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ゆめの時間  作者: 秋山章子
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ゆめ、自分の感情を自覚する

 クリスマスイブの前日に忙しいブライス夫妻はクリスマスプレゼントを買いに二人で出かけ、博樹は大きな画材屋へ油絵具を買いに行き、ジィムと美貴もショッピングを楽しみに行ってしまい、ゆめはジュニアと公園へ出かけた。

 今日は暖かくてよかったと思いながら、ベンチに二人で座っていると、見知らぬ女性がそばに来て話しかけてくる。

「あの、あなたはトニー・ブライスさんのお嬢さんですね」黒い髪の女性が聞く。

「ええ」

 だれだろうと思いながら返事をすると、「私、絵里・山本です。博樹の妻です」と名乗る。

 ゆめはびっくりして彼女を見つめてしまう。

「失礼」と言って、ゆめの隣に座る。

「あなたにお話ししておきたいことがあるのです。私とヒロは、彼が大学生のときからのつきあいなの。ヒロは私がいないとだめなのよ。彼を理解してあげられるのは私だけなの。だからもうヒロに近づかないで。彼を私に返して、私たちには直樹という子どももいるのよ。早く彼の家から出ていってね」と言うだけ言って、行ってしまう。

 ゆめの心臓がバクバクしている。倒れるかもと思ったとき、「ゆめ様、大丈夫ですか。さあ、帰りましょう」とアランがそばに来て、ゆめとジュニアを車に乗せてかえり、すぐにスミス医師が来て、トニーとジェニーも大慌てで帰ってきた。

 ゆめがアランに口止めをして、理絵に会ったことは秘密にしておいた。スミス医師の診断は疲れから調子が悪くなったのと暖かいと油断して冷えたから風邪をひいていた。

 博樹が帰ってきたとき、スミス医師が帰るところで、「だれかどうかしたのですか」と尋ねると「やあヒロ。うん、ゆめが風邪をひいたんだよ。二〜三日もすれば治ると思うよ」と言って帰っていった。

 博樹は慌てて、ゆめの部屋のまえに行くとトニーが出てきて、「おかえりヒロ。ゆめが風邪をひいてね。しばらく安静だよ」と博樹の肩を叩いて、階下へ二人して降りていく。

「熱があるの」

「そうなんだ。少し高いけれど解熱剤の注射をしたから、しばらくしたら落ち着くと思うよ」

「よかった」と二人とも安堵した。

 寝ているときにゆめは黒い髪の女性が言ったことを思いだしていた。もともと博樹のことは家族のように思っていたが、改めて考えると自分のなかに女性としての気持ちが含まれていることに気づいた。

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