01 ~Destiny fluctuation~
高校一年一学期末のテストも終わり、来週から夏休みに入ろうかという普通はわくわくするような状況下、俺は机に突っ伏していた。
「・・・ねむ」
不意にそんな言葉を吐いてから寝がえりを打つと教室の壁に頭を打ち、強制的に覚醒させられる。
俺は正直こう思うのだよ。
人がずっと起きているのにはそれなりのエネルギーがいる。
それならばずっと寝ていたらすごく省エネになるじゃないか。動くのは動くのを強制させられたときとか、動かざるを得ない時だけでも充分だろうに・・・。
まあ、本当に正直なところ、それはただの現実逃避であってそれ以外の何物でもないのだが・・・。
「授業終わんねーかなー・・・」
教室の前の方を見てみるとなっちゃんがものすごい形相でこちらを見ている。
まあ、なっちゃんだし、いっk
「良くないから授業を受けなさい」
「・・・せんせー、授業中に読心魔法を使うの反則じゃないんですかー?」
「読心魔法なんか使わなくたって考えてる事が伝わるくらい、今のあんたはだるそうなんだよ!」
「あ、そっすか」と言って俺はそっぽを向く。
「あ、そっすか。じゃない!ノートだけでもとりなさい!」
個人を注意してていいのかよ。授業進んでねーじゃん。
とか思いつつもノートを出して黒板の文字をささーっと写す。
俺、根は「いいこ」ですから。
自分で言って自分があわれになってくる・・・。
「じゃあ、あんたのためにもう一度説明するからよく聞いておくように」
「はーい」
この授業は「科学」という教科だ。
[アカツキ]ではこの科目を授業に取り入れ、先端科学と先端魔法学の両方をちゃんと知り、未来を明るくしてやろうとしているのだ。
なぜ科学と魔法学の両方を知っておくと未来が明るくなるのか。
その理由はやはり歴史にある。
それも古くない「レイトアルマゲドン」後の歴史。
歴史について語るのも飽きたので要点だけ説明すると、十数年前まで世界は幾度か戦争をしていたのだ。
その戦争の原因が魔法に対する偏見のせいだと言われているのである。
だから現代っ子は偏見を持たないよう、科学と魔法、両方を学ぶ義務があるのだ。
まあ、それは西暦以前の大人の押しつけであって、俺ら子供は魔法が自然の理に反しているからと言って嫌いになる事はまず無いと言える。
自分もその例外ではない。
そして自分は科学と魔法についてどうとも思えないのだ。
なぜならそれは俺が生まれた時から生活に盛り込まれていたからだ。
前時代的な大人は科学の後から魔法が入ってきて、すごく違和感を感じる人がいるらしいが、俺らは生まれた時からすでにあるため違和感を感じることすらできない。
「・・・また聞いてない。」
教壇の上からなっちゃんがこちらを睨みつけていた。
「まあまあ、そんなに怒らなくてもいいじゃないですか。試験では単位取れるくらいの点数取ってるんだし」
あ、怒ったかな?
先生が腕に力を込めてこちらにすたすたと歩いてくる。
「ほ、他の生徒の前ですから、暴力とか、あ、あんまり良くないんですけどね・・、も、もう許せません・・」
「じゃああとでにしません?ちょうど昼休みになりそうですし」
顔のすぐ目の前に迫ったなっちゃんにも見えるように黒板の上の時計を指す。
「あー、もう!今日の授業全然進まなかったじゃない!てかあんたに二度説明するために戻ってるし。どーしてくれんのよー」
「職員室にでも呼びだして説教すればいいじゃないですか。とりあえず授業終わらせないと皆待ちくたびれてるだろ」
お前のせいだろ。と心の内側から聞こえたような気がするが、気のせいと言うことにしておく。
「じゃあ昼休み職員室に来なさい。自分で言ったんだからちゃんと来なさいよ!」
「へーい」
「じゃあ解散!」
なっちゃんがそう言うと他の生徒が一斉にため息を漏らし、あるものは教室を出て行き、あるものはその場で弁当箱を開けた。
俺はなっちゃんの指示通り職員室に行くべく弁当箱を持って廊下を出た。
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「で、俺はなんか罰を食らうんでしょうかー?」
俺は校長室の前の面談スペースに座らされ、なっちゃんと対峙していた。
なっちゃんは一回はぁとため息をついて眼鏡を押し上げる。
「今年の夏休み、私の助手として一緒に生活してもらいます。」
「・・・・・・はああぁ??」
夏休みをこの教員と一緒に?
