表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/13

ラットマン討伐作戦①

 ここまで、側で様子をうかがっていたベスだったが、メーレンとアトレスの会話が一区切りしたとみて口を開き始めた。


「ホホッ。アトレスくんがどちらを選んだとしても、腐ったゴミのどちらかがこの世から一つ消えることになりますな。」


 そう話すベスの目は、侮辱と愉悦が混じったどろりとした目だ。

 その目のまま、手元の資料を読み始める。


「アトレスくんへの依頼内容ですが3つ条件がございます。」


 1.【ラットマンの捕獲or抹殺】

 2.【期限は3ヶ月】

 3.【メーレン一等捜査官と常に同行し、命令の順守】


「加えて」


 ポケットからゴトリと鉄の輪をとりだし、


「このメルギド監獄特製の『隷属の首輪』を装着いたします。メーレン様の声にのみ反応し、アトレスくんが裏切ったり、命令違反をした場合首輪の内側からキャリアすらも無効化する致死性の毒針が飛び出す仕組みとなっております。もちろん無理に外そうとしたり、メーレン様を攻撃したり、任務に失敗すれば、即座に針が突き刺され、首輪に殺されます。」


 スリスリと首輪をめでるように撫でながらベスが説明した。


「確かに私は君を信用していない。首輪はつけてもらう。しかしどうだろう。私の監視下ではあるが外にも出れるんだ。決して悪い話ではないはずだ。」


 死か生か。この二択で断るわけがない、そう思いつつもメーレンは緊張していた。


 学生が3人、同僚が2人も殺された凶悪な殺人者。何としても捕まえたい。


 目の前の少年が悪魔で、その力を利用する事になったとしても。


 アトレスは一瞬考えたような顔になったが


「わかりました。メーレンさんに協力します。」


 そう言って、普通の少年のようにニッコリと笑った。


---


 キャリアとは一部の人間にだけ発生する、『病』だ。それ自体が生命の危機を及ぼすことも多いが、稀に超常的な能力をもたらすことがある。


 また、キャリアによって、それぞれに適合した物質を摂取することで、元々持つ力を倍増させることがある。これをトリガーと呼ぶ。


 未だにキャリアの発現条件は解明されていないが。権力者や軍、または国家などが強いキャリアを求めてしばしば争っている。


 キャリアが国の要人となったり、戦時下には重要な兵器として徴用されたりなど、世の中に大きな影響を与えているためである。


 そしてその力に魅せられた者の中には、犯罪者となる者も多く存在し、カドキワ国ではキャリアをもった犯罪者を能力値の危険度からA〜Fのランクで振り分ける。


 ここにいる少年もそのうちの一人であり


 国家指定Cランク犯罪者『アトレス=バルドラ』


 こう、呼ばれていた。


---


「着いたぞ。ここが私の借りているアパートだ。そしてラットマンを捕まえるまで、キミもここで共同生活をしてもらうことになる。」


 メーレンは荷物をどさりと置き、部屋の奥へと少年を案内した。


 少年の名はアトレス。

 国家指定のCランク犯罪者。

 若干12才で国家指定されるほどの凶悪な犯罪者である。


「スゴイ。いいですね、ここ。」


「ここにキミの部屋を用意した。ほかに必要なものがあれば言ってくれ。」


「ありがとうございます。メーレンさん。」


「メーレンでいい。そして、礼など必要じゃないぞ。キミは客人ではないし、もてなす意味で言ったわけではないからな。」


 任務だからだ、とメーレンは念押しで告げた。


「そうでしたよね。まぁギスギスするのも嫌ですし、お礼くらい言わせて下さい。ありがとう、メーレン。」


 メーレンはふぅ、とため息をつき、引き続き部屋の設備の案内をした。

 そして、最後に部屋の中央のテーブルに座った。


「それでは先に大事な話をしておきたい。これからの動き方の確認だ。そしてこれも聞いておきたいのだが……」


 メーレンは一息、間を開けた。


「まず初めに、キミの持つキャリアについて聞いておきたい。」


「はい、なんなりと。」


 アトレスの即答にメーレンは面食らった。


「いやまぁ……首輪もありますし、メーレンは今回の任務のパートナーですからね。業務上の確認は必須でしょう。」


 確かに<隷属の首輪>がある限り、アトレスは命令違反が出来ない。 たとえば「一日中走り回れ」なんて命令したのなら、こいつは生き残るために街中を駆けずり回ることになる。


