どうよ?の丑の日
ウナギの梅肉和え。
梅干しは種を取り叩く。
胡瓜は薄切りし塩もみをして水を切る。
茗荷も千切り。
ウナギ白焼きは暖めてから一口大よりも小さく切る。
其々の材料を小鉢に盛り、合わせながら食べる。
吟醸に合う。ウナギに梅干しとか考えてはいけない。
タイトルはどうでも良い物であります。タイトルから連想されるようにウナギの話題を騙りたいと思います。ウナギ多いし・・・・・と言うタイトルにしようか迷っているのはどうでもよい事であります。
さて、ウナギと言いますと夏の土用の丑、ウナギの旬は冬眠前の晩秋から初冬なのでありますが栄養価が高く淡白で食べやすいことから夏の栄養源として珍重されております。大伴家持が夏痩せした知り合いにウナギが良いという歌を送った等と言う話もあるくらい薬食いとして重用されていたのであります。
それが土用の丑にどうつながるのか等と言えば、平賀源内だか太田蜀山人が土用の丑に食べる【う】のつく食べ物を食べる風習と結び付けて広めたという説が一般的でございます。
もともとウナギは【ムナギ】と称していたらしいのでわざと訛らせたか江戸訛で鰻となったかその辺はどうなのでありましょう?
ですから、土用の丑は瓜とか饂飩とか梅干しとか外郎を食べればよいのです。
「なぁ、ばろちゃん(仮名)お前の担当言ってみろ!」
これはこれは、鮮魚の店舗巡回指導担当さん、私の担当は鮮魚の切り身・近海魚でありますけど何か?
「鮮魚だったら、ウナギ売れ!」
いやぁ、たれの匂いで飽きてしまって・・・・・・・・
実際の話と致しましてこの時期となりますとうなぎのたれで嫌気がさしてしまった、ウナギが苦手だ等と言うお客様の話を度々耳にするのでありますが【う】の付く物の薬食いの話を致しますとお客様は納得されまして、その手があったかと売場に向かうのでございます。勿論ウナギを買われたうえでございますが。
「所でさ、ばろちゃん(仮名)肉売り場で説明するのは良いけどさ、牛も売り込んでくれよ。」
当時牛肉食の習慣無かったでしょうが!
土用の丑の話題はさて置きまして、ウナギの売り上げの面白い所は気温が上がると需要が高まるのであります。まるでアイスクリームみたいだ等と思ったのは否定いたしません、実際に気温が25度以下と以上で売れ方が数割ほど変わったり致します。ですから冷夏や雨天で気温が下がった状態ですとウナギが売れなくて泣けてくるのであります。これが土用の丑と重なると・・・・・・・
鮮魚担当者が売れてないぞとお叱りを受けて泣けるのであります。ですから土用の丑が近づくにつれて熱くなれとか晴れろとかと祈る姿が・・・・・・・・あちこちで見られるのであります。
そういえばこの時期の風物詩としてウナギの産地偽装のニュースとかありますなと言うと途端に嫌そうな顔をする鮮魚担当者。この時期になるとお客様からも叩かれるのであります。勿論そんな事は致しませんよ、単純に馬鹿が間違えるくらいで・・・・・・・・店舗でそれをする旨みがないですし、ばれたら面倒でしょう。売上あがっても給料変わらないのだから(暴言)
「一応、俺達のボーナスとか評価が・・・・・・ばろちゃん(仮名)関係ないふりしているけど。」
実際関係ありません(笑)、って、言うか態々この時期を狙って流すのですかねぇ?マスコミさん。
さて、食材として見るならば丸で入ってくることはなく蒲焼若しくは白焼きの状態で加工されて入荷されます。おかげで詰めるだけで楽々、この時期は切り手の私は仕事が無くて開店休業状態。
「さぼるなよ!」
いえいえ、仕事しておりますよ。ちゃんとお客様にどのウナギが美味しいか説明して差し上げたりふっくらとなる温め方とか・・・・・・・・ウナギのかば焼きが苦手なお客様の為に鰯の開きを作って蒲焼でもどうでしょうか等とも提案いたしておりますし。
「微妙に鰯の売上あがっているのはばろちゃん(仮名)のせいか!ウナギ売れ!ウナギ!ウナギは単価が高いのだ!」
その当時、鰯一尾70円、ウナギ一尾980円。言わんとしていることは判ります。ウナギはイベント食材ですものね、一人流れに逆らうのはいけませんのでウナギのたれでも焦がしまして・・・・・・・・・
匂いだけでご飯食べようとしない!落語じゃないんですから!
ウナギのかば焼きがそれだけで完成された食べ物ですので他の調理法が思い浮かばないのがウナギの弱点でもあります。入荷段階でかば焼きと言うのも原因でありましょうが、うまき(ウナギ入り卵焼き)うざく(ウナギ白焼きの酢の物)肝吸い、半助(ウナギの頭)・・・・・・・蒲焼の関連でした。
って、言うか半助入荷してくれよ!あれ私好きなのに・・・・・・・・
「ばろちゃん(仮名)、どうしてマニアックな注文するかな?手に入らないよ。」
新宿の飲み屋で食べたらうまかったのに・・・・・・・・・手に入らないなんて・・・・・・うぬれ、無能なバイヤーめ!
「むしろ、そういう物を見つけ出す嗅覚の方がいつも不思議に思えるんだが・・・・・・・・・むしろつれてけ!」
だって、バイヤーさん車通勤でしょうが。
国外に目を向けると炒め物にしたりゼリー寄せにしたり燻製にしたりと言う話も聞きます。古代羅馬ではご馳走の一つとしてウナギが供されていた等と言われ、美味に関する感覚は洋の東西を問わないものだなと思ってみたり。実際に生のウナギを手に入れて煮込んでみたら美味でした、ゼラチン質のプルプルとした皮にぽくっとした白身、丸のまま筒切りにしてもこれはこれでありだなと・・・・・・・
問題は入手手段なのですけど・・・・・・・・・・こればかりは自力で・・・・・・・・・・
代用品としてアナゴとかでも、田鰻とかヤツメウナギ?あれはあれで美味ですけどウナギ以上に手に入りづらいでしょうが!
そして迎える丑の日に向けて販売計画・・・・・・・・・・・
「どうよ?丑の日!」
「ウナギの値段が高いのがネックですね。何でここ数年で倍くらいまで上がっているのですか!」
「ヨーロッパウナギが出てこなくなったのに、シラスウナギが取れなくてウナギ自体が品薄になっているんだ。この値段で売るために知恵絞れ!」
「ぐぬぬ・・・・・・・・・・・・・・」
マグロと言い鰻と言いクジラと言いあちらさんの日本たたきは酷い物であります。ほんのちょっと食べすぎただけじゃないですか。
「ここ百年で絶滅が心配されるほど食べるのは食べ過ぎ言わない!」
ごもっとも、ですが日本食ブームでマグロを食べまくっている欧米人と中国人に言われると腹が立つのはなぜなのでしょう?
ウナギの話題と言うよりも蒲焼の話題になってしまう、これがウナギの持ち味!生の鰻には微量の毒があるから流通しないというのが本当の話。生きていないと味が落ちるし、微妙に難しい食材なのであります。




