34話 巫女の心ってね
私には敬愛するお方が二人いる。
一人目は、私と同じ血が流れるレイフォード兄さま。普段は凛々しく誰もが憧憬を抱く程に王族・貴族の中でもずば抜けて優れている。10代にして、国家の方針が決まる賢人会議にも出席し、数々の政策の助言をする様は天才を通りこしている。
欠点として魔法には嫌われていたが、最近では精霊王様のお力で使えるようになりました。まさに完全無欠のお兄様です。
二人目はそんな敬愛するお兄様の彼女候補でもある、ヴァーシュピア家の長女レミリア。
私の親友であるフィアナの姉であり、妹のように可愛がってくれます。
この国において、ヴァーシュピア家は王の剣として名を連ねる名家であり、現宰相はレミリアの祖父でもある。まさに王に次ぐ権力を持つ大貴族。
だけど、リア姉さまは少しばかり変わっていた。
兄さまやフィアナに聞いた話では、突然魔界に行くと言い出し、屋敷を抜け出す一歩手前までいったらしい。もし、フィアナが偶然、出会わなければ今頃行方不明の可能性がある。
まさに変わり者として名をはせている。
そして、それだけではない。
我が国において、聖女と魔女の信託を受けたフィアナより、知名度が高い。
それはひとえに、奇人変人な行動を凌駕するほどに、リア姉さまが強く美しいからだ。
フィアナの可愛らしさはそのままに、凛とした姿は兄さま含め、全貴族の注目を集めている。
兄さまが猛烈なアタックを掛けていなければ、熱烈なプロポーズが連日のごとく、行われるだろう。そうなれば、フィアナが魔法で追いやる程に不機嫌になってしまうかもしれない。
これまでフィアナが怒る姿を見たことはない。だけど、大好きなリア姉さまのためならば、悪魔にでもなってしまいそうね。
そんなリア姉さまと私の関係は壊れてしまったのかもしれない。
私が隠していた秘密。光の巫女としての私の姿。
兄さまにも隠していたもう一人の自分。それがばれてしまった。
なぜ、ばれたのか理由はわからない。光の精霊にお願いされて、はぐれ精霊を助けようと散策中、突然声を掛けられ、挙句の果てには協力してくれることになった。
いくら魔道具で姿や声を変えているとはいえ、話し方ひとつ違えば、不審に思われてしまう。
それに、リア姉さまの周囲には精霊、微精霊が大量についてくる。魔道具の存在に気付かれてしまえば、どうしようもなかった。
だけど、運命が私を見捨てていなかったのか、ばれなかった。
それで油断していたのかもしれない。地下空間に降り立った後、天才頭脳のリア姉さまはいとも簡単に推理をしてしまった。
それも、私が力を貸さなければ、精霊が眠りについてしまうという話とともに。
光精霊のお願い、それにリア姉さまの問答。それを満足するためには、正体を明かすしかなかった。
だから、魔術を使った。
けれど、魔術を使った後、私とリア姉さまは逸れてしまった。
広間のような場所を目にした私が後ろを振り向くと、リア姉さまの姿はどこにもなかった。
もしかして、幻でも見たのかもしれない。そう都合のよい風に考えたが、光の精霊はそれを否定した。
あれは、正真正銘、リア姉さまだったと。
だからこそ、私はどうすればいいのかわからない。
正体を明かした。そして、そのことを兄さまや両親に伝えてしまえば、私がどういう扱いをされてしまうのか、怖く感じる。
光の巫女。
それは、国にとって重要な存在。かつて、顕現した光の巫女は国の一大事をその命と引き換えに救済したと伝承されている。
そんな彼女に私は憧憬を抱いていた。
だけど、光の精霊と出会い、巫女だと告げられてしまった。
幸い、光の精霊様の存在をお父様は知らないのか、これまでばれてこなかった。
このまま、生涯隠し通そうと思っていたのに……。
私は……どうすればいいのか未だに分からない。




