✒ 雨の止まない街 3
どんよりとした重たそうな灰色をした雨雲が雨を降らせているんだ。
この雨が降り始めた日から既に20日以上も経っている。
朝から翌朝迄四六時中雨天だ。
憂鬱だ。
オレは憂鬱さを感じながら9皿目のパンケーキを注文した。
窓ガラスにはセロの姿も映っている。
セロは熱心に読書に耽っていて、読む事に集中しているみたいだ。
声を掛けたいのに、話し掛けても良いのか迷ってしまう。
真っ白いコートと真っ白いブーツと御揃いのように真っ白い髪には、白銀も混ざっていて光の加減でキラキラと光っても見える。
健康的な肌を薄めたような色白なで綺麗な肌をしたセロ────。
触りたい……。
注文したパンケーキを待っている間、どうやらオレはセロを見詰め過ぎたらしい。
セロの視線が本のページからオレの顔に向いた。
閉じていたセロの口が開く────。
セロフィート
「 マオ──、どうしました? 」
きょとん…としたような表情をしながら、少しだけ首を左側に傾けたセロが話し掛けて来た。
何時迄も聞いていたい大好きで聞き慣れたな心地の良い柔和な声。
セロフィート
「 マオ? 」
マオ
「 …………セロに見惚れてたんだ(////)」
セロフィート
「 はあ…?
どうしました? 」
マオ
「 どうもしてない。
オレは何時だって、セロに見惚れてる 」
セロフィート
「 マオ…、本当にどうしました?
パンケーキを食べ過ぎた所為です? 」
マオ
「 違うよ… 」
セロフィート
「 そうです?
マオはパンケーキが好きですね。
一体何皿分食べるつもりです? 」
マオ
「 べ…別に何皿だって良いだろ? 」
セロフィート
「 そうですね。
ふふふ… 」
オレに向かってふわっと微笑んだセロは上品にクスクス…と静かに笑う。
オレだけに向けられるセロの笑顔にオレの胸の鼓動はドクドクとが高鳴っている。
オレの肉体から心臓は当の昔に無くなっているのに、何で胸が高鳴るんだろう……。
オレには未だに分からない。
セロに聞いた時は──、セロの身体の中で懸命に脈打ち動いているからだ──って言われている。
セロと魂の契約を交わした時、オレは自分の大事な心臓をセロへ捧げて、セロだけのマオになった。
だから、オレの体内には心臓がなくて……、代わりに不老不死をセロから与えられた。
セロに与えられた1万年間という永い永い時間を共に歩む為にだ。
1万年間という期限を迎えたセロがどうなるのかオレは知らない。
前にセロが教えてくれたけど……、それが本当の事なのかは分からない。
セロが居なくなったら……、オレはどうしよう。
〈 久遠実成 〉に作り変えられた別人格のセロと旅を続けるのかな…?
それとも……≪ エルゼシア大陸 ≫へ戻って、オレに与えられた本来の役目を果たす為に〈 皇 〉として生きるのかな…?
≪ エルゼシア大陸 ≫には、オレの帰りを待ってくれている人達が居る。
オレの知らない所で、勝手にセロに頼んでオレの眷属になった人達だ。
オレが≪ エルゼシア大陸 ≫の〈 皇 〉になる為に必ず必要となる戦力達。
〈 皇 〉になる為には、〈 皇 〉の不在中に領土を治めてくれている国王から領土を返還してもらわないといけないらしい。
それは決して楽な道程じゃなくて……、何度も何度も何度も何度も交渉を繰り返さないといけないらしい。
素直に応じてくれる事は無いに等しく、交渉する際に殺される事もあるらしい。
黒髪と黒い瞳の子供が産まれたら、即殺されてしまうとんでもない大陸もあるらしい。
セロはオレが何度も殺される事のないように、オレ自身が戦わなくても済むようにオレだけの眷属を用意してくれたんだって、オレは思いたい。
セロは優しいんだって、思いたいんだ。