7. - セヴェン -
その後彼らがどんな暮らしをしたのかは知らない。
幸せに暮らしたのだろうか。
子供は無事に産まれたのだろうか。
そういえば食事はどうしたのだろう?
女が男の分まで養ったのだろうか? 女一人で? 男と子供の分まで?
夢の終わりは唐突だった。けれど僕はなかなか目を開けることができなかった。目を閉じ続けさえいれば続きが見られるかもしれないと思ったからだ。
夢の中の僕と、サリィ。
此処を出て幸せになれたのだろうか?
僕にはどうしても彼が、彼女を幸せにできたとは思えなかった。
「セヴェン……泣いてるの?」
甘い香がした。
水分を含んだ睫毛で接着された重い瞼を開き、二三度瞬きをすると残りの涙が雫になってこめかみを流れ落ちた。
目が醒めて最初にすることといえば、そこにサリィがいるのを確認することだ。
「……ちょっと、怖い夢を見た」
彼は、僕は、幸せそうに笑っていた。幸せだったのかもしれない。だけど僕には幸せの意味など分からない。
「子供みたいなこと言うのね」
「子供だよ」
「馬鹿なこと言わないで」
そう言いながら彼女の手が僕の頭を撫でる。まるで子供扱いだ。
彼女は僕なんかよりももっとずっと大人になってしまったのか。
「妊娠したの、アタシ」
穏やかな声だった。
どこまでが現実で、どこからが夢だったのか。
焼き直し。
リプレイ。
「僕の子供だ」
サリィの手が止まる。驚いたのは僕ではなくて彼女の方だった。
「どうして分かったの?」
それを尋ねてから後悔するのも彼女の方で。間近に見える彼女の白い喉が上下して、息を飲むのが分かった。こんな質問で僕が傷付いたりする筈もないのに。
「何となく」
「そう……。貴方の子供よ。だって、仕事の時はオーラルセックスかアナルセックスしかしないもの。アタシだけじゃないわ、女はみんなそうよ」
「そうなんだ、初めて知った」
「仕事自体はオーラルばっかりよ。流石にアナルで受け取ったものを他人の食事には使えないから、自分が食事するときだけ」
ふと彼女は口をつぐんだ。彼女の口から仕事の話を聞くのはこれが初めてだ。彼女が話したがらないのか、それとも話をしてはいけない決まりになっているのか、僕には分からない。
僕は彼女の名前すら知らない。
「サリィ」
夢の中では、そうだ、彼女が此処を出ようと言ったのだ。
二人は幸せになれたのだろうか。
彼は、彼女を幸せにすることができたのだろうか。
「何?」
「いや。……何でもないよ」
現実の彼女は此処を出ようとは言わなかった。
何故か僕はほっとした。
彼女の頬に手を伸ばし、顔を包み込んで口付けを求める。身体を重ねる。
指と指とを交差させる。
体重を掛けすぎないように注意しながら、腕だけで彼女の肩を抱き締める。
彼女は蝶だろうか。それとも花だろうか。
否、女は蝶で、花だ。
一つ思い付いたことがあった。