表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/17

第5話 BLは宇宙論の入り口だった

夜、自室。

あかりは机に突っ伏し、昨日の学術書をめくっていた。

ページの角は付箋だらけ、ノートもボールペンでぎっしり。


ふむふむ……古代ギリシャでは、教育の一環として、年長者と年少者がペアを組み、友情と精神的な成長を――)


「……パ、パイ……デ……?」


文字を追う。

「パイデラスティア――年長者の男性と少年が師弟関係を結び、教育と愛情を深める文化」


あかりの指がページの途中で止まる。

「……え?」

思わず声が漏れる。


もう一度、三度、文章を読み返す。


(……えっ、なにこれ……「友情と愛情を深めるために身体的接触を行うこともあった」……?)

(……接触って……あれ、これ……そういうことじゃない!?)


椅子から飛び上がった。

「え、う、は、はぁぁぁ!?」


部屋の中をぐるぐる歩き回る。

(待って待って待って!つまりこれって……そういうことだよね!?)

(教育の一環で……そういうことをしてた……ってこと!?)


「……え?」

二度見、三度見。


(え、なにこれ……教育と……愛情?)

(……えっ、これってつまり……そういうことじゃん!?え、現代でいうところの……B、B、B、BLじゃん!?)


椅子から跳ね起きる。

「はぁあああああ!?!?」


ページを凝視。

「教育の一環として、精神的交流と身体的交流が行われ――」


「身体的交流って……交流の方向性がすごいって!!」


額に手を当て、天井を仰ぐ。

(現代で言ったら完全にコンプラアウトでしょ!?)

(教育って名の性加害だよね!?教育委員会総退陣ものだよ!?)


机にノートを広げ、「パイデラスティア=教育制度?」「時代背景:紀元前500年頃」と書き込む。


「え、紀元前500年!?2500年前!?そんな昔から!?もしかして、アリストテレスが生まれるちょっと前?!」


(しかも文化ってことは、1人や2人じゃなくて普通にやってたんだよね?)

(やっば、ギリシャ人やばすぎない?)


ゴロリとベッドに倒れ込み、枕を抱えて悶える。


(てか、これ現代だと一発アウト……いやむしろ刑事事件……)

(時代が変われば、ここまで常識が変わるの!?)


あかりは布団の上で上半身だけを起こした。

「だとしたら……未来ではどうなってるの?」


窓の外を見上げる。

(50年後、100年後、もしかしたら肛門の役割がもっと進化してるかもしれない……)

(宇宙の謎も今よりもっと解明されてるかも……いや、解明されてなきゃおかしい!)


ゾクリと背筋が震える。

「……うわ、やば……研究が進むってこういう感覚か……」


「BL……いや、パイデラスティアは肛門宇宙論の重大なヒントだ……!」


「あぁあぁぁーーー!?)

頭を抱え、ベッドの上でジタバタ。


(いや待って……クラスの女子が先週盛り上がってたよな……BLの話して……)


――回想。教室、昼休み。

「ねーねー、昨日のおじ様ズLOVE見た?」

「見た見たー!あれマジで神回!」

「やっぱ歳の差カップルは尊いわ……!」

「いやいや私は幼なじみ派!」

「わかるー!!」


キャーキャーと黄色い声が飛び交う。

あかりはそのとき、弁当をもぐもぐ食べながら聞き流していた。


――現在。


(なるほど……あれはギリシャからの系譜だったのか……!)

(古代の文化が、現代のサブカルチャーにまで……!)


(てかすごくない?2000年以上前から概念だけは成立してたってこと!?)

(歴史って怖い……というか、これが人類の文化遺産……!?)


あかりは再び机に向かい、ノートを開いた。

「古代ギリシャ=BL文化の源流?」と大きく書き、さらに矢印と感嘆符を山ほど書き足す。


「これは……研究対象として避けて通れない……!」

目がギラリと光る。

「明日学校で、聞いてみるしかない……!」



翌日、学校。


「おはよー!」

「あ、おはよ!」


授業が始まるが、あかりの脳内は昨夜のギリシャ文化で埋め尽くされていた。


(どう切り出す……?「BLってどんなの?」って聞いたら、私も腐女子認定されるよね……)

(いや違うの、学術的興味だから!研究だから!)

(でも美咲以外には研究のこと秘密だし……)


ノートの端に「質問案①:最近ハマってる?②:ドラマ見た?」とメモしながら授業を聞き流す。


(それにしても……昔は教育OK、今はアウト……文化って残酷……)

(ああああああ気になって仕方ない!!)


チャイム。


――休憩時間。


「そー言えばさー、昨日のおじ様ズLOVE見たー?」

「見た見た!あの回ヤバすぎ!」


まさかのタイミング!

あかりは一度深呼吸してから、意を決して近づいた。


「……あ、あのさ……そのドラマって、どんな話なの?」


一瞬、女子たちがぽかんとする。

すぐにリーダー格の片石渚がニヤッと笑った。

「えっ、あかりって興味あるの?」


「へへ……まぁ、ちょっと……」

愛想笑いで返すと、渚がダムが決壊したかのように語り始めた。


「まずね、BLの醍醐味はキャラ同士の関係性!」

「年の差、立場差、禁断――そういうギャップが最高なの!」

「で、二人が心通わせる瞬間が尊すぎてさ……!」


あかりは圧倒されながら必死に相づちを打つ。

(やば、渚ちゃん熱量すご……教授か?)


周りの女子も「わかるー!」と合いの手。

渚のBL論は止まらない。

「あとね、現実じゃありえないからこそ妄想が燃えるんだよ!」


あかりはノートに「非現実→妄想燃える=古代ギリシャも同じ?」とメモ。


(……やっぱ人類は昔からこういうの好きなんだ……!)

(古代ギリシャも、江戸時代も、現代も……時代を超えて愛されてるのかも……!)


チャイムが鳴り、渚たちは席に戻る。

机に突っ伏したあかりは深く息を吐いた。


「……渚ちゃん、まるで教授だった……」


(でも、確かに学びはあった……!)

(BL研究は宇宙論研究の一環……間違いない……)


目をギラリと輝かせ、あかりは決意する。

「放課後、美咲に報告しよう……!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