第27話 最強証明②
「――小僧言うではないか!! 良いだろうその話乗った!! 我を本当の本気にさせた事を死んだ後に悔いるが良い!」
さて条件は整った。あとはどうやって狼の最強魔法を耐えるかだけだな......
『バカは君の方なんじゃないのかい? わざわざ本気にさせることは無かっただろうに』
あー、本気のあいつの魔法を耐え切ってこそあいつも気持ち良く俺のお願いが聞けると思うんだよ。あと、俺の師匠なら絶対そうするからかな。
『イカれてるねぇ......やっぱり私は君の事が大好きだ!』
自称女神のナマコに言われても嬉しくないなぁ......
「――小僧、準備は良いか?」
「ああ! どっからでもかかって来い!」
とは言ったものの、結局確実に耐える手立ては思い付かなかったので、俺は賭けに出る事にした。
狼は頭を下げ、何かを呟き始めた。
「天を裂き、地を穿つ万雷の皇帝よ。閃狼の王は欲す。その力よ、眼前の御敵を焼き尽くせ【閃狼魔法 狼王轟雷皇咆】!!!!」
詠唱を経て繰り出されたたった一本の爆雷は今までのどの魔法よりも強力で、俺が反応するよりも早く身体を貫きその勢いのまま地面を抉り周囲を吹き飛ばした。
「ガァァァァァァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!!!!!!!」
「マツルーーーー!!!!」
ホノラも涙ぐみながら俺の名を叫んでいる。いや、ほぼホノラがこの状況作ったんだからな?
「クァハハハ!! どうだ小僧! 詠唱を破棄せず繰り出された我の魔法の味は!! やはり貴様は我を本気にさせてしまったことを後悔しながら死ね!!」
ここまで言って狼は不可解な事に気が付いたみたいだ。
「小僧......何故貴様はまだ人の形を保って絶叫していられる!? 本来ならば声を上げる事すら許されず消滅するはず......貴様一体何をしたァァァ!!!!」
驚愕の表情で叫ぶ狼。
「根性!!!!」
本当に種も仕掛けもないただの根性だ。体裂けるんじゃないかって位痛いのと熱いのとで意識はいつ飛んでも可笑しくないが、それでも死んでない俺が今一番驚いてる。
「根性......我の最強魔法を根性......今日だけで二人に耐えられた......なんなのだこの小僧と小娘は......」
狼はガックリと項垂れる。その時、延々と降り注ぎ続けた雷も止まった。
「っはぁ~! どうだクソ狼......俺の勝ちだ......」
とにかく大きく深呼吸。酸欠だった全身に酸素が行き渡るのがわかる。
あと数秒雷が当たり続けてたら死んでたかも知れない。
「――我は貴様等の強さを存分に知った。小僧の願い。なんでも聞こうぞ」
強い電撃で忘れかけてた......えーとじゃあどうしようかな...そうだ!
「お前、俺の仲間にならないか?」
「良いぞ」
「――やっぱりお前みたいな強い魔獣を従えるってなんかカッコイイし。あ、嫌なら他の...え? 良いの?」
「なんでも言う事を聞くと言っただろう? それに、強き者の仲間と言うのは我も願ったり叶ったりだ」
狼はしっぽをブンブンと振り回し、とても嬉しそうな声で吠えた。
「マツル......根性で耐えるって何よ!? アンタさては化け物だったのね!?」
無傷だった奴に化け物呼ばわりはされたくねーよ。
「じゃあ狼、俺達の仲間として最初の仕事だ。服が殆ど燃え尽きて痴女まっしぐらのホノラをその毛並みで優しく包みつつ城壁の上まで運んでくれ......あとは頼ん...」
あれ......身体に力が入らない...地面に倒れたのに......受身を取れなかったのに痛くない...肺に空気が入らない......あれ?
「どうした小僧!? 返事をしろ! おい!!」
「マツルが息してない! 私は良いからマツルを――――」
俺の意識は、ここで途切れてしまったのだった。
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