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ゆめの時間  作者: 秋山章子
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博樹、決意を新たにする

 それから三日後にはトニー家族四人と博樹たち三人はニューヨークのブライス家にいた。

「エルはきれいだったわね」と美貴がウェディングドレスのエリザベスを思いだして話しはじめる。

「ええ、あんなに美しい花嫁は見たことがないわ」と、ゆめもうっとりしている。

「ゆめのウェディングドレス姿もきれいだろうな。ヒロもそう思うだろう」とジィムが博樹に相づちを求めた。

「そうだね」と答えながら博樹はゆめがだれかの花嫁になってほしくなどなかった。

「私は結婚しないで働いていたいわ」

「どんな職業がいいの」と美貴が聞く。

「そうね、私ができることといったら家政婦かお針子さんかしら」

「ゆめ、君って面白い人だね。大学出ならブライス家のお嬢さんでなくても、そこそこの会社で働けると思うよ」とジィムが笑いながら言うが、「僕はずっと僕たちと一緒にいてほしい」と博樹が本音を言う。

「いまはクリスマスにママと里子ちゃんに会えることでいっぱいなの。年一回だけ会えるなんて七夕様みたい」

「ゆめが会いたかったら、いつでも日本へ帰っていいんだよ」

 博樹は優しく微笑んでいる。

 ゆめは頭を振って、「私は章子の娘のゆめだから……アメリカ人だから」悲しそうな目をしながら、口は固い決意を表すように引き結ばれている。

「アメリカへ来たことを後悔している」博樹は自分がアメリカへ連れてきたので責任を感じていた。

「いいえ、もしヒロと会わなくて日本にいたら、私は死んでいたと思う」

「えっ……」

 三人とも驚いている。

「私の心臓はスミス先生のお薬を飲まないと止まってしまうの。あっ、このことは私が知らないことになっているの。だから三人とも知らないことにしていてね」

「どうしてゆめはそのことを知っているの」美貴がびっくりした顔で聞く。

「はじめてスミス先生のところへ行ったときに、先生がトニーに電話をして私のことを引き受けてほしいと頼んでくれたの。そのときに容体を説明していたのよ。先生は私が眠っていると思っていたのね。私はうつらうつらとしながら聞いていたの。だからヒロは私の命の恩人なのよ。ありがとう」

「僕がゆめを連れてきたことが、きみを助けたことになってほんとよかった」

 博樹は心の底からそう思わずにいられない。

 ゆめと知りあって彼女と一緒に暮らせるようになって、これ以上の幸せはないと感じていた。どんなことがあってもゆめは守っていこうと気持ちを新たにする。

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