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第4話 航海と後悔と第二言語①

―航海1日目―


 海は穏やかで快晴。まじで何の心配もない。一つ不満を言うとするなら屋根が無い事位であろうか? まあ小舟だし、あと3日で着くし文句は言うまい。



―航海2日目―


 まっじで何も書くことが無いくらいには平和だ。あえて書くとするなら昨日より風が少し強い事位か? まあ師匠は荒れることを知らない海だと言っていたし、心配は要らないだろう。



―航海3日目―


 信じられんくらいの嵐が直撃している。絶対舟2,3回沈みかけてる! でもこの嵐を乗り切れば大陸はもうすぐそこだろう! 俺は生き残るんじゃあ!



―航海4日目―


 終わった。ようやく荒れた海域から抜け出したと思ったら、食料及び飲み水が全て流されていた。大陸はまだ見えない。



―後悔5日目―


 腹が減った。知らぬ間に師匠から貰った刀を齧ったのか、口が血だらけになっていた。もし時を戻せるのなら、出航前に。いや、この世界に転移する前日の夜に戻してください。お願いします!



―後悔6日目―


 何か書かなければ。気を紛らわせる手段がこれしかない。書かなければ。書かなければ。書かなければ。書かなければ。書かなければ。書かなければ。書かなければ。書かなければ。書かなければ。書かなければ。書かなければ。書かなければ。書かなければ。



◇◇◇◇



 「書かなければあっ!」


 俺は何をしていた? 確か喉の渇きと飢えを紛らわせる為に日記を書いてて意識が遠くなって.......なんだここは? 何も無い。真っ白な空間だ。


「遂に死んだか.......俺」


 意識が途切れる前の状況的にも今俺がいる空間的にも、俺は死んだと考えるのが妥当だろう。


「――いんや、まだ君は死んでいないよ」


「誰だ?」


 後ろから誰かの声と足音が聞こえる。こっちに向かってきているようだ。振り向くとそこには――


「なまこあッ!」


 俺がこっちの世界へ来た時の夢。その時に追いかけてきた足の生えたナマコが立っていた。


「ちょっ! おまっ! 誰なんだよほんとによぉ!?」


「誰! 君は私を知らないのか? 私の名は!!.......なんだっけ.......長いこと名乗りなんかしてないから忘れちった!」


「ナマコてめぇ何しに来たんだよ!」


 俺はなんかもう色々と我慢できなくて拳を振り上げナマコを殴りつける。


 ぶにょん


 ナマコはとても柔らかかった。


「きっ.......君~いきなり殴るのは反則だろ~? でも、私は軟・体・動・物!! 物理攻撃なんざこれっぽっちも効かないのだァ~! 凄いだろ? 君もナマコになりたくなっただろう?」


 なんか無駄に可愛い声なのが腹立つので今度は生えている足を蹴ってみた。するとナマコはビクリと震えてのたうち回り始めた。


「いったぁぁぁい! ちょっと!! 私これでもレディーなんですけど!? なんでそういう事する訳!?」


 なんだろう.......レディーと聞いた途端必死にローリングして痛みを分散させようとしているナマコをちょっと。ほんのちょっとだけ可愛いと思ってしまった。


「話は変わりますがナマコこの野郎。この際あんたが何者かはどうでもいいとして、ここどこなの? 俺あの小舟の上でどうなったの?」


「はいそれいい質問! 言うなればここは君の精神世界.......的な感じのアレで、肉体的な君は今も舟の上で死にかけてるよ。ほれ」


 そう言うとナマコは俺の目の前になにやら画面のようなものを映し出した。そこには舟の上でぶっ倒れている俺が映っていた。


「.......これ、どうするんですか.......?」


「早とちりはダメよ~? それを今から君に教えてあげる所なんだから~!」


 うにうにと、いやナマコなのだからなまこなまことムカつく動きをしながら決めポーズを取っている。

めんどくさいな。このナマコ。


「と言いますと?」


「君の肉体を今この海の上から大陸のどこか.......国のある所が良いわね……に飛ばします! そこまでは大サービスしてあげるから、あとはまあなんとか頑張んなさい」


 あれか、このナマコは神的な上位存在なのか.......多分.......ならここから少しおだてれば何かオプションが付いちゃったりするんじゃないの?


「まじ? あんた神だな! いやぁ~さっきは殴ったり蹴ったりして申し訳なかった!」


「いいよいいよ~。マツル君が今度から気を付けてくれれば!」


「さっき少し触れてみて分かったけど、あんた.......いや、ナマコ神様の足スベスベで綺麗ですね!」


「も~褒めたって何も出ないぞ?」


「それじゃあ言いたい事は言えたんで、ちゃっちゃと大陸のどこかの国に飛ばしちゃってください!」


「ちょちょちょ~っと待ちなさいマツル君!! 君.......中々見所があるじゃあないか! そんな君にはこの世界で役立つプレゼントを一つあげよう!!」


「プレゼント.......いえ、気持ちだけで十分です!」


「謙虚~! ますます君の事が気に入ったよ!――もうすっごく強い! 最早チートな能力あげちゃう!!」


ビンゴ!!! この人(ナマコ?)チョロいな.......ここまで読み通りに事が運ぶとは驚きだよ。


「では、有難く頂戴致します.......して、一体どんな能力が貰えるのですか?」


 そこが重要だ。これで使えない能力だったら本当に困る。てかキレる。


「ふっふっふ.......この世界にピッタリなチート能力を授けよう! その名も! 【全力全開(フルスロットル)】!!!」


「フルスロットル???」


「この能力は単純明快! 《《魔法》》の威力を無限に高める事が出来る能力ッ! 見た所君は剣士っぽいけど、魔法剣士と言うのも結構乙なものじゃないかい?」


「うぉぉぉ魔法剣士! 異世界っぽい!! 最高ですナマコ神様!!」


 この能力があれば「キャーマツル様カッコイー!」とか「一生ついて行っても良いですかー?」とかの女の子がたくさん集まってくれて一瞬で俺の目標「女の子にチヤホヤされる」が達成されるのではないか!? 


 控えめに言って最高のチート能力じゃあないか!


「ありがとうございます! ナマコ神様! この能力、一生大事に使います!!」


「ウムウム――私も話しかけてくれさえすれば必要な事は答えるから、気軽に頑張ってね~!」


 そのナマコ神様の言葉を最後に、俺の意識は再び闇へと落ちるのだった。

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