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第6話/けれど、まばゆく灯るもの①


「兄上、私です! 〈朝焼けの剣戟〉です! ここ十日分の学院内の動向に関して、報告にあがりました」


 王城の書庫に次ぐ、巨大なデータベース施設……改め、〈王立学院大図書館〉には、地上を統べし国王陛下の血を引く二名の兄弟が人知れず顔を合わせるための「秘密の部屋」が存在している……。

 それは、いつか誰かが口にしたウワサ話であり、仕切りの向こうにいる影絵の男が実現させた真実でもあった。


 ――当国家における正統なる後継者、〈黄昏の鐘〉。


 一方で、その弟にあたる〈朝焼けの剣戟〉は、衝立の正面にうやうやしく跪いてはいるものの、高価な薄い布に浮かびあがる王兄殿下のシルエットを見つめる視線がどうにも硬い。


 ――兄と直接的に顔を合わせなくなってから、もう七年が経過している。


 そのせいか、〈朝焼け〉がこのわずらわしい衝立越しに脳裏に思い浮かべるものといえば、幼き日の凛とした長兄の面影ばかりだ。ここに立つとき〈朝焼け〉は、「昔日の兄」と現状の自分とを性懲りもなく比較する。

 その身を衝立の奥に隠したとて、男とも女ともつかぬ美貌は健在に違いない。羨ましいほど母親に似た、あの鮮やかな顔立ち――。

 カタカタカタ……。

 胸中に渦巻く嫉妬心に呑みこまれかけたところで、衝立のそばに設置された「FAXらしきもの」が第一王子からの伝言を吐き出した。ちなみに、この「FAXらしきもの」は星門出身の人間が旧世界の設計図をもとに開発したカラクリである。


「拝読します」


 〈朝焼け〉は、それに律儀に断りを入れると、ぎこちなくその文書を読みあげた。


「お前が来たことなら足音でわかる。おはよう、親愛なる我が兄弟よ。名に違わぬ勤勉な時間のご到着だね――はい、おはようございます。色々と、その……、光栄です。しかし、早起きひとつとっても、兄上にはかないません」


 王兄殿下からの存外やわらかい便りを受け取っても、〈朝焼け〉の緊張は解けない。そればかりか、生来の負けず嫌いが頭をもたげ、眉根がぎゅっと寄りそうになっていた。


「では、報告に入らせていただきます。まず、文門生〈白銀の譜〉の度重なる規則違反について。次に、同じく文門生〈純なる詩歌(しいか)〉の問題行動について……」


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