✒ 雨の止まない街 8
セロから『 いいこと 』をお預けにされたオレは、ベッドの上で寝転がって1人で拗ねていた。
セロは相変わらず新聞を読んでいる。
マオ
「 …………何か面白い記事でも書かれてるのかよ… 」
セロフィート
「 そうですね…。
強いて言うなら≪ カグザークの街 ≫についての記事が読める──事ぐらいでしょうか? 」
マオ
「 えっ?!
≪ カグザークの街 ≫って、セロが3分の1を半壊させたあの≪ カグザークの街 ≫の事かよ? 」
セロフィート
「 他に≪ カグザークの街 ≫が無いならその≪ カグザークの街 ≫になりますね 」
マオ
「 何でまた…今更じゃないかよ 」
セロフィート
「 ふふふ。
言うようになりましたね、マオ。
確かに “ 今更 ” な案件ではあります。
けれど、それはあくまでもマオとワタシにとって──です。
人間の彼等からすれば、≪ カグザークの街 ≫で起きた現象は “ 今更 ” な案件ではないのでしょう。
何せ原因不明の “ 何か ” が起こり、3分の1が半壊したのですからね 」
マオ
「 その “ 何か ” はオレの目の前に居るセロの仕業だけどな! 」
セロフィート
「 睨まないでください、マオ。
もう時効でしょう? 」
マオ
「 セロのした事は20年経っても時効にはならないよ! 」
そう、もう20年も前の出来事なんだけど、≪ カグザークの街 ≫って所に滞在していた事があった。
≪ カグザークの街 ≫に滞在していた時の事を懐かしがる資格なんて、セロとオレには微塵も無いわけで……。
あの日、あの時、セロとオレは一緒に《 創造主の館 》に居た。
《 創造主の館 》に居たのは約50時間だったけど、現実世界では50分しか経っていなかった。
《 創造主の館 》で薬物ラムネを≪ カグザークの街 ≫で販売して広めていた極悪人達へ拷問に近い──いや、ほぼ拷問だと言ってもいい尋問をしていたのは、誰でもないセロ自身だ。
虫も殺さないような慈母神のように微笑みを絶やす事も無く、唯々穏やかに長いスポイトの中に入っていた自白剤を極悪人達の鼻の穴の中へ長いスポイトを入れて自白剤を注入していた。
因みにセロが使った自白剤は、市販で売られているの自白剤ではなくて、セロが大好きな実験で作った自白剤だったらしい。
何で趣味で自白剤なんかを作っていたのかは知らないけど、その理由を当時のオレは敢えてセロには聞かなかった。
今でもセロが趣味で自白剤を作っていた理由を聞く気はない。
それにしても、至って普通の店で、自白剤なんてヤバいもんを一般街民が平然と買える事に対して、カグザークに巣食う闇を感じた。
浮気をして家族を裏切ったグズ亭主にでも使うのかな??
まぁ…今、思い出してみると色々と含むような事が多かった≪ 街 ≫だったように思う。
オレの目の前でウキウキと楽しそうに極悪人達の鼻の穴へ手作りの自白剤を注入していたセロが、どうやって≪ カグザークの街 ≫の3分の1を半壊させたのか──、その方法はオレには分からない。
だけど、あの惨劇の半壊事件を引き起こした張本人── 真犯人 ──は紛れもなく、間違いなく──、オレの目の前で新聞に目を通して読んでいるセロなんだ。
何で≪ カグザークの街 ≫の3分の1を半壊させたのか──、勿の論、セロに理由を聞いた。
そしたら、セロはオレに向かってこう言ったんだ。
「 カグザークの9割りを消し去るつもりでしたけど……、間違えまてしまいました 」って、至極残念そうな顔をして言いやがったんだ。
「 『 9割りも消し去るつもりだった 』って何でだよ! 」って当時のオレは全然悪ぶってないセロに対して文句を言って厳しく責めたんだ。
やり過ぎにも程があるだろう!!