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11 ~source~

 普通じゃないんだ。

 私はもう、普通でいられない。


 そう思いながら貫かれた魔物の本体を見ていた。


 どうやらこれで終わり。

 今日のところは普通に戻れる。


 そう思って貫かれたはずの魔物にコアが再構成されるのを見た。


 あ、また普通に戻れないんだ。


 彼女の思考はとってもこまぎれにしか続かない。


「おい被検体! 魔物がっ!?」


 あ、私、体貫かれた。


 自分の事なのにそれほどにしか感じられない。

 すでに彼女の意識は魔物に奪われ始めていた。


 ロールアウトされたばかりの真っ白なAAが、魔物から浸食を受けて真っ黒に変わっていく。

 貫かれた鳩尾の辺りから体の中にまで触手が這うような怖気のする感覚が浸透してくる。

 それは十秒と経たないうちに私の頭の中にまで到達された。

 その感覚が首の下まで迫る。


 ああ、私はこうやって死ぬのだろうか……。

 結局夢だった普通の生活も手に入らずに。

 

 私がアカツキに留学してきたのは高校が始まってすぐだった。

 留学を志望した理由は、お父様には語学を学ぶためと言ってあったが、実際は一人暮らしをして少しでも普通に近い生活をしたかったからである。

 

 実際にアカツキに来てからはとても楽しかった。

 周りは私の素性など知らない。

 外国からやってきた女の子と見てくれた。

 

 その接し方も今までみたいに実験体としてではなく、「ただの」友達としてのもので。

 それは世間ではとっても普通なんだと分かっていても、それが夢だった私は嬉しかった。


 一人暮らしをするのにも、マンションの一室を借りて自由に。

 時には自炊するのが面倒でインスタントラーメンを食べてみたり、きっとごく普通な、誰とも変わらない生活を送れていたはずだ。


 なのになんで私はドイツに帰ってきてしまったのだろう。

 ドイツに帰ってきたらAAの実験体にされる事は分かっていたはずなのに……。


 だけど私はそんなことも忘れて、ドイツでのいい思い出ばっかり思いだして……。

 きっと現実逃避をしてたんだと、今では思う。


 ああ、ダメだ。

 もうそれが遠い昔に思える。


 もう終わるんだ。きっと走馬燈って奴だ。

 だから私の人生は結局異常なままで終わり。

 

 幕を閉じる。



____________________________________




 目覚めは唐突だった。

 ハッと目を覚ますと真っ白な天井が目に入る。

 だがそれが天井ではない事を知覚する。


 どうやらカプセルに入れられているらしい。

 私は特殊な液体に一糸まとわぬ姿で浮いていた。

 実験体として昔からあらゆることをされてきた私は、その状況を把握して騒ぐでもなく、特に大きな抵抗をせずにカプセルの外の真っ白な空間をうかがう。


 カプセルの外にはやはり白衣の研究者と黒衣の魔学者たちが大勢いて、私を見上げている。

 それらは自分の端末と私とを交互に見ながら、ときどき話し合っている。

 カプセルの中は外の音が完全に遮断されているので何も聞こえなかった。


 私はその白い空間にそれ以外の何かを見つける事が出来なくて詮索するのをやめた。


 そして、思ったのは。

 

 ああ、また生き残っちゃったんだな……


 そうしてカプセルの中で漂いながら解放される時を待っていた。


 いつもそうなのだ。

 私が実験をしてもときどき事故が起こる。

 確かに今回のは異例だったが、前にもAAが暴走した事があるのだ。


 私はその時もいつの間にか病院に運ばれていて、ベッドに寝かされていた。

 毎回、今度こそ死ぬかもと思うと次の瞬間にはこうして目が覚める。


「ルナレアさん。気分はいかがですか?」

「良好」


 端末を通じて一人の医師が私に話しかけてきた。

 

「それはなによりです。それでは今からあなたの置かれている状況を説明するんで、心して聞いてください」

「了解です」


 医師はめんどくさそうにため息をつくと説明を始める。


「あなたはMAAの実験中に敵性魔力結晶生命体と戦闘して、結果AAごと浸食されました」

「それくらいは把握しています」


 「あ、そう」と医師は続ける。


「浸食された後、ドイツのAA部隊と戦闘し、見事に部隊を破滅させました。それから隣国のAA部隊を要請しましたが、それらも撃退され、最終的にはアカツキのAA部隊があなたの捕獲に成功しました」

「アカツキの? それはまた遠くまで行っていたんですね。被害は?」

「被害は各国AA部隊の隊員が重体になったくらいで、民間人への被害は家屋の破損程度だったみたいですよ」


 それを聞いて少しホッとする。

 これでもし民間人など巻き込んでいたら私はどう謝っていいか分からなかった。


 重体にしてしまったAA乗りの人にはあとで謝りに行かないと……。


「それから、あなた自身の事ですが。あなたと戦闘した者の証言からコアが心臓の位置にあったという情報があったので、調べさせてもらったところ」


 聞く覚悟はできていますか?

