10 ~Signal Stop~
アカツキ軍のAA特殊部隊にスクランブルがかかったのは突然の事だった。
新ドイツに出現した魔物の撃退要請。
AEUの新ドイツとアカツキはさほど離れておらず、距離にして約30万Km。
まあ、国外だからそれなりに距離はあるんだけどさ……。
その魔物がここまで来るのにまだ時間がかかるとのことなので、俺たちAA特殊部隊のメンバーはヘリコプターの様な形をした小型のジェット機で司令部からの作戦指示と敵とのランデブーを待っていた。
「指令部からの命令が来たよ」
スクランブルで出動したと言うのに表情一つ変えていないメイさんは、そう言いながらヘリコプターの壁に付いている画面を見るように促した。
彼女は俺のというより、この部隊の教導官だった。
この部隊には俺とメイさんの他にAAを使える人が2人いて、その二人ともがつい最近入った新人なのだと言う。
この前の事件の時は運がいいのか悪いのか休暇を取っていたらしい。
「これ、作戦って言うかただの命令ね。どんな手段を使ってでも駆逐しなさいって。これがその魔物の写真」
それはほんの豆粒程度にしか映っていなかった。
多分一定範囲内に入ったら攻撃してくるタイプなのだろう。
「教官、これって人型ですか?」
「ん? ……そうみたいね」
こんな豆粒で分かるのだろうか?
もしかしたら俺の眼の方が悪いんじゃ?
とか思いながら眼を細めていると、いきなりアラームが鳴りだし、機内に放送が流れた。
「あと30秒で戦闘空域に入ります。隊員はさっさと出撃しちゃってください」
ちなみにこの輸送機を操縦しているのはアリアだ。
どうやら俺が今持っている「アリア」と言う機種は、正確にはAAではないらしい。
「Magical Enhancer」というらしく、AAに魔法能力拡張機能を付加したものらしい。
それは人格を中に宿しているため、そういうこともできるらしい。
「そういうことらしいね。それじゃあいくよ!」
メイさんはそういうとヘリの扉をガラリと開け、早々と外に身を投げ出した。
「じゃあ、俺たちは先に」
そう言うとあとの二人も行ってしまい、ヘリの中には俺だけになった。
だが、思う事など無い。
あいては魔物だ。
「いくぜアリア!」
「いつでもこーい!」
俺はそう言ってヘリから飛び出し、すぐにMEを起動させて飛行する。
魔物は倒すだけだ……
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俺たちは目標のすぐ200mくらいの範囲まで接近していた。
「何あれ、魔物じゃない!?」
「教官! あれ魔物じゃないっすよ!」
AAの二人はともにそう叫び続けていた。
メイさんは敵の攻撃をシールドで防ぎながらも驚きの顔を隠せないでいた。
俺もまたメイさんと同様に驚く。
「アスカ君! 周りを見て!」
ハッと気づいて敵のレーザーを避ける。
銀色の髪、瞬きを禁じられたように動かない真っ赤な瞳……
それはどうみても彼女だルナレア・サクヤ・S・タール。
見間違うはずはない。
「教官!」
「……魔物に、寄生されているの?」
「どうすれば?」
メイは為す術が見当たらないと言う代わりに下唇をかみしめる。
「人間を傷つけないように攻撃して、できれば捕獲。だけど……」
これはやっかいだとメイは心のうちで言葉をこぼす。
彼女は気付いていた、ルナがMEと同程度の力を持つAAを装備している事を。
俺は時折ルナの放つレーザーを避けているだけで、何もできなかった。
アリアの示したコアの位置、それは左胸、すなわち
心臓
それは紛れもなく心臓の位置。
それは切ったりしたら死んでしまうんじゃないか。
アスカの心は不安で満たされていた。
「アスカ君! 援護して!」
俺はその声に反応してメイさんの後ろにつく。
「私がキャプチャーするから、攻撃跳ね返して」
早口でそう言うと、俺に先に行くように促す。
俺はリフレクターの魔法陣を描き、それを楯の様にしてルナに向かって突進していく。
リフレクターでレーザーをプリズムを通すのと同じ様に拡散させながら突っ込む。
だが、ルナの眼の前まで来た瞬間、何をしていいのか分からなくなってしまった。
この振り上げた剣で袈裟切りにでもすればいいのだろうか?
だが、もし魔物がシールドを張ってくれなかったらルナは……?
それは俺の大切なものを守りたいと言う事に大きく矛盾していた。
歯をかみしめ、俺はその真横を通過した。
「アスカ君、何してるの?」
「……できません」
俺にはルナを攻撃することなんてできない。
じゃあ、この先にいる人たちを見殺しにするの?
足止めはできているけど、このままじゃアカツキを通過することだってあるかもしれない。
それは俺の想いにさらに激しく矛盾していた。
やりたくない。
でも、やらなくちゃいけないのか……?
「俺には人を傷つけるなんてでき……」
「顔をあげなさい!」
メイさんの言葉に忠実に、顔を上げ、ルナの向こうにメイさんをも見る。
メイさんの持つ杖はこちらに向けられ、その先には桜色をした光の玉ができていた。
砲撃魔法。魔力によって魔力弾を生み出し、放つ。すごくシンプルな魔法。
それの特徴は、対象に殺傷を与えない事。
「なにをするんですか! やめてください!」
俺はほぼ反射的にメイさんとルナの間に割って入る。
「どきなさい。さもないとまとめて撃っちゃうよ?」
「どきたくありません。この子は俺の友達なんですよ」
「じゃあ、しょうがないね」
無情にも、光球の内側に内包されたエネルギーがこちらに向けて放たれた。
光の奔流が俺のシールドに激突し、俺はその圧倒的な物量に負け、ルナごと近くの山に激突するまで吹き飛ばされた。
シールドは粉々に砕け散り、魔力が俺とルナの力を根こそぎ奪っていく。
文字通りエネルギー残量がものすごい勢いで消失していき、止まるころにはすでに0になっていた。
「もうちょっと冷静になりなさい」
メイさんは一瞬で山に降り立つと、そう言いながらルナにバインドをかけた。
「相手の状況をよく考えな。彼女はAAを着ていた。なら魔力ダメージによってAAのエネルギーを奪う事で動きは止められるの」
そうだ。
殺傷能力のない砲撃魔法であれば彼女を物理的に傷つけなくても良かったんだ。
それが分かっててメイさんはあの砲撃魔法を使ったんだ。
俺はふとルナの方を見る。
さっきまで見開かれていたその赤い眼は今は見えない。
その長い銀髪とは対照的な黒いAAもエネルギーを失ってもうピクリとも動かなかった。
「彼女はとりあえず助かると思う。アスカ君が邪魔をしなければもっと早く助けられたかもしれないんだよ?」
「教官。説教は帰ってからにした方がいいのでは?」
メイさんは「ふぅ」とため息をついて俺に向き直った。
「そうだね。あとで説教しないと。でも今はとりあえずこの子を精密検査する方が先。アスカ君、アリアにヘリをこっちに向かわせるように言って」
「はい」と俺は疲れきった声で言うのだった。
ああ、ダメだ。
グダグダだ。
これはダメだ・・・。
これ書いてる途中に友達と会話したんですよ。
だからかな?
ちょっとダメだ。
ああ、でも感想はほしいです←
よろしくお願いします。