さわらないで
さわらのホイル焼き
さわら一切れ(冷凍物でも可)を塩胡椒しておく。
中に入れる野菜は水気が出ないものが好ましい、個人的には玉葱と茸。適当に切り、バターを塗ったホイルの中に入れる。
味噌1:マヨネーズ2~3の割合で混ぜたものをさわらの上に塗る。甘めの味わいが好きならば西京味噌、八丁味噌を入れるのもよい。個人的には信州味噌や田舎味噌で。さらに好みで七味や山椒も悪くない。
味噌が嫌ならばそのままで焼いて最後にドレッシングを好み出かけるのもよい。
ホイルに包んでからオーブンなどで焼く、最後に一度開いてからマヨネーズに焼き目をつけるのもよい。(火傷に注意)
これは、ビールか純米酒で。これつまみで食べておかずが無くなったと言う苦情は受け付けない。
感想でネタを頂きましたので綴ってみる作者@刃を持った渡り鳥であります。
今日は鰆の話題を騙ると致しましょう。鰆に関しましては実は関東地方にはあまり入らない食材であります。鰆の幼魚であるさごちに関していえば結構入るのでありますけど鰆本体に関しては関西から西にで人気の食材でありますから向こうで買い取られていくのであります。」
その辺の食材に関する温度差と言うのは色々ありまして、鰆とかアマダイとか特定の食材であればまず関東に流れてこないのであります。ケチな関西人が本気で手に入れようとする食材という物は数少ないようでありますがブランド名で言えば大半を占めていたりとか・・・・・・・・・・
関西人の名誉の為に言いますと彼等は自分が食べるのがブランドであるとはあまり思っていなくて信用できる産地の商品を食べたいと思っているだけであるのです。そういう意味で保守的な人種なのではと思っていたりするのですけど経験則からなる美味への嗅覚は面白い物であります。
鰆と言う食材は意外と上級者向けの食材でさごち程度ならば兎も角、鰆となると扱い方一つで色々身がほどけたりするものでございます。細かい職人さんともなれば仕入れて店に持ち込むまで自分で行わないと気が済まないと言った偏執狂が存在します。実際に私が受け取った鰆は運転手が投げるように取り扱ったが為に身が崩れている物が・・・・・・・・・・・・
これは返品で・・・・・・・・としたら私が怒られました。運送業者の扱いのひどさで返品としたら仕入れが割を食ってしまったみたいで反省反省。ただしその運ちゃんが運んだ商品は一つ一つ確認していたら次から運ちゃんが変わりましたのは笑い話。運ちゃんは数をこなして稼いでいるのだから一件で躓いていたら仕事になりませんですし、運ちゃんの親方がごめんなさいと来て別の者を差配してくれたのです。
おかげで私は頑固一徹な職人扱い、そんな事ないのに・・・・・・・・・・私はなんちゃって魚屋なんですが。
さわら自体も捌くのは難しくはないのですけど身が柔らかいので取り扱いを気をつけませんと身崩れしてしまいます。身崩れしたものを平然と売っておられるお店さんもありますが見た目が悪いと売れるものも売れなくなってしまいます。割れた部分を押し固めてごまかしている若いのがいましたが揺すってあげるのは先輩分の役割としてやったら涙目になっていた。悪かったから・・・・・・・・・・・私が悪かったからそな非道なことをしている目で見るのはやめてくれ。だけど、卸身を片側から持つのはだめだぞ。持つときは全体を柔らかくもつのです。
「そうだ、そうだ。おめえの彼女だったら片足吊りでもかまわないがさわらは丁寧に扱うものだ。」
「親方、俺のほうが片足吊りにされて・・・・・・・・・・」
そういえば、若いの私達と一緒におねーちゃんがいる店に行ったのばれたんだっけな・・・・・・・・・・
そんな若いののことは置いといて、彼女さん顔はやめてあげてね客商売なんだから。
さわらは難しくないと言い切りますけど扱いは丁寧に、切れる包丁でないと身が包丁に引っかかってグズグズになります。故に魚屋としての一つの技前がわかる部分でもあるのです、他に魚屋の腕を見るならばと色々ありますけど西のほうだとマナガツオを綺麗におろせれば一人前だなんて話も聞いております。確かにマナガツオは骨が柔らかくわずかな感触の違いを見極めないと楽しいことになります。
細かな感触というものはどの魚にもあるものですからさわらやらマナガツオだけが特に難しいというものではありませんが。同じ種類の魚でも思わず別の食材と思いたくくらいの差があったりとか・・・・・・・・・・・水氷に入ったサゴチ(サゴシともさわらの幼魚)を捌いているときに持った感触が違う・・・・・・・・・おやと思ってみてみるとゴマサバでした。おいっ!異物混入じゃないか!これの分ははじいて、原価計算しなおして価格設定を・・・・・・・・・・・・これも派遣の仕事か?
