第17話 歴史の禁忌の肛門宇宙論 〜すべての道は尻に通ず〜
放課後の図書室。
机の上には山積みになった資料の山。
その頂上で、あかりは鉛筆をくるくる回していた。
「古代ギリシャ、ローマ、江戸、明治……どの時代も肛門で始まり、肛門で終わる……」
つぶやきながら、うなずく。
「うん、つまり――人類史=排出史ってことね」
「言い切ったぁ!?」
美咲が呆れ顔でツッコミを入れる。
「ていうか“人類史=排出史”って、受験で書いたら一発で落ちるよ!?」
「違うの!これは魂の流れ! 文明のメタボリズムなの!」
あかりは勢いよく立ち上がり、両手を広げた。
「見よ! 古代ギリシャでは愛と芸術が肛門を開き、
ローマでは権力がそれを締め、
中世では教会が栓をし、
江戸では再び流れ出し、
そして明治でまた洋式に閉じた……!」
「いや水道の話してるんじゃないんだから!」
⸻
「でもさぁ……」
あかりがぼそっと呟いた。
「結局、人間って“出すか出さないか”で悩み続けてるだけなんじゃないのかなぁ〜?」
「なにそのざっくりとした宇宙観!!」
美咲が頭を抱える。
だが、あかりはふっと笑った。
「……でも、それが真理かもしれないよ」
「真理ぃ!?」
「出すって勇気。閉じるって我慢。
そのバランスが“生きること”なんだよ!」
「え、なにこれ? トイレ哲学講座?」
「うん、“便座の上のソクラテス”!」
「やかましいわ!!!」
⸻
そのとき、突然図書室の窓が風でバーン!と開いた。
ページがぱらぱらと舞い上がる。
「うわっ!?」
ノートが床に落ちる。
あかりは慌てて拾い上げたが、そこには――
“全ての道はローマに通ず”
そして、ローマは“尻”に通ず。
「……なるほど……!」
あかりの目が光った。
「来た! 来たわ!!」
「なにが!?」
「ローマが道の中心なら、人類の中心は肛門だったのよ!」
「どこにそんな結論の道通ってきたんだよ!?」
美咲があかりにツッコむが、
あかりは完全にトランスモード。
「つまり、すべての道は尻に通ず!」
高らかに宣言した瞬間、
図書室の蛍光灯が――ピカッ!と点滅した。
「……今、神が通った気がする……」
「いや多分ブレーカーだよ」
⸻
その夜。
自室でノートを広げ、あかりは静かにペンを取る。
「古代の人は知ってたんだ。
“出す”ことで、心も軽くなるって。
でも現代人は我慢しすぎてる。
感情も、うんちも、全部溜め込みすぎ!」
そこで美咲から通知が届いた。
【またトイレ哲学タイムですか】
「うるさい! 今、歴史をまとめてるの!」
【うん、どうせまた“尻から宇宙が生まれた説”とかでしょ?】
「……バレた」
⸻
翌朝。
登校中、あかりは空を見上げながらつぶやく。
「でも、いいじゃん。
誰もが“出す場所”を持ってる。
それが希望なんだよ。」
「うん、希望が尻に詰まってるね」
「やかましい!」
二人の笑い声が、朝の通学路に響いた。
⸻
放課後、校舎裏の風が吹き抜ける。
あかりはノートに最後の一文を書いた。
歴史とは、出しては溜め、閉じてはまた開く。それはまるで、人間そのもの。
〜歴史と禁忌の肛門宇宙論 ー完ー 〜
読者の皆様へ
永らくのご声援ありがとうございました。
むぎふみ先生の次回作にご期待下さい。




