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ゆめの時間  作者: 秋山章子
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二度目の騒動

 ゆめは大学二年生になり、これまでどおり学校と家と休暇には自宅にと充実した日々だった。

 暖かい春の日に四人で海をお散歩していた。

 岩場のところを通って帰っていたが、波に濡れて滑るので、皆、気をつけていたが、ゆめが足を滑らせて海へ落ちてしまった。

 すぐに博樹が靴を脱いで飛びこんだ。

 気を失って沈んでいくゆめの手を掴むと、そのまま海面まで上がり、岩のうえからジィムが引き上げた。博樹もすぐに上がり、ゆめの胸に耳を当ててから、顔を横向けて胸を押すと、ゆめはゴホゴホと水を吐いた。意識がまだ朦朧としているので、口で息を吹きこむと、咳こんで目を開ける。

「よかった」と博樹は安心して、ゆめを抱き上げてそのまま家に急いだ。

 岩の陰からもう一人海へ入った男がいたが、だれも気がつかなかった。ゆめが助けられると自分も岩場に上がり、助かったことを確認して去った。男はアランで、このことはトニーへは連絡されなかった。

 ジィムがさきに走って帰り、バスタブにお湯を溜めて、一番近くの病院へ電話をしてドクターに往診を頼む。あとから帰り着いた美貴がソファにバスタオルを広げ、ゆめの部屋から着替えを持って降りてきたときに博樹がゆめを抱えて帰りつき、そのまま風呂場へ運んだ。美貴が手早く服を脱がせて、博樹がバスタブへ浸ける。きれいに海水を流し、バスタオルに包んでソファに移動させる。そこで博樹とジィムはキッチンへ移り、美貴が体と髪を拭いて、服を着せる。

 ゆめはまだぼんやりとしててされるがままになっているが、美貴に「ありがとう」と言うと眠ってしまった。

 博樹がシャワーを浴びているあいだにジィムがゆめを自室のベッドに寝かせてくる。美貴は濡れているゆめと博樹の服を洗濯機に入れてまわしはじめる。タイミングよく医師が往診に来て、手当が早かったので異常なしで、皆安心した。

 見事な連携プレーである。三人でキッチンに座り、温かいお茶を飲んでいる。

「前にもこういうことがあったわね」

「そうだね」と博樹。

「ああ、バスタブで寝た件だね」とジィムも思いだしていた。

「ゆめがいると退屈しないわね」と美貴が言うと、「うう〜ん、もうちょっと楽しいほうがいいよね」とジィムが苦笑いする。

「ゆめが助かってよかった」と博樹がしみじみ言うので、二人ともうなずく。

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