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ゆめの時間  作者: 秋山章子
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博樹とジィムと美貴

 翌日の昼過ぎに、章子から連絡があった。

「あの昨日お会いした秋山です」

「昨日はどうもありがとう。章子ちゃん、ですよね。里子ちゃんと声が似ているので……」

「はい章子です。あの、絵のことですが、母がプロの画家に描いてもらうなんてないことだから、描いてもらったらと言うので……」

「本当ですか。うれしいです。どうすればいいですか」

「家に来ていただいて、描いてもらっていいですか?」

「もちろん。日時とお家の場所と、できれば電話番号も教えてください」

 次の土曜日は朝から美貴の運転で三人は章子の家を目指していた。

 運転席の横のジィムが振り返って、

「うれしそうだね」

「うん」

 博樹の素直な返事にジィムの顔もほころぶ。

 博樹と知りあって五年になるが、いつも真面目で面白味のない堅物だが、世間ずれしていない愚直なところが好きだった。

 大学卒業後、弁護士事務所にいたが、トニー・ブライスがマネージャーと弁護士を探しているという情報を聞くと、すぐに応募した。契約できたときは、自分の未来は約束されたと思ったが、無名の画家、それも日本人の顧問弁護士なのを知ったときにはがっかりした。しかし、トニーが養子にしようとしていることを知ると、博樹に自分の運を賭けようと思った。ところが、時間とともに博樹を世界的な画家にするのが自分の目標になっていたのには、驚くばかりだった。

 そして博樹は、トニーの意図などおかまいなしに、西海岸サンフランシスコに家を見つけて、さっさと引っ越してしまった。残念という思いもなく、ジィムも博樹と運命をともにしようと、西海岸へ行った。

 トニーのほうは、博樹が大学在学中に入賞した絵を日本で見て、本人に会うと人柄が気に入り、卒業後アメリカに来ないかと誘った。卒業後に来たのはいいが、彼女がついてきて驚いた。

 博樹は彼女の理絵りえに押し切られる形で結婚したが、絵ばかりで家庭を顧みなかったから、別居状態になり、離婚調停中である。トニーは博樹が心配で、自身も西海岸へ本業のマンションを建てたり、高台の景色のいいところにホテルを作った。しかし一度も博樹を訪ねることはなく、秘書からジィムに連絡を取らせた。そしてマネージャーとして美貴を西海岸へ送った。彼女ははじめから二人に打ち解けて、優秀なマネージャーだった。次々と個展や、有名無名にかぎらず美術展の契約を取ってきた。向こうからオファーも増えた。しかし日本人にしては長身でスタイルもよく、これまた美人ときているので、美貴目当ての男も多かった。ところが、気の強さも世界レベルなので、男たちは撃沈していった。彼女はアメリカで働きたく高校二年のときに交換留学生になり、日本で高校を卒業するとアメリカの大学へ進んだ。大学の教授の紹介でトニーと契約したのだ。

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