え、冗談だよな。
「冗談じゃありません。というか冗談であってほしい・・・。」
「あ、今度は魔法使ったでしょ。」
「これは校長直々の命令ですので、もし受けなかったら最悪退学もありえます。私の退職もあり得るんだから絶対付き合わせるよ。」
ま、マジですか。
こんなことになるくらいならちゃんと授業受けとくべきだったよ。
だから皆も人の話はちゃんと聞こうな!
「え、てかマジなの?俺となっちゃんが同居?」
「マジなの。あーもう、さすがに思春期小僧と一緒は緊張するわ。」
ここで説明。
なっちゃんことナナ・ヒメサキは俺のいとこである。
父が六人兄弟の一番下で、なっちゃんの母が下から3番目の長女の娘。
それで12歳も歳の離れたいとこが成立するわけだ。
昔はよくなっちゃんと旅行に行ったものである。
「昔思い出してんじゃない!」
「え、ダメなの?」
ま、それもそうか。
今の立場は教師と生徒。
やはり昔の様に遊ぶわけにはいかないのだろう。
「ちゃんと課題が出されるの。だからたぶん遊んでる暇は無いと思うよ。」
「そういうことかい!」
思わず突っ込んでしまった。
「で、その課題だけど・・・。まあ、論文の作成の様だね」
「はあ?論文?」
「いや、まあ、高校生だからそんな難しく考えなくていいと思うけど、魔法化学概論に関するレポートだね。いままでにも何回かやってきたでしょ?」
やったはやったが、中学校の話だ。
高校に入ってからはそんなにレポートを書く機会はなかったと思う。
まあ、思うだけだ。
「実際は高校に入ってから3回はレポート提出してるはず。科学技術のと、世界史のと、魔法物理の3回ね。どれもいい感じだったから今回のも何となくやってればできるんじゃない?」
それはどうだか、と思いつつ構想を練り始める。
「あ、ヒメサキ、ちょっといいか?」
「あ、はい」といってなっちゃんが校長室に入っていく。
持ってきた弁当の蓋を開けて軽く合掌してから中身に手をつけ始めると、なにやら校長室の中から騒がしい声がしてきた。
悪い予感が背中を走るが、中からなっちゃんが駆け寄ってこないところから、どうやら俺とは関係していないらしい。
俺が再びご飯に手をつけようとしたら校長室のドアが開いて、なぜかうなだれたなっちゃんが出てきた。
「おいなっちゃんどうした?」
なっちゃんは反応するそぶりは見せずにこちらに戻ってくる。
「ど、」
「ど?」
「夏休みの同居人が増えた・・・」
「・・・は?」
なっちゃんは何を言っているんだろう?
俺ほどのサボり魔がこの学校にこれ以上いるわけは無いだろうに。
「ルナレア・サクヤ・S・タールです。これから約一カ月と半月ほどお世話になります」
声の主は非常に可愛かった。
綺麗な銀髪が腰に向けて長く伸び、頭の上には花の模様をあしらったカチューシャをつけている。
背はそれほど高くは無いが、高校女子としてはまあちょうどいいんだろうか?たぶん150センチ後半くらいだ。
そしてなにより目を引くのは、その燃えるように真っ赤な瞳だった。
うちの白い制服と彼女の透き通るように白い銀髪の中に一点だけ浮かぶ真っ赤な瞳は俺の眼をくぎ付けにした。
そしてその唇がまた言葉を紡ぐ。
「よろしく」
さっさとこんな場面終わらせてバトルシーンを書きたい作者←
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