15 ~Daily~
波乱の夏休みが明けてすでに1週間が経とうとしていた。
その1週間の間には魔物が出たりとか、特に大きな事件は何もなく、ほぼ元通り平和なお昼寝タイムが……
寝たら電気ショック
戻ってくるはずもない。
俺には常時見張りをしてくるアリアと言う存在がこの夏休み中にできてしまったのだ。
「アスカ君、これアリスから」
「お、おう」
右隣の席の女子からそれを受け取ると、そのもう一つ隣にいるアリスをみてからその紙を開いた。
そこにはびっしりとアルファベットの列が並んでいた。
手紙……?
「お、俺にはアルファベットの羅列にしか見えんのだが……」
あーあ、せっかくアリスさんがアスカに書いたラブレターかもしれないのに、読めないなんて残念だねぇ……
いや、それはありえないだろ。
と思いながら携帯端末にそれを読みとらせる。
意外と普通の文ですね。
あとで一緒に購買に行こうだなんて。
ふと右を見るとアリスがこちらに顔をのぞかせて手を振っていた。
とりあえず笑顔で振り返しておく。
そのあとで「はぁ」とため息をついてから前に向き直る。
しかし、なぜ俺を誘ったのだろうか?
まあ、あいつと話せるのが俺とルナとフリートしかいないのも確かなのだが……。
「授業終了!あとチャイムが鳴るまでは自習」
いや、なんの授業だったかさっぱり分からんし……。
そう思いながらも真っ先に端末をポケットから引っ張り出していじる。
「È già gratis?Io andrò per l'acquistare presto.」
「はい、アリア通訳」
「もう自由なんだよね?早く購買に行こう。と言う意味です」
先生の話も結局分からないのか。
「先生はチャイムが鳴るまで自習だと言ったって伝えてくれ」
「Disse l'insegnante che era stesso-studio fino ad una campana suonò.」
「Oh, è ....Poi io studio un poco più.」
アリスはそう言うとおとなしく自分の席に着き、端末を出して何かをし始める。
じゃあもうちょっと勉強する。ってさ
言葉がうまく伝わらないのは不便だなぁ。
と思いながらも俺にはどうする事も出来ない。
まあ、ルナが必死で日本語教えてくれてるからすぐ喋れるようになるだろうけど。
なんとか聞き取れるところまではいったらしいし。
「しかしもうチャイム鳴るよな。先生も五分の自習時間を与えるくらいなら雑談でもして間を持たせろよな……」
言い終えた途端にチャイムが鳴り、それと同時にアリスが大きな音とともに席を立ち、俺の前に来る。
しかしなんだろう、たった数秒前なのに態度がすごく変わっているような……
「OK, andiamo.Andiamo adesso.Andiamo in un istante.」
「え、ちょ、校内でワープはまずいって!」
瞬間俺の意識は暗転し、すぐに戻る。
「こ、これでワープ3回目……。め、目眩がする」
「Io avevo fame.Comunque, io non ho un pranzo oggi.Dove è che io posso comprare cibo?」
「意味分からん」
「オナカ、スイ、タ?」
これは普通に疑問形なのか?
それとも言葉がよく分からないから疑問形になってしまったのか?
これは捉え方がとても難しい……。
「おそらく後者ですよー」
「だろうな…」
うちの購買は広いからな。
制服の販売やクリーニングをしてくれるコーナーに、文具が一通りそろうコーナー、読みたい本が読めるコーナー、その他もろもろ。
最早高校の購買というよりは小さなデパートの様なものだ。
実際、この学校は購買棟という建物ができていて、その大きさは勉強に使われるA棟、B棟等より広い。
「オナカスイタ!」
ぱぁっと。
超絶まぶしく輝く笑顔を俺に見せつけ、何をしたいのかというほど俺の腕をきつく締める。
「分かった!分かったから手を放して!カップルと間違えられるぞ?」
「Non è buono?Particolarmente.」
「よくなーい!」
お、俺もだんだんイタリア語分かるようになってきたか?
というかニュアンスで伝わるようになってきたな。
「っと……。俺和食で。こいつ洋食で」
「Grazie.」
用意された物をもらって手近な席に座ると、両方とも「いただきます」とだけ言ってあとは黙々とそれを食べていた。
アリスは最初にちゃんとお祈りをしていたので、もしかしたら「食事中はしゃべらない」なんてルールがあるのかもしれない。
そんな風に思いながら、アリスの顔を見ていた。
アリスが食べているのはスパゲッティなのだが、なんというか、すごく上品に食べている。
俺なんかが同じ物食べるとどうしても麺をフォークですくって食べているようにしか見えないのだが、彼女は麺をフォークで上手く巻きあげ、それから口へと持っていく。
ふと食べる動作が止まった。
「Vuole mangiare, anche?」
「あ、ごめん。そんなつもりじゃ」
「Apra una bocca.」
「え?あ……」
断ろうと開いた口にスパゲッティが巻かれたフォークが滑り込み、俺は反射的に口を閉じてしまった。
それは第三者から見ると誰が何と言おうと、その……「あーんして」というやつであって、そして俺はしかも俺は俺は俺は俺ははははhhhhhhh
案の定恥ずかしくなり、ボッとアスカは一気に顔を赤らめた。
「あ、あわわわ……」
「Oh, io sono bello.」
「お、おお、おお前はははhh、sそ、そういうのh、はずかしくないのかよ?」
「Io non ho molto vergogna.」
そんな、dだって、今のやつ、口に入れかけてたよな?しかもそれ以前に何口かすでに食べてたよね?こ、これって間接キスって奴じゃないの?
「アスカ……」
「っは!?」
ルナ!?
と後ろを向こうとするとグッと頭をつかまれる。
「る、ルナさん……?」
殺気、殺気、殺気がすごいですよー。
「アスカのバカ!そんなに食べさせてもらいたいなら私が……」
「え?」
「なんでもない!」
今度は正面でアリスがニヤリと笑ったような気がした。
背後ではルナが握った拳をぶつけるところがなくて困っていた。
「とりあえず隣もらうから」
そう言って空いている三つ目の席に着席した。
「ところでさぁ、俺達次はいつ出勤になるのかな?」
「出勤って……、まぁ、土日は訓練があるけど?」
「あ、そっか」
忘れていたわけではない。
実戦の方がスリリングで、爽快なのだ。
だから次はいつ魔物が現れるのかと、聞いたつもりだった。
現れなければ現れないほどいいはずなのに、俺は何を聞いているんだ……
最近休んでてすいません!
少なめですがこれで・・・。
やっぱ戦闘の方が書いてて楽しい!←
まあ、しばらくは書くとしたら日常系かなw