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開戦の合図

「召喚に対価も寄こさぬ不届き者は誰ぞ?」

 運命の輪の番人であるカフは無機物のように光る紫色の髪と銀色に近い灰色の瞳をしています。

 天使の輪のように瞳と同じ色のメビウスの輪が頭の上に浮かんでいますね。メビウスの輪とは帯状の長方形の片方の端を半回転させ、他方の端に貼り合わせた図形のことを言います。

 表裏もなくずっと繋がっているというところが、運命を表しているのでしょうか。

「カフ様、お久しぶりですっ!」

「お久しぶりなのです」

「お久しぶりですね、カフ様」

「お主らであったか。息災か?」

 知り合いだったのですね.穏やかに見えますので、反転はしていないようです。確かカエルムは、ここ百年で悪意が増えたと言っていましたね。気になります。

 〈エクストラクエスト〝悪意の急増〟が発生しました〉

 アナウンスは無視します。クエストはほとんどが気になることですので、クエストがなくても調べていることでしょう。

 私の気になることがエクストラクエストになるのかを、運営に問い合わせてみたくはありますが。

「元気ですっ。でも、セフィロトの樹が封印されてるみたいでっ」

「ピンチなのです」

「そうか。【幸運の到来】」

 カフ様がスキルを使ったようです。その証拠にセフィロトの樹から光が溢れ出して、瞳を開けることすらままなりません。

 〈エクストラクエスト〝セフィロトの樹の封印を解除しよう〟が終了しました。クエスト達成により、カフとの契約が可能になります〉

 やがて光が落ち着くと、淡く光る白髪と金色の瞳を持つ男性が現れました。頭に王冠を被っているので、セフィラの一人であるケテル様でしょう。

「カフ、ご苦労であった。我は第一のセフィラ、ケテルである。そなたがカフを呼び出したのだな」

「はい。ですが、ここにいる者の助けがあってこそ。私はその指示に従い、カフ様を呼び出しただけにございます」

 私はただスキルを発動させただけですからね。ほとんどなにもしていないと言って良いでしょう。ケテル様は神様よりも、王座で膝を組む姿が似合いそうです。

「謙遜はよせ。資格なき者がカフを呼び出せば、深淵に引きずり込まれる。ダアトが玩具にするだけだ」

 ダアトは十個のセフィラに含まれないセフィラです。隠されたセフィラとも言われますね。

 そして、ダアトは深淵にいると言われています。ケテル様は涼しい顔をしていますが、ウィスペルは小さく悲鳴を上げています。深淵はよほど怖いところなのでしょう。

 深淵に引きずり込まれないように、気を付けなければいけませんね。

「いつでも我々を呼ぶと良い。力を貸すに値するか試練が課せられるだろうが、そなたなら大丈夫であろう」

 〈セフィラを取得しました。取得条件は第一のセフィラに認められることです。セフィラと呼ばれる十一の存在を呼び出すことができます〉

 そう言ってケテル様は姿を消しました。急に姿が消えたので驚きはしましたが、神様ですからあり得るという結論に至りました。

「私も認めようぞ。暇なときに呼べ」

 〈エクストラクエスト〝カフと契約しよう〟が終了しました。クエスト達成により、運命の輪を取得しました。取得条件はカフと契約することです。自覚している未来を変えることができます〉

 自覚している未来ですか。未来予知などがないと、使いどころが難しそうです。冒険をするわけではないので、使うことがあるかもわかりませんが。

「あの、一つ聞きたいのですが。運命が消滅するとどうなるのでしょう?」

「恋愛ができぬ」

「恋愛ができないことが、重大なことだということでしょうか」

「うむ。また呼べ」

 逃げたと思うのは仕方のないことだと思いませんか? 色々な問題が起きるのもわかりますが、少し拍子抜けというか。

 もしかして、誰か好きな人でもいるのでしょうか?

 〈エクストラクエスト〝カフの恋愛模様〟が発生しました〉

 カフ様の恋愛のお話はぜひ聞きたいです。カフ様は好きな相手の話をするときに頬を染めるのでしょうか。

 それとも、淡々と説明するのでしょうか。淡々と説明したとしても、行動に表れそうですね。

「これでカフ様といつでも話すことができるのです。嬉しいのです」

「私もっ。カフ様と話ができるの嬉しいっ」

 カフ様は好かれているようですね。確かに無表情でも思いが行動に表れるカフ様は、親しみやすいのかもしれません。全く感情がない人ではありませんからね。

「ケテル様は久しぶりに見たな。表に現れること自体が珍しい」

「確かにっ」

「主様のこと、ケテル様は気に入ったのです。ケテル様は可愛いもの好きなのです」

 もしかして、この小さい身長が功を奏したのでしょうか。少しこの小さい背も悪くないななどとは、思っていませんよ。思っていませんからね!

「実がついたな。十三個あるぞ! みんな食べれる。やっと俺も………食べれるぞ!」

 それほどまでにセフィロトとの樹の実を渇望していたのですか。それなら、なぜ樹の実がないことを気付かなかったのでしょう? 不思議ですね。事件の予感がします。

 〈エクストラクエスト〝記憶の喪失〟が発生しました〉

 やはり、アナウンスが流れました。記憶の喪失ですか。喪失ということは大切なものがなくなるということ。

 大切な記憶を失っているという状態ということですね。これは早急に解決しなくてはなりません。ですが、事態を把握できていませんので動くことはできません。もう少し様子を見ましょう。

『さぁて、きみは気付くことができるかな』

 思えばその声が開戦の合図だったのかもしれません。普通の日常が少しずつ変わっていくことにすら気が付くことができないほど、記憶は巧妙に微妙に喪失してしまう。

 そのことに気付いたとき、私はわかったことがあります。

 仕組んだ犯人は誰であろうと、たとえ敵わない敵であっても許さない。私はそう思うほど、この日常が大切だと知ったのです。

今日も遅くなりました。すみません。新しく章を作成しました。そして、新しく作成した章プロローグ編はこの話で終わりです。読んでくださりありがとうございます。

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