメが入荷しているからさばいてみるか……普通に刺身用にできるな。

「にーちゃん、それ一節ちょうだい。」

 そして、ヒラメの刺身が売り場に並ぶことはなかった…………まぁ、いいか。


 ヒラメが並ばないことに少々の苦情があったのは笑い話。そしてその日の終業後。

 公園に地域猫を愛でに行く。ヒラメのきれっぱしを見せたのだが………見向きもされなかった。


 うむ、これこそ猫またぎ! ちくせう。

前話のタイの話題鯛素麺と合わせて七夕に公開すればと後悔したりしなかったり。

猫にまたがれた悲しみを癒すために酒でも飲もう。

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