「だってばろちゃん(仮名)普通にできるでしょ?うちの若手達よりも。普通に仕入れて丸投げで大丈夫なんだから丸なげしないと。」
「下のが育たないですよ。」
「大丈夫、見て覚えろ質問しろと言っておいたから・・・・・・・・・ついでに育成よろしく。」
「おいっ!」
ちなみに私のやり方はその店の流儀とは違うので育った若いのは異端の売り場長となりました。上からは可愛がられているから別に良いけど。
派遣の職人さんから教わるのは店の主流派から外れる意味合いもありますからご注意あれ。
初めてさわらを捌くときに師匠筋に当たる職人さん(派遣の爺さん)から教わった一言。
「さわらはあまり触らないで。」
駄洒落かと思いましたけど、当の本人はいたってまじめに
「弄るといってしまうからな。」
今度はシモネタかと・・・・・・・・・・
「とりあえず捌いてみな、ちなみにこれ一尾5000円だ!」
ぶはっ!初心者に高級魚かよ!その時は緊張していたのは記憶にあります。初めてのときって緊張しませんかね?
頭を落として腹を開いて・・・・・・・・・・・・
「玉をつぶすなよ!後水もできるだけ使わない。身がふやける。」
上身を捌ききって・・・・・・・・・・・両手で下ろして・・・・・・・・・・・下身をひっくり返してから
「慣れないうちは良いが、ひっくり返すのも駄目だ。ひっくり返した衝撃で身が割れる。」
どんだけ柔らかい魚なんだ。と思いましたね、そのころの私はさわらを食べたことも触ったこともなかったのですけど・・・・・・・・・・・何とか横槍を受けながら捌いてみると身はグズグズ・・・・・・・・
「まぁ、最初はこんなものか。これは俺が処理しておくから・・・・・・・・・」
と失敗した切り身をどうにかするために自分のまな板に持っていく職人さん。でも私は知っている、私が失敗したやつを売り場に出せないからと原価で買い取って行った事と奥さんと娘さんがさわらを好物としている事を・・・・・・・・・つまりは私はダシにされたのです。
「ばろちゃん(仮名)、あたし達もゴチになるね。あのさわら脂乗っていて旨そうじゃない。」
パートさん達も・・・・・・・・
ちなみにそのさわらは脂が乗っていておいしかったです。(私は握りにしてもらいました。)さわらが生で食べられるとは世の中私の知らない美味があるものです。
その日はマネージャー(売り場長)に何無駄にしているんだと怒られたのはなんか理不尽を感じたのは若かったあの頃の反骨心からか?何度か挑戦してそこそこ出来る様になりましたのはよくある話。その時はさわらが何故か大量に仕入れられていて一日に何匹もおろしていたのですから上手くなるというものでしょう。
「普通そこまでたくさんおろせる機会という物はないからな。この店が売り上げがあるから出来ることだ。という事で次は天然ぶり10本だ。後カレイの切り身ないぞ、ババ(ナメタカレイ)とマコ(マコカレイ)を追加だ!」
さわらで腕を上げたと思われる若手だった私に思い切り品物を置いていくのであります。
その後この店を離れて色々しているうちにさわらを扱うことが少なくなりまして、あの頃食べた美味なるさわらを求めて夜の酒場をさまようのですけど出会えませんでした。西京漬けとか時折見かけるのですけど焼きすぎなのか硬くて脂っ気が・・・・・・・・
今度はそのときの味の記憶があってさわらは脂の少ない魚であると紹介することが多くなりましたのはよくある話。美味なんですけどね。脂が無いと言うと購入を取りやめるお客様、脂がほしければバターでも舐めておけと・・・・・・・・・・・この言い回しだと中国の詩人が書いた料理本のパクリといわれてしまうかな?
それでも時折よい状態のさわらが入ってくることがあります。瀬戸内のさわらは見かけませんけど京都とか房総とかの産が多いですかな。これを捌いてみると刺身で食べたら旨そうだなという欲求がムクムクとわきあがってくるのでございます。職場には婆とおっさんばかりで欲望は食欲くらいしか起きないですし・・・・・・・・・
それで捌いてみて、しらばっくれて刺身に混ぜてみたりするのであります。皮目を残すかなと皮目に炙りを入れて・・・・・・・・・・・うん、上出来。
そして刺身に混ぜていると
「これ何々?」「さわら?」「食べたこと無い!」「味見味見!」
どこから湧いてくるパートさん!そして興味深々だなバイト君。ところで他部門のおばちゃん達も見られるのだが何しているんで?
「調理見本を作る相談。そのさわらも美味しそうだね。」
「そりゃグラム400円もして不味かったらなきますよ。」
「となるとこのさわらでホイル焼きとか・・・・・・・・」
「ホカホカな物を出せば食卓も暖かいし、野菜も摂れる。」
「タレはどうする?」「俺ん所の味噌マヨネーズ。」
「肉系は同じくホイル焼きで?豚バラ入れても面白そうだし・・・・・・」
私の作ったさわらからイメージわかせるのはよいけど刺身の切れっ端をつまみながら相談するなよ、わさび醤油が私のまな板に飛び散るし作業の邪魔だ。切れっ端あげるから離れてくんない?
そんなこんなでさわらのホイル焼きの調理見本を作り上げて次の日に飾ることとなったのですが。
「さわらあります?」
「さわら、ないで。」
その日はさわらの入荷がありませんでした。
感想で御題いただきました。感謝感謝。
さて、酒でも飲もう。
注意事項:作業場での飲食は基本禁止されております。彼女等が刺身の切れっ端を食べているのはつまみ食いではなく素材の味の確認です。大事なことなのでもう一度言います。彼女達が食べているのは素材の味の確認なのです。出来上がりも一つは味を確かめたりしたのはもちろん言うまでもないですが。味がわからないものをお勧めとしてはいけませんので。




