Cats on Mars
https://x.com/fuyunoyoiyume_i/status/1783762627023507745
上記の設定をお借りして書かせていただきました。
青い星を背景に猫耳の少女が空を翔ける。ここは大切な場所。私は管理を任されているのだ。そう思う少女が尻尾と白い衣服を風にはためかせビルからビルへと猫のように飛び移る。
『クゥ。ここを守って。必ず戻るから』
廃墟となったビルの屋上にいる猫を見つけた少女――クゥが彼等の喧嘩を仲裁する。猫たちのパトロールをすることがクゥにとっての『ここを守る』という認識だった。
今はもういない彼との約束が少女を縛る。ピンと立たせた尻尾を下ろしたクゥが彼等のことを思い出す。ある日、突然空から降りてきた『ニンゲン』のことを。
赤い大地に丸く横たわる猫のような少女がいた。彼女自身何故ここに一人でいるのかは知らない。一人という感覚もないから。何となく動いている青い星が見えていれば幸せだった。それ以外にやることもなかったから。
夜と昼との感覚しか分からない彼女の前に宇宙船が降り立った。中から出てきた数人の宇宙服を着た人間が数匹の猫をケージから出す。
「実験は成功だ。この個体を参考にヒューマン・アダプタ計画を進めよう。人類はもう地球に適応できない」
宇宙船に戻り、青い星に信号を飛ばした彼等が資材を運び出す。
「同時にこの星のテラ・フォーミングも進めなければならない。僕等は地球に帰れないけど、恩義を地球にいる皆に届けよう。情報として」
そう言って宇宙服を着た人間達がパネルを並べ、大量の水を積んだ車体で各々星を巡り始めた。
彼等はそのまま帰ってくることはありませんでした。
それから何体もの船が星に降りては開発を続けていきました。大気が生まれ、建築物が立ち、やがて彼等の中に宇宙服を脱いで生活する者が現れ始めた頃のことです。彼等が宇宙猫と呼ぶ生き物を愛でているクゥの姿に気づく。クゥは彼等に懐き交流を始めました。
彼等はビルを林立させ街を築き始めました。多くの船が空から飛来し、人々が入植したことをクゥは喜びました。
太陽が幾度見えた頃でしょうか。ニンゲンが言いました。
「俺達はテラフォーミングに失敗した」
船で飛び立とうとするニンゲンが最初の宇宙猫に言う。
「クゥ。ここを守って。必ず戻るから」
そうして大気の無くなった火星の宙を彼等は行きました。
青い星を背景に猫耳の少女が空を翔ける。ここは大切な場所。私は管理を任されているのだ。そう思う少女が地球を思い涙する。初めから一人なら寂しくなんかなかった。
そんな心を空にした空が猫のパトロールのため空を行く。