ヴィルじいのお願い
「初めましてじゃな。ほんとの名前はヴィルダなんじゃが、みんなヴィルじいと呼ぶんじゃよ。これからよろしくのう」
なんか可愛いです。お爺ちゃんなのですから、可愛いくはないはずなのですけれど。存在そのものが可愛いというか。とにかく私の周りには可愛い人ばかりということですね。
「ノウィーちゃんは番人を呼べるんじゃろ? ツァディー様に久しぶりに会いたいんじゃ。呼んでくれんかのう」
〈エクストラクエスト〝ヴェルじいのお願い〟が発生しました〉
この場所で発生するクエストは全てエクストラクエストなのでしょうか。ということは、宵闇の図書館が特別な場所ということですね。〝ヴェルダのお願い〟ではなく、〝ヴェルじいのお願い〟というクエストの名前に少し驚きました。名前を付けた人を想像しますと、普段から少しお転婆でやらかしているような人でしょうか? 〝ヴェルじいのお願い〟はとても可愛くて好きです。
「星の番人のツァディー様ですね。呼ぶのは良いのですが、その前に聞きたいことがありまして」
「なんじゃ?」
「ノウィーちゃんとは、私のことですよね? なぜ私はノウィーちゃんになったのでしょうか?」
「可愛いからじゃ。ノウィーちゃんは、小さくてお人形さんみたいじゃからのう」
ぶちっと音が聞こえてきました。いったいどこから聞こえたのでしょう? ふふっ、私の堪忍袋の緒が切れた音でしたか。〝小さくてお人形さんみたい〟ですか。昔の思い出がよみがえってきますよ。一日中を通して着せ替え人形にされた記憶が。
「ノウィーちゃんと呼ぶことは許しましょう。ですが、〝小さくてお人形さんみたい〟という発言は取り消していただけますでしょうか?」
「あっ、ご主人様が怒ってるっ!」
「主様の後ろに般若が見えるのです」
カエルムが般若だとか変なことを言っていますが、人形とは言っていませんので許しましょう。ヴィルじいと呼ぶつもりだったのですが、ヴィルダさんとこれからは呼びましょう。いささか甘い罰だとは思いますが、こういう人は意外とショックを受けるのですよね。
「ヴェルダさん」
「な、んじゃ? なんでヴェルじいと呼んでくれないのじゃ」
やはりショックを受けていますね。罰になりそうです。しょんぼりしています。可愛い。はっ、ほだされるところでした。気を付けなければ。
「それが罰です」
「可愛いノウィーちゃんの声で、ヴェルじいと聞くことができないということかのう?」
私の機嫌を伺うようにちらちらとこちらを見てきます。うっ、可愛いです。なんですか? なんで私の周りには可愛い人しかいないのですか!
「わかりました。はあ、しょうがないですね」
ほだされてしまいましたよ。ヴィルじいが可愛いのが問題なのです! 八つ当たりにもほどがありますね。ぱっと明るくなった表情も可愛いです。
「良かったのじゃ。ノウィーちゃん、大好きなのじゃ!」
思わず抱きつきにいってしまいました。お爺ちゃんなので、私よりも少し背が高いぐらいです。圧倒的な差がないので、抱きしめることができます。ヴィルじいの表情を盗み見ようとしたのですが、視線が合って微笑みかけられます。ヴィルじいに勝てることは絶対にないと悟りました。
「そうでした。ツァディー様を呼び出すのでしたね。【アルカナ【星:ツァディー】】」
〈召喚まで数十秒かかります。しばらくお待ちください〉
考えたのですよ。二十二人もいるわけですから、アナウンスで二十二人もの名前を言われていたら大変ですよね? ですから、スキルの名前と同時に呼ぶ番人の名前も言ってしまえば良いのではないかと。二十二人の名前をスキップできたので良かったです。スキルを使うたびに言われるのは、少し鬱陶しいので。
「供物もなしに召喚するのはどこの誰? って、あら? ヴィルダじゃないの! 久しぶりね」
ツァディー様は金色に銀髪が入ったメッシュの髪です。ゆるくカールしていて、ボブぐらいの長さになりますね。瞳は夜を思わす暗い藍色で、銀色や金色の点が無数に散らばっています。本物の星空を小さくしたような瞳です。
〈エクストラクエスト〝ツァディーと契約しよう〟が発生しました〉
今度からはアルカナの皆様が気に入る物を用意しておきましょう。偶然が重なり、難を逃れているだけですから。私だけでも契約がなせるように、みんなと一緒にいるために頑張りたいと思います。
「急に行方不明になっちゃったから、探してたのよ?」
「すみませんのう。こっちに引っ越してきてから、ツァディー様と連絡を取る方法がなくなってしまったのですじゃ」
「まあ、良いわ。貴方が呼んだのよね? ヴィルダと話したいから、毎日呼び出してちょうだい! 契約はしておいたわ」
〈エクストラクエスト〝ツァディーと契約しよう〟が終了しました。達成報酬として星の感情を取得しました。星の妖精を呼び出すことができます〉
星の妖精ということは、星という存在が妖精化したということでしょうね。ふむ。人の感情から生まれるのですから、星を綺麗だと思う心など色々な感情から生まれた星の妖精がいるのでしょうか。それとも、もしかして。星の感情ということは、星にも感情があるのでしょうか。そして、その感情が妖精化したと。本当のところはどうか知りませんが、憧れるものがありますよね。
〈エクストラに愛されし者を獲得しました。初めての称号です。エクストラクエストを五回連続で発生させ、達成することが獲得条件です〉
エクストラに愛されし者ですか。確かに私はエクストラに愛されていますね。納得の称号です。初めての称号がエクストラに愛されし者というのは、困惑の一言に尽きますが。
「少しヴェルダと話してから帰るわ!」
ツァディー様はそう言ってヴェルじいの手を引っ張って、どこかへ連れて行きました。ツァディー様は行動力がありますね。
読んでくださってありがとうございます。感想を書いてくださった方から、〝エクストラに愛されし者〟という称号のアイディアをいただきました。使ってほしいアイディアがあれば、物語の中に組み込みますので、感想で送ってください!




