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ゆめの時間  作者: 秋山章子
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ゆめを守るために

 夕食後、皆で片づけをして、居間でくつろいでいるときに、「ちょっと僕の話を聞いてほしいんだ」と三人に話しかける。

「うん、どうかした」とジィムが聞きかえす。

「突然なんだけれど、製作の拠点を日本へ移そうと思うんだ」

 三人ともびっくりして、すぐに返事ができない。

「ヒロ、このまえのことがあったから」とゆめが聞くと、「うん、僕はゆめを危険な目にあわせたくない。日本のほうが治安がいいと思うんだ。ジィムと美貴がアメリカに残るのなら、トニーに頼んで新しい仕事先を紹介してもらうつもりだよ」

「その心配はいらないよ。僕も美貴も、ヒロの行くところなら、どこへだって一緒に行くよ」と笑っている。

「そうよ、私たちは四人でワンチームでしょう」と美貴も快諾してくれる。

「二人ともありがとう。ヒロもありがとう。こんなに私のことを考えてくれる旦那様とお友達で幸せよ」と大粒の涙を流す。

「ところでヒロ、日本のどこに住むつもり」とジィムは引っ越しさきを尋ねる。

「京都に住むつもりなんだ。新婚旅行で行ったときに描きたいと思ったところがあってね。住むならここだと、そのとき漠然と考えたんだ」と今度のことがなくても、いつかは日本へ、京都へ戻りたい気持ちがあった。

 翌日から転居するために動きだした。

 はじめにトニーに連絡を入れ、ゆめと美貴をトニー邸に預け、博樹とジィムは日本へ行って、京都の新しく拠点となる家を探した。家探しには東京のトニーのホテルのマネージャーの男性が協力してくれて、知りあいの不動産業者も紹介してくれた。中心部は観光客が多く、外れていくと不便になるということで、府立植物園の近くで、買いものにも便利で病院にも行きやすい場所に建っている平屋で庭の広い家を購入した。古い家なのでリフォームのための建築事務所を紹介してもらい、希望を伝えて、三カ月後には引っ越せるようになった。

 アメリカへ戻るとトニーに結果を伝えて、荷造りをはじめる。

 トニーはアランから詳細を聞いていたので、博樹たちが日本へ帰ることに反対はしなかったが、いつかアメリカに戻ってくることを願っていた。

 衣服以外はほとんど残した。それは博樹もまたここへ戻ってくることを考えていたからなのだが、それが何年さきになるかわからなかった。

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