フェニックスの受難
残酷描写、火傷の描写を含みます。嫌いな人は読まないでください。
「ノウィル様のために地上の情報を集めなければなりません。フェニックス、お願いできますか」
「えぇっ、久しぶりに呼び出された用がそれだけなのかい?」
「はい。そうですが」
あらまぁ、首を傾げて。なにが不満なのかわからないようだね。ちなみに私はフェニックスと呼ばれる幻獣だ。炎を操ると言われているね。
その通りなのだが、少し違う。操るのではなく、炎を生み出すことができるんだ。四大精霊のサラマンダーは炎を操ることしかできないから、私のほうが上位の存在だと言われることもある。
サラマンダーの炎を操る力は私よりも強く、全く規模が違うのだがね。
「わかったよ。私も見ていたからね、お前さんの主のことは気になっていた。情報の収集が終わったら、主さんに合わせてもらうよ」
「わかりました」
今はホーラだったかい? ホーラの返事を聞いてから、すぐに飛び立ったよ。私は地上に行けるが、ホーラには翼がないからね。
翼がほしいと前に言っていたから、そのうち飛ぶことのできる魔術を考えるのだろう。ホーラに勝てる唯一のところなのだから、あまり早く完成させないでほしいところだよ。
「あぁ、久しぶりの地上だねぇ。私の知らない場所が多いぞ? 数千年も経てば、変わるというものかね」
「おーい、そこの色っぽいお姉さん! 俺と楽しいことしない?」
真昼間から、ずいぶんなお誘いだねぇ。私の美貌が衰えることはないからね。永遠の二十歳ってやつだ。
私ら幻獣は長い時間を生きてるからか、みんな人型になれるんだよ。私を誘っても良いことはないが、幻獣の人型は美しいから発情するのも納得だ。
「お前さんでは無理だよ。私に耐えられない」
「ええっ、お姉さんこそ俺に耐えられないと思うんだけど?」
「そういう意味じゃないよ。黒焦げになっても良いかいと聞いているんだ」
私に害意を向ける者は例外なく黒焦げになってしまうんだ。まぁ、こやつさんが私に向けてるのは害意じゃないがね。
そういう思いも黒焦げになる対象だ。私が本当に愛している奴だったら、別なんだけどね。
「黒焦げ? そんな脅しは通用しないよ、っと。ギャアァー!」
「だから言っただろう?」
私の手に触ったから、手が火傷してるよ。可哀想にねぇ。自業自得とも言えなくもないがね。私に冷たくされている男を見物してた人々も、このおかしな状況に気付きだしたようだ。この街にはもういられないね。
「私の相手は一人だけって決まってるんだよ。お前さんには生理的嫌悪を感じる。これに懲りたら女の子をひっかけないことだね」
「わかったっ、わかったから! 誰かこの手を直してくれっ!」
おやまぁ、痛みに弱い子だね。そういえば、誰かが言っていたような? 人を傷つけることに長けている奴は、逆に傷つけられるのになれてないと。そうか、こやつさんは女の敵かいな。もう少し懲らしめてやろう。
「なにをするつもりだ? 嫌だ、やめろっ! ギャァアー!」
聞くに堪えない醜い悲鳴だねぇ。顔に手を当ててやったから、無駄に格好良い顔にひっかかる女の子も減るだろう。ふふっ、これで女の子が傷つかない。久しぶりに、良いことをしたなぁ。
さて、地上のことを調べるかね。ついでにホーラの主さんのことも調べようか。ホーラの主さんがそこから来たのかは別として、あの場所に繋がる転移魔方陣があるだろうからね。
「ふぅ、とりあえず違う場所に行こうかね。ここだと、視線が煩わしい」
姿を変えるために路地裏に回り込むと、さっきの火傷した男が追いかけてきたよ。どういうつもりなのかね。私に報復するのは無駄だと悟っているだろうに。それとも、悟れないほど馬鹿だったのかい?
「死ねや!」
後者だったみたいだねぇ。悟れないほど馬鹿だったようだ。小さいナイフを私に向けて刺そうとしているみたいだね。そんな遅い動きじゃ、私を刺せないよ。そんな小さいナイフだったら、すぐに再生するしねぇ。
「まぁ、面倒だから気絶しときな」
首辺りに手刀を当てる。思いっきり振りかぶって手刀を首に落とすと、なぜか首か切断されるんだよねぇ。手に血が付くし、嫌だと思わないかい?
だから、当てるだけにしておくんだ。首に火傷をするからか、大人しく気絶してくれるからね。
「はぁ、情報収集できてないじゃないか。次は海沿いの街に行くかね」
私の災難はまだまだ続くみたいだ。海ではクラーケンに絡まれて、次に森に行ったらベヒモスに戦いを申し込まれたよ。
なんでかね。情報収集ぐらい何度も経験してるはずだよ。ホーラの主さんと早く話したいし、早く終わらせたいんだけどね。もう少し終わらなさそうだ。
少し短めのお話です。フェニックスがノウィルの情報収集をするだけの話だったのですが。ほのぼのとした話を期待していた人は申し訳ありません。私もなぜこんな話になったのか未だ謎です。




