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06 ~Misunderstanding~

「あ、やっと目を覚ましてくれたね」


 俺が目を開いて最初に見つけたのは意外にもなっちゃんやルナではなく、名も知らぬアリアの持ち主さんだった。

 でも、彼女はあの時死んでなかったっけ?


「私の名前はメイ・S・アズマ。あなたにMEを使用させた女です。その際はどうもありがとうございました」


 彼女がそういいながら深々と礼をするので、俺はそれに合わせて上体を起こした。


 そういえば彼女は熱線にやられて手に大火傷を負っていたはず……。

 その傷はきっと俺より重症なはずなのになぜ?


 そう思って彼女の膝の上に置かれた手を見てみると、その両手は包帯を薄く巻いてあるだけであった。

 あんなもので大丈夫なのだろうか。


「ああ、手……。手の事は心配ないよ。特殊魔法による治療があれば火傷も2,3時間で直るから」

「そうなんですか……」


 さすが現代魔法、と言ったところか……

 良かった、この人、メイさんも無事で。


「あの」


 俺はそうやって話を切り出した。

 

「俺ってこの後どうなるんでしょうか?」

「……多分、強制的に国家軍の戦力にされるね。なんせ今のご時世、いつどこで戦争が起きても不思議じゃないんだから」

「戦争には参加しません」


 メイは微笑すると、少し考え込んでしまった。


 だが、俺はそれだけは譲る気はしない。


「俺は、俺の大切な人を守るためにあれを使ったんです。だから、人殺しなんてしません」


 ばん!とメイの拳が強くベッドに叩きつけられる。

 その拳はベッドを波打たせて、俺に強い振動を与えた。


「アスカ君。守るために戦うって言ったね。そう。君は確かにそう言った。それはいい覚悟だけど、君の考えているほどそれは甘くは無い。守るために戦う、そんなの、軍に入ってる人なら誰でもそうなんだよ。まさか軍人が他人を殺すために戦っているとでも思ったの?」

「……い、いえ。別にそういうわけじゃ」


 どんどんベッドに乗り込んでくるメイに押されてアスカは逆に後ろに下がる。


「少し考えてみて、君の大切な人を襲うのはこの前は魔物だったけど、次は違う国の本当に赤の他人なのかもしれない。そんなとき、君ならどうするの? 人は殺したくないから戦わないの? そうじゃないでしょ。攻めてくる人たちも死に物狂いなんだから、戦わずに難を逃れるなんて無理なんだよ。だから、あなたの覚悟は足りないわ」

「……あ、あぁ」


 覚悟が足りない。

 自分では十分覚悟しているつもりだった。

 大切な人たちのためなら自分は死にかけても戦っていいとすら思ったはずだった。


 だが、そこには相手が抜けていた。

 戦うと言う事は魔物なり人間なりが敵と言う形で存在しているのだ。


 だがアスカはまだそれに気付けていない。


「ちょっと押し付けたくせに厳しい事言ったかもね。だけど、今のあなたの覚悟では、この先絶対に詰まるときが来る。……私がそうだったから」


 ぼそりと最後に付けたされた言葉はアスカの耳には届かない。


「じゃあ、どうすればいいんですか? 俺は今さっきまでその覚悟で戦うつもりだったんですよ」

「言葉で教えられる事じゃないわ」


 ルルルル、と内線が呼びだし音をけたたましく鳴らせた。

 メイはそれにいち早く反応し、それに手を伸ばす。


「はい。はい。分かりました」


 受話器を壁に戻すとメイはすっと立ち上がり、コートを羽織り始める。


「フロントから、君の連れが見舞いに来たって。……アスカ君のことは多分後日上層部で話し合われた結果、私か他の誰かが迎えに行くと思うから、そう思っといて」

「あ、はい」

「その時までに覚悟を決めておくこと」


 俺が返事をしないままメイさんは部屋を後にする。

 それとほぼ入れ替わりになっちゃんとルナが入ってきた。


「アスカ、大丈夫?」


 おっと、あんまりシリアスばっかでもつまんないよな!

 ここはとりあえず、気分を入れ替えていこう!


「おう、体の方はもうぴんぴんしてるぞ!」

「よかった。私の書く書類が少なくなる」

「そこかよ!」


 なっちゃんは口に手を当ててくすくすと悪戯っぽく笑う。


 そのあとふぅとため息をついていきなり真面目な顔になると、ベッドに乗り出して俺の頭をなでる。

 

「AAを使っちゃった時はどうなるかと思ったけど、無事でよかったよ」

「んなっ!? 辞めろよ、子供じゃあるまいに~」


 猫みたいな声を出してなでられ続けている俺をみてルナがぷっと吹き出した。


「so niedlich.」

「ちょ、おま、ルナ、今何て言った。日本語に訳しやがれ!」

「さんざん心配させたお返しだよーだ。」


 べー、と舌を出すルナに一瞬戸惑いながら俺はとりあえず頭をなでる手を下させる。


「意外と元気そうで良かった。本当に」

「おい、泣くなよ? 泣かれると俺がめっちゃ困るんだからな」

「いや、普通に泣かないでしょ」

「え!? それはそれでひどい……」


 とか、お互いに冗談を交わしながら話しているとさっきまでのシリアスな展開が嘘みたいだなと思えてくる。


「じゃあ、ここで授業を一つ」

「「えええ!?」」


 なっちゃんは壁をこんこんと叩き、白板オブジェクトをそこに顕現させる。


「さすが公共施設、オブジェクト化が早いですね。と、ここで質問。この白板は何でできているでしょう?」

「ん? さぁ」


 いきなりの質問ではあったが、じっさいそれも知らない。


「これは実は原料はそこら辺にある電子なんです。これの仕組みと言うのは、まあ、私も良く分かりませんが次元転移だそうです。空間に重力を発生させて空間にある電子を強制的に形にするのだとか……。それとこのオブジェクト化する機能、まあ一般的に言う「リアライズ」ですが、これは実は西暦以前の技術なんです。開発当初は莫大なエネルギーを必要としたためこんな贅沢な使い方はできませんでしたが、近年魔法学も進んできて、エネルギー問題は解決しました。具体的には約20年くらい前ですね」


 いきなり「リアライズ」について語りだしたなっちゃんの勢いは止まらない。

 俺とルナは顔を見合わせて一緒にため息をつくとそれを端末にメモり始めた。



____________________________________



 結局俺は目覚めたその日のうちに退院する事が出来た。

 眠っていたのは約1日で、その日はもう帰るだけになっていたんだがな。


 それにしてもなっちゃんには悪い事をしたと思っている。

 せっかく休養に来たのにこれでは全く休んだ気がしないだろう。


「まあ、別にいいよ」


 となっちゃんは言うけれども、バスの中を見ても彼女が一番疲れているように見えた。


「ところでルナはちゃんと休めたか?」

「……うん、まあね。誰かさんのせいでドキドキしたけどね」


 あ、はい。

 俺ですね。すいません。


「というか、アスカの方が逆に休んでるんじゃない?」

「そうですよ。1日くらい眠ってたわけだし」

「え? いや、そうでもないぜ。夢の中ではずっと考え事してたからな!」


 「あ、そう」と二人に言われてしまう。

 やっぱ機嫌悪いですよね二人とも。


 「はぁ」と、別の事でも悩みの絶えない俺だった……。

はい。

シリアス死んでるーww


やっぱああいうシーンって書きづらいなぁ。

なんというか


自分が鬱になってしまう↓



さて、どうでしたでしょうか?

なんだか説明口調になってしまうのがあれですが、楽しんでいただけたでしょうか?


感想を待っています。

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