第35話 サラバンド王国騎士団長③
くっそ......息が上手く吸えねぇし吐けねぇ......
『肺と気道。特に肺の方が大きく損傷しているね......このまま動き続けるのはダメージが大き過ぎる気がするよ』
ナマコ神様が言うには、何か粉のような有害物質を吸い込んだ可能性が高いらしい。
つまり、それがレオノラの魔法って訳だな。
あれ? でも魔法使いって魔鉱石を媒体にして魔法を使ってるよな? 杖らしきものは持ってないし、一体どうやって......
『多分あれだね――――』
「レオノラ......お前がどうやって魔法を使っているのか気になってたが......その左手薬指の指輪だな?」
指輪には、灰色に発光する石が埋め込まれている。恐らくあの石が魔鉱石なのだろう。
「ふふ......口から血を垂れ流しながら無様に倒れ伏す男が聞くセリフではないが良いだろう教えてやる――――」
レオノラは退屈そうな表情から一転して満面の笑みを浮かべながら語り出した。
「――そう! この指輪は魔鉱石が埋め込まれた俺の宝物!! これは俺の誕生日にまだ小さかった頃のホノラが『おりーりゃんプレゼント!』と俺にくれた世界最高の至宝! あぁ......! 今のホノラも最強に可愛いがあの頃のホノラもまた愛らしい!」
遂には指から外し頬擦りまで始めた......
「おいクソ兄貴コラァ!! なに恥ずかしい事大人数の前で言っちゃってるの!?」
とんでもない過去をバラされた結果、顔を怒りで真っ赤に染めたホノラが乱入してきた。
つか、妹からのプレゼントを左手薬指にはめてるのか......シスコンキモいな。
「愛する俺の妹よ。なぜ怒る? 後世に語り継ぐべきエピソードではないか?」
「そういう所が一々気持ち悪いって言ってるの! ホント信じられない!」
遂には俺を差し置いて兄妹喧嘩が始まってしまった。
「あの......ホノラさん? そろそろ再開したいんですけど......」
ウィールさんも困惑のこの表情である。
「わかったわ......邪魔して悪かったわね......マツル! 私のクソ兄貴の得意な魔法は“灰魔法”よ! だから気を付けなさい!」
最後の最後で超重要な情報きたぁァァァ!!!!
成程灰魔法か......灰を作る魔法ってのが自然な考えで、それを吸い込んだから
肺が損傷したと!
「ホノラ、サンキュな! ネタが割れたならこっちのもんじゃい!」
「......絶対勝ちなさいよ」
「任せとけって」
ホノラは顔が赤いまま観客席へ戻って行った。モフローを頭に乗せて一緒に跳ねている。
「貴様......そうやって僕の愛する妹を誑かしたのだな......」
「だから誑かしてなんかいねぇって! アイツは俺の大事な仲間だ!」
こっちはこっちでご立腹か。だが、灰を生成すると言う魔法のネタが知れた以上負ける事は――――
「貴様、俺がなんの魔法を使うか分かったから勝てるとか思っていないよな......良いだろう。俺の灰魔法の真の力、見せてやろう......」
◇◇◇◇
マツルとレオノラの戦闘を見るモフローは、大福の形状に似合わない険しい顔でホノラに話しかける。
「小娘よ......小僧が本気で勝てると思っているのか?【灰色の英雄のレオノラ】と言えば、我の元主である魔王ニシュラブも警戒する程の人物。いくらなんでも――」
ここまで言いかけたモフローをホノラが顔の前に近付けてつぶやく。
「黙って見てなさい。マツルなら勝てるわ。でも、ここから戦いはより激しくなってくるわね」
ホノラの言う通り、戦闘は激化する。その決め手思いの外早く訪れた。
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