「そうか。それにしても、前から思ってたんだが、年齢のわりに、その……大人みたいな言葉を使うんだな。外見を除けば、本当に大人と話しているみたいだ。」


「そうですか?話し方については、メーレンもあんまり変わらないかと思いますが。」


 ふむ。と一呼吸。この子、アトレスは国家指定犯罪者なのにも関わらず、見た目は凶悪な犯罪者には見えない。


 確かに年齢のわりには落ち着いているし、初めに見たときの不気味さはあった。


 しかし、言ってしまえばメーレンも若くして一等捜査官の地位につき、周りから揶揄されることもしばしばあったのだ。


 思い込み。つまり、事前情報の先入観で判断することの愚かさをメーレンは知っていた。


「わかった。それについては問題ない。キミのキャリアについて話を戻すが……肉体強化で間違いないな?」



【肉体強化】

・全身の筋力、防御力、五感が高まる。

・能力の差が大きいが、強いキャリアは肉体で銃弾を弾いたり、石壁なども破壊することが可能になる。


「肉体強化のキャリアは鋼鉄よりも硬い身体を持つという」


「そうです。このアパートの壁を壊したり、屋上から無傷で飛び降りたりとかは問題なく出来ると思います。」


「報告では逮捕にあたった一等捜査官の電磁鞭を素手で防御したとのことだが事実かな?」


「出来ますね。」


 捜査官の持つ【電磁鞭】は、対キャリア用に開発された強力な兵器だ。


 鉄製のスティックのような形をしており、そのまま殴ってもそこそこ強い。


 それに加えて、対象へのアタックの瞬間に衝撃の力に応じて電力が流れる仕掛けになっている。動力はインパクトの瞬間のエネルギーを利用しているため、強いチカラに比例して電力も強くなる。


 一等捜査官の本気の電磁鞭をくらえば、並の人間であれば黒焦げになるだろう。


「なるほど。ラットマンの攻撃では君の防御を貫通できない可能性がある。よし……、色々と作戦が立てられそうだ。」


 メーレンは大きな画用紙を取り出し、紙にガリガリと何かを描き始めた。


「私も捜査官としては戦闘力は高いほうだが、キャリアではない。ラットマンと一騎打ちになれば、おそらく私は殺されるだろう。」


 ネズミの絵と、髪の長い女の絵を描くメーレン。


「しかし、キミの防御力と攻撃力であれば相手からの攻撃を防ぎ、逆に当たりさえすれば相手を気絶。少なくとも悶絶させる可能性が高い。」


 女の絵とネズミの絵の間に黒髪の少年を描くメーレン。


「私とキミ対ラットマンのニ対一の構図をつくりだすことが重要だ。」


「なるほど。じゃあ僕はメーレンと出来るだけ一緒に行動すべきということですね。」


 ふむふむという顔をしながらアトレスは頷く。


「しかし、それには問題がある。ラットマンは女学生しか襲わない。しかも単体になったタイミングでしか襲わないのだ。」


「僕が一緒にいると、ラットマンをおびきだせないということですか。」


「そこでだ。まず私は女生徒として学園に潜入し単独で行動しヤツの正体や犯行の手口を探る。せめて次の被害者の予測が立てられれば、ヤツを待ち伏せて迎撃できる」


そう言いながらメーレンは絵のネズミをガリガリと塗りつぶす。


「なるほど」


「これ以上の犠牲者は絶対に出さない。しかし、捜査官がやられたことでヤツも警戒しているだろう。無力な女生徒を装い、じわじわと追いつめてやるのだ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