第6話「衝撃」
迎えた富士大会。
酷暑も落ち着き、秋めいてきた富士スピードウェイ。
「朝晩は冷え込むようになってきましたね〜。」
「ほんと、寒くて最近は少しずつ布団が友達になってきたよ。」
「それ分かります〜」
決勝前、最後のマシンメンテナンスを行うピットでドライバー2人が雑談を交えていた。
予選の結果
杏堂 10号車 2位
松下 31号車 6位
2台ともにポイント獲得を狙える順位でスタートできる。
全25台が1コーナーをめがけて走り出す。
その中で10号車は1位へ、31号車も4位に順位を上げた。
レース終盤、松下は4位争いの中にいて、杏堂たちの1位争いの3台からは離されていた。
一方杏堂は。
「さぁ、大塚!勝負だ!」
大塚、杏堂、そして3位のマシンで団子状態で日本最長のホームストレートへ。
OTS、スリップストリームの効果でぐんぐん大塚に迫る。
1コーナーで追い抜けるくらいにまで接近する。
その時だった。
視界が勢いよく横に回転する。
次に来たのは凄まじい衝撃。
マシンは5、6回転した後回転が止まった。
状況を理解し始めた。
進行方向とは反対に止まっている。
周りにはおそらくは自分のものと思われるマシンパーツたち。
「あ…俺…事故ったのか…」
「マシン…降りなきゃ」痛む体に力を入れ、マシンを離れる。
「あ…れ?」足元がふらつく。
すぐにレスキュー車両が駆けつける。
杏堂はその場で倒れ込んでしまった。