✒ 雨の止まない街 4
〈 久遠実成 〉に決められた期限なんて来なければいいのに…。
不老不死になったって、終わりは必ず来る。
出逢いがあれば、別れが必ず来るように……。
セロとオレの旅が終わりを迎えるのは未々遥か先だけど、時を止める事が出来ない以上、必ず来てしまう。
マオ
「 セロ…… 」
口からポツリ…と言葉が溢れる。
セロフィート
「 どうしました? 」
マオ
「 …………眼鏡を掛けたら似合いそうだよな 」
セロフィート
「 はあ?
君は…本当にどうしました?
調子でも悪いです? 」
セロは不思議そうな顔をしてオレを見て来る。
マオ
「 オレは元気だよ!
まぁ…強いて言うなら、止まない雨の所為かな… 」
セロフィート
「 ははぁ……、君は憂いてますか 」
マオ
「 はぁ?
別に憂いてないよ。
オレは乙女じゃないし! 」
セロフィート
「 はいはい。
そういう事にしときましょうか 」
マオ
「 いや、だから──、違うってぇの!! 」
セロフィート
「 はいはい。
ふふふ…(////)」
全く何がそんなに可笑しいのか、セロはクスクスと上品に笑っている。
男っぽくなくて、でも女っぽくもない綺麗な指でテーブルの上に置かれているベルの取っ手を持ったセロは、ベルを左右へ動かしてチリンチリン…と鳴らす。
ベルを離した手をメニューへ伸ばしたセロは、メニューを取ると開いた。
マオ
「 セロ、何か頼むのか? 」
セロフィート
「 そうですね。
ワタシも食べたくなりました。
一緒に食べましょう 」
マオ
「 うん…(////)」
オレが注文した9皿目のパンケーキを運んで来てくれた従業員が、空になっているティーカップに紅茶を注いだ後、セロの注文を聞いている。
従業員が下がった後、セロはティーカップの取っ手を持つと淹れ立ての紅茶を飲む為にティーカップへ口を付ける。
オレは今、無性に “ ティーカップになりたい ” と思っている。
宿泊室へ戻って、ベッドの中でセロとイチャイチャしたい!!
マオ
「 セロ… 」
セロフィート
「 はい?
どうしました? 」
マオ
「 注文した料理を食べたらさ、宿泊室に戻らないか? 」
セロフィート
「 はぁ……何故です? 」
マオ
「 何故って……。
そ…そんなの──、言わなくてもセロになら分かってるだろ? 」
セロフィート
「 ふふふ。
分かりません。
教えてください 」
マオ
「 セロの嘘吐き! 」
セロフィート
「 ふふふ。
マオは甘えん坊さん〜〜〜♪ 」
マオ
「 ちょっ──、歌うなよ(////)」
セロフィート
「 おや、可笑しな事を言いますね。
吟遊詩人は歌うものです 」
マオ
「 都合のいい時ばっか吟遊詩人ぶるなっての! 」
セロフィート
「 ワタシは吟遊大詩人ですよ。
フリなんてしてません 」
マオ
「 嘘吐け! 」
セロフィート
「 心外です… 」
“ 心外 ” なんて本当は微塵も思ってもいないくせに、セロは悲しそうな表情をして如何にも傷付いたように振る舞って来る。
全くもう!
心臓は無いけど、胸がキュンキュンするだろが!!
フォーリングラブしちゃうから、マジで止めてほしい(////)
セロと他愛無い話をしていると従業員がやって来て「 お待たせ致しました 」と言ってセロが注文した品を運んで来てくれた。
セロが注文した料理は食べ易くカットされているキッシュだ。
スイーツキッシュじゃなくて、惣菜キッシュの方だ。
何種類もの美味しそうなキッシュが皿の上に並べられている。
セロフィート
「 マオも食べてください 」
マオ
「 有り難な…。
オレはセロにパンケーキを1枚やるよ 」
セロフィート
「 有り難う、マオ 」
セロがオレに向けて、ほわっ…と微笑んでくれる。
ほわっ…て微笑む時のセロは何でかな、お母さんみたいに見える。
オレは自分を産んでくれた母親の顔を知らない。
いや…覚えていない。
幼過ぎて母親と触れ合った頃の記憶が無いんだ…。
だから、お母さんがどんな感じなのかオレは今一分からないんだ。
なんだけど…セロを見てると本当に時々だけど、知らない筈のお母さんみたいに見えちゃう時があるんだよな…。
セロの雰囲気は不思議過ぎるんだ。