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4話 空の王女ってね

背の高い白亜の塔

その眼前に寝転がる少女が居た。貴族らしからぬ格好にも関わらず、その美貌は幾多の視線を集めている――鳥たちや小動物たちが覆いつくさんとばかりに……


「カノン、相変わらずね。その魔法の効果は私にも分からないわ」

「――リア姉さま、お久しぶりですね」


私に気づいたのか起き上がると駆け寄ってくる。

……地面に足を付けずに――プカプカ浮かぶ。


「浮遊魔法が使えるようになったの?」

「ううん、これは風魔法だよ。私の背中から風を放出しているの。重力系の魔法は難しすぎてまだ分からない」

「そう、確かに重力は難しいけど、風魔法で浮かぶって発想は私には思いつかない」


そもそも小柄なカノンだからこそ使える魔法だろう。

私が使ったら、辺りに猛烈な風が吹き荒れてしまう。

優雅さとは程遠い光景を生み出してしまう。


「それで、どうされたのですか? いつもより、楽しそうです」

「あら、カノンに会えたのよ? 貴方とお話する為なら、絶壁でさえ乗り越えてしまう程に、私、いつも楽しみなのよ」

「あ、ありがとうございます。わたくしも、会えて嬉しいですわ。最近、リア姉さまは幽閉されることが多かったですし」


カノンの言おうとおり、数週間前まで塔最上階に幽閉されていた。

まぁ、専属のメイドや召使が私の面倒を見てくれたので、至れり尽くせりな自堕落な生活をしていました。

それに、大半は魔法の改良という令嬢に相応しくない仕事がメインでしたので、退屈せずにすみました。

それもこれも、私が両親に血迷ったと勘違いされたのが理由です。


『私、魔界に行くことにしたの。だから、邪魔をしないでくれる?』


妹が魔女認定されるまで、ずっと狂ったように魔界に行くと周囲に言い続け。

ようやく、理解して貰えたかと部屋から出た途端、メイドたちにあっという間に最上階へと連行されたのです。それも、妹が私を呼んでいるという嘘までついてです。


ホント、ゲームのストーリーから大きく話がずれ込んでいく気がしますね。

ですが、原因である魔女認定を妹が受けたことで、魔界に逃亡する必要が無くなったこともあり、最近は意味不明な言動も控えていました。

それで、ようやく自由になれました。

――まあ、魔界に行くことを諦めていませんが……。


「そういえばフィアナ様はどうされているのでしょう。最近、幽閉されてしまって、会えないので……。せっかく、風魔法を教えようと思いましたのに」

「ふふっ、伝えておくわ。カノンが待ち焦がれていたってね」

「そ、そういえば、兄さまとお会いしました?」


唐突に別の話へと切り替える。

前に、フィアナの高位魔法を見てから、尊敬とは違う感情を持っているようだ。

たぶん、アイドルに憧れる少女のような感覚だろうか。

妹ながら、中々に誑しなのよね。あの子。


「そうね、殿下とは図書室でお会いしたわ。何でも、弟君に頼まれていたみたい。だから、私のオススメを教えてあげたの」

「そ、そうですか。やっぱり報われない運命にあるのかも……。でも、姉さまを本当の意味で姉さまにできるのはお兄様だけだし……」

「どうかしたの?」

「あ、あの一つ聞いてもよろしいですか?」

「ええ、いいわよ」


カノンから質問をされる機会は少ない。

だからこそ、真剣に考えなければ。


「兄さまのこと、どう思われます?」


兄さまというと、レイフォード様のことね。

何とも難しい質問だ。見た目だけなら整っている。だけど、将来、私のことを国外追放しようと裏で動くのだ。


だから、どちらかといえば、関わりたくない存在だ。

それを妹のカノンに正直に伝える訳にもいかない。

もしかしたら、正直に未来に起きることを伝えれば、協力してくれる可能性だってある。

でも、ブラコンだったら、せっかく変わりつつある運命が元に戻ることもある。

だからこそ、悩むわね。


「あ、あの。そんなに兄さまはダメ、ですか……。ですよね、兄さまって気が利かないし……。で、でも、良いところも沢山あるんです」

「そ、そうね。一途な所はあるかも……」


ゲームでは、妹とレイフォード様が付き合うことに腹を立てた私が、意地悪なことをしているという噂話が広まり、勘違いにより国外追放となった。

その理由は、妹のことを一途に想ったからだ。


「ほ、他には何かあります?」


妹として、兄の評判が気になる年頃なのかしら?

私としても、妹のように可愛いカノンを喜ばせたいけど。

これ以上、褒めるところがあるかしら?


イケメンだけど腹黒。

外面と内面の差が大きすぎて、何を考えても、結局は悪口になりそう。

何も知らなかったら、恋に落ちていたかもしれませんね。


「そ、そうね。妹想いで、素敵な兄妹だと思うわよ」

「そ、そうですか。ありがとうございます……。やっぱり、望み薄なのかな……。兄さまの気持ち、何一つ伝わっていないのかも……」


私の答えが満足いく回答ではなかったのか、先ほどよりカノンの表情は暗い。

それも、何かを呟いては図書室の方へと、何か恨み言のような言葉が聞こえる。

(私、失敗した?)


「カノン、大丈夫?」

「ええ……。少しばかり、呪詛の練習をしていた、だけです」

「それは大丈夫なのかしら……。まぁ、レイフォード様のことはお慕いしていますよ。妹ともども」

「はい」


何故か、フィアナの表情に愁いが見える。

まぁ、家族の評判を気にする年頃なのでしょう。そういうことにしておきましょう。



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