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9話 私の独白ってね


目を覚ますと、知らない天上でした。

これで二回目ですね。


首を振り、辺りを見回すと私が横たわるベッドと同じものが4つあり、その全てに私が知っている子らが寝ていますね。

どうやら、命まではとられなかったみたい。


「“微風”」


辺りに風を送り、室内の様子を観測する。

私たちの他には、誰も居ないようだ。これで、殺し屋が隠れているというホラーみたいな話は無くなった。そして、四人とも、寝息が聞こえる。


「なんとかなったのかしら」


ゲームとは異なるストーリー。

こんな光景は目にしたことがない。

これは、私が介入した結果なのだろうか。本来、怪我をすることもなく、名無しが一人殺されるだけで済んだ何てことない物語が変貌した。


けれど、何度繰り返しても日本人でお人好しな私は、助けられる可能性がある限り、知らない誰かの命を護ろとするかもしれない。


「ほんと、平和ボケしすぎていたかも」


でも、ここは日本ではない。

海外のような、治安が悪い国と同等、魔法がある分、それ以上に危険な場所なのだ。

少しは、反省するべきだ。

次は、どうなるかわからないのだから。


「う、ううん」


私の次に目を覚ましたのはフィアナのようだ。

皆が五体満足でいられたのは、フィアナが防御結界で護り続けてくれたからだ。

最後、殺し屋の魔法が私に襲い掛かる寸前、魔力の壁が目の前に出現したような気がした。

遠くの私に魔法を掛けるのは、簡単ではなかったはずだ。

けれど、護ろうとした。


これでは、どちらが姉か分からないわね。

でも、次は無い。

次は、フィアナの手を煩わせることなくけりを付ける。


「おはよう、フィアナ」

「姉さま……?」

「ええ」

「——よかった。何とか護りきれたのですね」

「ええ、フィアナの魔法が私を救ってくれたのよ。もっと誇らしく胸を張りなさい。フィアナ、ありがとうね。私たちを護ってくれてありがとう」

「でも……。うん、どういたしまして、姉さま」


少しばかり悩みつつ、それでも私の感謝を受け取るフィアナ。

そして、誤魔化すように、辺りを見回す。


「レイフォード様、カノン様、いつまで寝ているふりを続けるおつもりですか?」

「……グピー、グピピー」

「……カノン。それはあまりにないだろ」


と、フィアナの呼びかけに、寝ていると思った二人が起き上がる。

グピーって、声に出す人は初めて見たけど、こんなに滑稽なのね。

使わない様に注意しないと。


「おはようございます」

「ああ、おはよう」

「おはようございます」


とりあえず、挨拶をする。

そして、話は殺し屋へと移る。


「レイフォード様、殺し屋はどうなったのですか?」

「ああ、行方不明だとさ。二人には申し訳ないが、逃がしたようだ。衛兵が来た時には、もう倒れる私たち以外の姿は見えなかったようだ」

「お兄様、いつ、それを知ったのですか? 私たちと同じタイミング……少しばかり早起きして寝たふりをしているだけだと思っていたけど、もしかしてお兄様……?」

「クッ……。」



カノンの追及にレイフォード様から苦しげな声が聞こえた。

てっきり、二人とも同じくらいのタイミングで起きて、私たちが話す間、寝たふりをしているだけだと思っていたけど。

先に起きて、家臣に事の顛末を聞いてきたのかもしれない。


「レイフォード様、王宮内では問題は起きましたか?」

「何故それを! ああ、レミリアの言う通り、王宮内にも殺し屋は侵入したらしい。そして、私の騎士が数人切り伏せられたようだ。」

「そんな……」

「まあ、安心しろ。命は何とか繋げたと報告されている。何でも、殺される寸前、いきなり殺し屋が嗤って、その場から消えたとも」

「止めを刺さずに、その場から消えたのですか?」

「ああ、小さな声で、魔素がどうこうとか呟いていたらしいが。何かは不明だ」



ゲームでは一人、帰らぬ人となった。

だが、この世界では、数人が重症を負ったものの、命は取留めたみたいだ。

私の行動で、ほんの少しだけ、結末が良い方向に変わった。

けれど、人数は増え、今後、騎士の仕事を続けるのは難しくなるだろう。

もしかしたら人生は死んだのかもしれない。


だから、私は責任を負うべきだろう。


「……レイフォード様、その騎士って、どんな方ですか?」

「うん? 一人は小柄な女性だな。だが、魔法の才能がある才女だ。もう一人は、槍使いの少年だが。それがどうかしたか?」

「レイフォード様、その二人私に預けてくれませんか。私のもとに来て欲しいのです」



……これは贖罪だ。


どう考えても、私以外は贖罪だとは思わないだろう。

むしろ、騎士としての地位を失い、途方に暮れた二人に感謝されるかもしれない。


ここは現実だ。

ゲームだが、現実と同じように人々は幸せな未来を願う。

ありきたりな日常を望んでいる。


私にできることは限られている。

いつか、私の手から溢れてしまうかもしれない。


でも、決めた。

私はアイツを許せない。

今後、物語に登場するかは分からない。だけど、いつかやり返す。


最強の殺し屋を私が打ち滅ぼすのだ。

人々の希望を掴むために。


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