姉への思い
どうすれば良いのでしょうか。お姉様に会いたいというのに、会えないというのはなぜでしょう。恥ずかしいので、現実では会うことができません。もしかしたら、ゲームの中では会うことができるかもしれないと思ったので、ゲームをお姉様に勧めました。だというのに、肝心のお姉様がどこにいるのかわかりません。
「はあ。お姉様にゲームを勧めたのは、間違いだったかもしれません。ですが、お姉様は楽しそうな表情をしていますし、勧めて良かったと思う出来事も……。どうすれば良かったのでしょうか」
「そんなこと思ってたのか、ウィレン」
「いつもお姉様のことしか考えていませんが、なにか?」
「なんでもない。ウィレンって思ってたよりも、シスコンなのか?」
ラノンがなにか呟いたようですが、お姉様のことを考えているので気になりません。僕に聞かれたら悪いようなことでも、意外と気にならないのですよね。お姉様のことを考えていると、なぜか怒りがなくなります。
「おい、何度も呼んでるんだが」
「ちょっと、僕の声も聞こえないの?」
瞳の前で手を振られているような気がします。お姉様のことを考えてているときは、目の前で起こっていることすらもわからなくなってしまいます。そのこともあり、お姉様のことを考えないようにしているのですけれど。
「僕のことを呼んでいましたか?」
「呼んでたぞ! なんで聞こえてなかった?」
「お姉様のことを考えていると、喋り声が聞こえなくなりますので」
「えっ、そんなことあるの?」
ラノンとルゥに諦めたような表情をされます。なにを諦める必要があったのでしょうか? 二人は疲れているようなので、気になりますが聞かないでおきます。
「それよりも、お姉さんに聞いてきた?」
「ワールドアナウンスの件ですか。聞いてきましたよ。お姉様は自分の名前が、アナウンスに流れて煩かったとだけ言っていました」
「えっ、じゃあ? 無自覚ってこと?」
ルゥの言う通りですね。無自覚と言えば、無自覚でしょう。どちらかと言えば、無知と言うほうが正しいような気がしますけれど。
「ええ、貢献度という制度があることも、知りませんから」
「嘘じゃないのか? 街の人達に好かれるために、気にしないといけないだろ?」
「お姉様がいるのは浮遊図書館のようですから、あまり気にしなくても良いのではないのかと」
「っていうか、浮遊図書館ってほんとにあったの?」
確かに普通は驚きますよね。お姉様はいつも普通ではないので、驚きに耐性あるようになってしまったようです。ふと思ったのですが……浮遊図書館の場所がわからないので、会えないのではありませんか?
「あっ」
「急に膝から崩れ落ちてどうした!」
「たぶんだけど、お姉さんに会えないからショックを受けてるんだと思う」
「そうか、浮遊図書館の場所はわからないもんな」
そうですよね。やっぱり、会えないのですよね。お姉様とやっと話せると思ったというのに、なぜこんな試練を神様はお与えになるのですか!
「うっ」
「現実を突きつけられて、もっとショックを受けてるね」
「すまん、ウィレン」
「ダメージは負いましたけれど、お姉様に関係することなので許します」
「もしお姉さんに関係することじゃなかったら?」
なにを聞きたいのでしょう? ダメージを負ったのが、お姉様の話ではなかった場合の話ということでしょうか? お姉様の話ではない場合ですか。
「許さないでしょうね。一日ほど絶交では、ないでしょうか?」
「良かった、お姉さんの話で」
「ウィレンの鉄の心を溶かすとは…。ノウィル様はすごいな」
「ええ、お姉様はとてもすごいですよ!」
お姉様の良いところを延々と話していると、ルゥが気分の悪そうな顔をし始めました。ラノンは嬉々とした表情で、僕の話を聞いてくれています。
「正直なんか、惚気を聞かされてるみたいで嫌だな」
「惚気ですか? お姉様は彼女ではありませんよ?」
「そういうことを言ってるんじゃないよ」
ルゥは理解できないという表情をしています。なぜでしょう? ただお姉様の良いところを語っているだけですよ? それのどこに理解できない要素があるのでしょうか。
「ウィレンには、わからないだろうね」
「なにがわからないのですか?」
「僕みたいな腹黒い人間にウィレンの純粋な思いは、すっごく眩しいの! まあ、それだけじゃないけど」
「それだけではないとは?」
「んっ、もう。そんなじっと見ないで。はあ、わかったよ。他人の良いところを聞くと、自分の悪さが浮き出てくるんだよ。自他ともに認める腹黒なんだから」
そんなに悪いことをしていたのですか? 少しルゥから距離を取ってしまいました。そんな僕を見透かすように、見つめられました。
「ウィレン、バツが悪そうな顔しなくても良いぞ? ルゥは純真なウィレンに、言えないような悪いことをしてるからな」
「僕が純真ですか? そんなことありませんよ。あの家に生まれたんですから」
自虐的になってしまったのは、仕方のないことでしょう。事情を知らない二人は、不思議そうな表情をしていますけれど。この話は気軽に話せないですからね。お姉様も僕と一緒で、誰にも話していないようです。
「話したくないなら話さなくて良いからな。話せるようになったら、話してほしいが」
「そうだよ! 僕達はいつでも受け止める覚悟ができてるからね」
「そんなこと言って嘘だろ」
「ええ、酷い! そう言われるぐらいのことは、してるけど」
「してんじゃねえか!」
やはり僕は良い友達と出会いましたね。お姉様に胸を張って紹介できます。紹介したくはありませんけれど。ルゥはお姉様を可愛がってしまいそうですし、ラノンと話したいと言っていましたから。お姉様を取られるのだと思うと、嫉妬してしまいます。
「今日は浮遊図書館を探すとしましょうか?」
「そうだね、賛成!」
「俺も賛成」
〈エクストラクエスト〝浮遊図書館を探そう〟が発生しました〉
「おっ、クエストか」
「しかも、エクストラクエストだよ!」
「お姉様を探すついでに、クエストを達成できるとは一石二鳥ですね」
「よっしゃ、気合を入れて探すぞ!」
「頑張ろうね」
このクエストが発生したことによって、お姉様と敵対することになるとは思いませんでした。お姉様と敵対するのは嫌ですが、会うことができたので嬉しさが勝りましたけれど!




