第17話「援護」
一方…
「ヒロくんが無線で支援してくれるようになって良かった。どこにマシンがいるか想像しやすい。」
その間にも無線で伝えられた周回遅れのマシンに追いつき、追い抜く。
サイドミラーを確認すると緑色のボディが見えた。TOM'Sのものだ。
「セルモ、TOM'S。名門のドライバーたちに守ってもらってるんだ。」
無線ボタンを押し、叫ぶ。
「ぜってぇ負けねぇ!ぜってぇ勝ってやる!」
その無線はチームの全員に届いていた。
「後方、40m離れて36番。続いて39番。」的確に指示を送っていく。
『了解』
セルモ39号車に乗る根岸のミラーにはもう88号車が映っていた。
ホームストレートで2台がサイドバイサイドになり、39号車のドライバーが後ろに合図を送る。
そこから2台の防衛戦が始まった。
88号車が39号車に襲いかかる。
しかし、それを見た琢磨は早めに減速、愛が近づき、88号車が入るスペースを与えない。
その連携バトルを大型モニターで見ていた自分も驚く。
「すごいな。みんな。ギリギリまで寄せて。」
監督とドライバーの無線も聞こえるようになっているので、傍受する形になる。
『永野、今後続との差は12秒、そのまま行けば逃げ切れる。』
「了解」
ゾーンに入っているんだろう。会話は最小限に抑えている。
残り2周、88号車は疲労が出始めているようだった。
「88、コーナーでワンテンポ遅れてる。タイヤが終わったか…そりゃな、セルモとTOM'Sとあんなバトルしてればタイヤも減るよな。」
レースは追い抜きが大事だが、追い抜くにはタイヤも消費する。
つまり、勝負のとき以外はタイヤは使わないように温存し、ここぞという勝負のときに使う、この使い分けのタイミングが必要なのだ。
無線の会話ボタンを押す。
「駿、88番はタイヤが終わったと思われる。明らかにペースが乱れている。とりあえずはセーブ(抑えて)して走っても大丈夫だと思う。」
『OK、OK。』
タイヤが限界を迎えていただけでなく大塚は冷静さを失っていた。
彼の目には39号車と36号車は映っていなかった。
豆粒ほどの10号車、それだけが見えていた。
88号車が加速する。
それに反応して愛が防ごうと走行ラインを変更する。
合わせて琢磨も動く。
その時だった。
愛の右リアタイヤと大塚の左フロントタイヤが接触する。
そのまま大塚、愛のマシンは姿勢を乱し、スピン状態に。そこに琢磨も巻き込まれ、3台まとまってコースオフ。
大塚はステアリングを何度も叩き、悔しがっているように見えた。
愛、琢磨はやりきった、そう思っているようにマシンを降り、コースサイドへと向かっていた。




