国王の処遇
「国王の処遇ですが、どうすれば良いと思いますか? こちらで引き取れるのならば、引き取りたいのですが……」
「あの国は確かウンディーネ様を信仰していましたよね。神託を授けることはできますか」
「たぶんできると思うけど、神託を本物だと思う人はいないかも? 最近は表立って動いてないでしょ? 空想上の存在だと思われてるみたいだから」
「わらわが幻惑で惑わしてもいいのだぞ?」
黒色のベールで瞳を隠している妖しい雰囲気の女性が近づいてきました。髪は赤茶色なのですが、毛先は水色です。変わった毛色ですね。
アサギマダラという蝶が髪と同じような色をしていたと思います。女性の背中に蝶の羽があるので、思い出したのですが。
「わらわは種族名を幻蝶という。そうではない名を付けてくれぬか? 可愛いお嬢さんよ」
手の甲にキスされました! 危うく倒れてしまうところでしたよ。あまり紳士的な対応をされたことがないので、本当に驚きました。
それにしても、名前ですか。蝶という意味の言葉は安直すぎますかね? となれば、幻惑から考えましょう。幻惑ということは幻……そうですね。思い付きました!
「夢という意味のソムニウムはどうでしょうか?」
「ソムニウムだな? わらわのことはソウと呼んでくれたまえ、主さん。わらわは主さんの講師を務めることになっている。これからよろしく頼むぞ!」
「よろしくお願いします、ソウ。幻惑について聞いても良いでしょうか?」
「鱗粉を撒き散らせば、私の望む幻を見せることができるのだよ。この羽があるおかげで飛ぶことができるんだ。空を飛んでいれば風によって、鱗粉が勝手に撒き散るから世界中を惑わせられるぞ?」
そこまではしなくても良いのですが、国王を引き取るのならば世界中を惑わさなくてはならないでしょう。それを考えると惑わすのは、大変なことですね。
ほかに良い方法があれば良いのですが、考えても思い浮かびませんね。どうしましょう。
「あの国って国王じゃなくて王妃様が動かしてるはずだから、国王が失踪しても国は大丈夫だと思う。あとは王妃様の許可が取れれば、国王がいなくなっても良いんじゃないかな?」
ルゥくんが案を出してくれますが、正直に言って現実的ではありませんよね。許せないという気持ちだったので、高貴な人ということを忘れていましたが、本当は私などが会える人ではないですから。
「ちょっと待って、王妃の名前を教えてくれる?」
「確かディナルア・トゥーナ・フェヴァンライトだったはずだけど」
「長いっ! ディアの名前ってこんなに長かったんだ。うぅんと、ディアだったら神託を信じてくれると思うよ! ちょっと思ったんだけど、私は精霊だから神託じゃない気がする」
「精霊託はおかしいですから、神託で良いと思いますよ」
「うん、そうだね!」
精霊託と何度も繰り返し思っていたら、変だと思わなくなりました。不思議ですね。逆に精霊託というものがあったほうが、良いと思うようになりましたよ。
「やはり、精霊託でも良いと思います」
「確かに変な感じしないかも? これからは精霊託にしようかなぁ。前に神託と間違えられて、大変なことになっちゃったから」
「そういえば、神託を授けられた少女が世界征服を試みたことがありましたね」
静観していたホーラが急に大変なことを告げてきました。声色的に世界征服は失敗したようですけれど。ほかにも大変なことを伝えられていますからね。
逆に私は世界征服をしようと思ったことに、驚きと同時に感心してしまいます。私だったら、
「それ、ヤバくね?」
今まで黙っていた羅乃くんが思わずといった様子で呟いています。ウィレンは想像以上の大事に固まってしまっていますね。
「世界征服は失敗したから、大丈夫だよぉ。その子は深淵に行っちゃったけど」
「ダァトのところに行ったということですか?」
「違うよ? ダァトがその子なの」
「そういうことですか」
最初からダァトという存在ではなかったということですね。ということは、代替わりとかするのでしょうか? 考えれば考えるほど、面白いです。
「じゃあ、ディアに精霊託を授けとくね!」
「お願いします、ディーネ」
「うん! 全部伝えておくね」




