表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/42

35話 逃げたいってね

レミリア視点に戻ります。

33話の続きです。


『見えたデス。精霊と少女がいるデスよ』

「そう。そこに案内してくれる?」


私と違い、カノンは魔法に長けていない。たとえ光の精霊と一緒であっても、魔法式を知らなくては使えない。だからこそ、不安が募る。

だけど、精霊“ノー”は首をかしげ、こちらを見る。


『何を不安がるデス? 見えた精霊がいるから大丈夫デスよ』

「カノンは魔法が得意ではないの。精霊が近くにいても、行使するのは彼女。だから、何か起きてしまえば危険なの」

『? 危険なのは女神様デスよ?』


話がかみ合いません。ノーが話す内容が理解できない。

精霊は長寿の存在。故に話す内容が簡易化され過ぎていて、通じないことがある。


「それはどういうこと?」

『だって、あの精霊は魔術を使えるデス。だから大丈夫デス』

「確かに魔術を使えたけど……」

『ここは、魔法が分解されてしまうデスよ。だから、危険なのは女神様です』

「……ええ。ノーの言う通りね」


少しばかり気が動転していたのかもしれない。確かに、この地下迷宮には魔法を分解する仕組みが施されている。本気の魔法ですら傷一つ付くことなく、まるで第精霊ムーと戦った時のようだった。

だけど、カノンの魔術は効果があった。閃光で見ることはできなかったが、確かにあの扉を開いたはずだ。

……そういえば、どうして私とカノンは分断されたのでしょう。ノーから話を聞く限り、ずいぶんと遠くまで来てしまったようだ。まるで“転移”でもしたような。

これが事実なら、私にとっては見逃すことができない程に貴重な情報だ。


いつか魔界に行く際、迷宮を通らず自由に行き来するための方法。

それは戦争に繋がりかねない危険な道。だけど、私の推しに会うためなら、自重が聞かないかもしれない。

まぁ、公にしなければ……。


『女神様、黙ってどうしました?』

「ねえ、私がここに来た原因に心当たりはあるかしら?」

『? 女神様はいきなり目の前に現れたデス。何時もと同じデスよ?』

「そう」


気になる情報が立て続けに開示される。だけど、少しでも言い方を誤れば、私が女神ではないことが露見する可能性がある。だからこそ、慎重に聞かなければ……。


……台座の隠し通路から転げ落ちた記憶はある。だけど、それにしては、今いる場所につながる道は見えない。それに、いくら歩き続けたとはいえ、カノンから遠く離れた場所に来たとは考えづらい。

ノーは言った。突然現れたと。


そして、何時もと同じという発言。少しばかり、怖くなってくる。

一体、ノーは誰と姿を重ねているのか。

誰と間違えているのか、それが分からず恐ろしい。


「……親友のところまで案内してちょうだい」


――とりあえず、今はカノンと合流するべき、か。

考えることは山ほどあるけれど、ここに来た理由である精霊。その存在は消えかかっている。なら、急いで助けてあげないと。


『遠いデスよ? 今の女神様じゃあ、倒れるデス』


確かに、表面上は傷ついた身体は回復しているが、体力は限界に近い。

身体の節々が痛み、筋肉痛が悪化したような感覚に苛まれる。でも、歩くことくらいならできる。だから、告げようと前を向いた瞬間――激痛が襲う。


『だから言ったデス。女神さまの身体はボロボロなのデスよ』

「ええ。そんなこと……分かっているわ。でも、ここで行かなくちゃいけないの」


あの子は私をどう思っているのか。

秘密にしていた光の巫女を知られ、一人取り残されたカノン。きっと、今頃頭の中がぐちゃぐちゃになって、どうすればいいか分からないはずだ。

だって、私も同じだから。


いつか、私と敵対するかもしれない光の巫女。それが妹のように可愛がっているカノンだったなんて、正直信じたくない。

でも、それを見なかったことにしたら、私は一生後悔してしまう。


一人ぼっちの少女を救えないなんて、それはあまりにも悲しい。


「ねえ、ノー。私のお願い、聞いてくれる」

『……本当はここで休んでほしい。だけど、女神さまが望むなら、いいよ』


少しふくれっ面ではあるが、私の手を取ってくれる。

そして、ノーが眼を閉じる。

ノーの身体から魔素があふれているのか、光り輝く。


『いくよ』


気付くと、足元の氷床が土へと置き換わる。それに、先ほどまとは異なる空間に私たちはいた。これは、やっぱり“転移魔法”よね?

魔界に行く上で必要不可欠な魔法式。その可能性があり、私の心臓がバクバクと大きく振動する。それでも、今は。


「カノン!」


周辺を見回し、大声で叫ぶ。

だが、何の反応も返ってこない。


「ノー、ここで合っている?」

『うん。でも、もう移動したあとみたいデス』


ノーが指さす方向、そこにはぽっかりと大穴が開いていた。それに、地面に無数の穴と焦げ付いた匂いが届く。

これは、まさに。


「ねえ、ここにはノー以外、誰も居ないはずじゃないの?」

『そのはずデスよ』


だけど、目の前の光景は戦闘が行われたように見える。

焦げた地面、抉れた無数の穴。そして、大蛇でも出てきそうな、大穴。

まるで、カノンが誰かと戦ったような光景にしか見えない。

だけど、ノーは冷酷に告げる。

私が信じたくない事実を。


『……女神様、ここには誰も居ないデスよ。女神様と女神さまの親友、そして精霊たち。これ以外は誰もいないデス』


可能性なら思いついていた。

一つ目は、逸れた精霊が暴走し、抗戦するしかなかった。

だけど、消えかかった精霊の仕業とはとても思えない。


二つ目は、ノーが把握していないだけで、魔物が居て、抗戦したということ。

これが一番、信じたい。だけど、ノーが嘘をついたとも思えない。

それに、魔物の仕業にしては綺麗すぎる。



――だから、答えは最初から出ていたのだ。

これは、カノンの仕業(・・・・・・)によるものなのだと。


――逃げてしまうほどに私と会いたくはないみたい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