 そう言わんばかりにそこで言葉を切る。


「……どうぞ」

「では。……単刀直入に言いますと、あなたはまだ敵性魔力結晶生命体に取り込まれたままです。いや、この状態からして取り込んだままという方が正しいか。表面上は分かりませんが、細胞の一部が敵性魔力結晶生命体のそれと同じ物とすり変わっていました」


 「え?」と分かっていながらも聞き返してしまう。

 医師はそれをめんどくさそうに流すと続きを言い始める。


「心臓もまだ魔物のコアと同化しています。そのため、今後あなたの体には変化が起こると予測されます。現在は身体能力が著しく上がるだけで特に体外的な変化は見られませんが、今後羽根が生えたりしてもおかしくないでしょう。それと……」

「なんでしょう?」

「脳を調べてみたところ、あなたの意識に壁を見つけました」

「壁?」


 意識に壁とはどういうことだろうか?

 そう思っていると医師がまたため息をつく。


「要するに、あなたは二重人格になった可能性があると言う事です。今後行動は気をつけるように。それと、身体能力が上がりすぎているのでAAで常に力を抑制する必要があります。そういうことで新世代型AA、ゴットフリートはあなたの所有物と言う事に決定しました」


 それはつまり厄介者を回されたということだろうか……。

 いや、そういうことなのだろう。

 フリートの方も浸食されていて危険な面があるのだろう。


「下にいる研究者たちがその事を調べたんだ」

「お礼を言っておいてください」

「分かった。それではカプセルから出るといい」


 医師がそう言うとカプセルの上部が開いた。

 そこから出るとすぐ脇には待機状態で黒光りするペンダントの形をしたフリートが置かれていた。

 私は指示通りに、まずそれを展開させて下着代わりにし、その隣に置いてあったYシャツとスカートを着て病院から出た。



____________________________________




 俺たちのAA部隊は見事大きな被害もなく帰還できていた。

 

 あれから3日が経つ。

 俺がルナが起きるまでここにいたいと言ったので、この3日間はこのドイツの訓練場を一つ借りて訓練をしていた。


 メイさんにこっぴどく説教された俺は、今日メイさん相手にPvPをやらされることになっていた。


 PvPとはPlayer VS Playerの略で、決闘ともいう。

 それは対人戦の特訓だと言う事だが、俺は正直効果はあまり期待できないと思う。

 なぜならこの決闘では自分も死ぬ事は無いし、相手も死ぬ事は無い。


 結局命がかかっているかいないかは思考を左右するとても重要な要素なのだ。


「アスカ君。本気で、行くからね」


 彼女のこれが、俺を殺す気と言うことなら、俺は間違いなく死ぬだろう。

 だから俺はメイさんが必ず手加減してくると思っていた。


 だが、その考えは甘かったと、遅くも理解する。


「だっりゃあ!!」


 俺はメイさんの魔法砲撃を巧みに裁き、刀を上段から振り下ろす。


「甘い!」


 俺の刀は彼女の杖に受け止められ、がら空きだった腹に蹴りを叩きこまれて吹き飛ばされる。

 空中にシールドの応用で壁を作り、それに足をつける。

 そこからまた切りかかるつもりでいたが、すでにメイさんは俺の間近まで来ていた。


「反応が遅い。周りをよく見て!」


 そう言いながらさっきまで俺のいた場所を左手に持った槍型の武器で切りつける。

 今のはかわさなければ確実に真っ二つになっていただろう。


「メイさん、今の本当に危なかったですy」


 最後まで言い切る前に後ろに魔力を感じてシールドを張る。

 すると桜色の魔力球がそれに激突してはじける。


「本気で行くって言ったはずだよ!」


 魔力球に気を取られている隙にメイは俺の上から杖を振り下ろしてくる。

 俺はそれを刀で受け流し、次に来る左の槍を受け止めようとしたが、その速度に負けて刀を弾き飛ばされる。


 俺がその刀に目をやっている隙に杖を持ち直し、魔力球を発生させるのにさほど時間はかからない。

 少なくとも俺が向き直った時にはすでに魔力球はこちらに向かって発射されていた。


「リフレクタ!」


 辛うじて発生させたリフレクターでそれの射線を反らして、俺は新たに武器、ライフルを持つ。

 それを持ってリフレクターの範囲から外れ、彼女の姿を探す。


「レーダーも使いなさーい!!」


 声のした方、上を向くと彼女が槍を持って急降下していた。

 太陽を背にしたそれに俺は思わず目をかばってしまう。

 するとメイさんの槍がライフルを真っ二つに切り裂き、ライフルは魔力エネルギーを暴発させて爆散する。


「チェックメイトだね」


 その声に目を開けると、杖を俺に付きつけるメイさんがいた。


「やっぱりこうなるじゃないですか。だからやっても意味がないって言ったのに」

「学ぶ事は多かったんじゃない?」

「それはそうですけど……」

「あと、ルナレアさんが目を覚ましたそうよ。こっちに向かってるって」


 そうですか。

 とあえてそっけない振りをした。

 だがメイさんは杖を持ったままくすくすと笑い声を立てる。


「行ってあげたら?彼女はフリーらしいよ」


 俺はメイさんの思い通りになるのが癪で、ここでルナが来るのを待つことにした。

いつもより長いかな・・・。

それに説明が多い。


そしてやはり眠かったためグダグダになってしまった・・・。



ああ、悪いところはいくらでも見つかるなぁ。

だれかこの小説のいいところ教えてww


よろしくお願いします。

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