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22話 新たな影ってね


実技試験を満点で合格し、次は筆記試験だ。

国の最高峰試験の割には簡単で拍子抜けだ。あの後、一番点数の高い子ですら12点止まり。

レイフォード様は11点と三位だと自慢げに言われた。

まあ、この前まで魔法の才能が無いと周囲から半ば思われていたにしては、上出来だろう。

それ程までに、精霊王の存在が大きい証明であるが。


魔法の才能でいえば、再開レベルの殿下をここまで引き上げるのであれば、私やフィアナが契約すれば、どんな恐ろしいことになるのでしょうね。

下手すれば、国一つ簡単に滅んでしまうかも……。


まあ、今は目の前の問題を解くことに集中しなければ。

国の情勢に関する問題が多く、有力貴族として今後の国の運営を担う存在を育成したいのだとひしひしと伝わってくる。

それでも、フィナアに教えてもらった内容が多く、高得点は間違いなしだろう。

ひとえに、フィアナが優秀過ぎるのね。


だけど、最後の数問だけ、魔法に関する問題があった。

国の情勢には関係なさそうだけど、間違えたのかしら?

まあ、簡単すぎるから、答えを書いて終わりね。


魔法効率を上げる方法なんて、簡単な問題。誰もが正解してしまうだろう。

初心者向けの魔法である、フィアヤですら、魔法式を組み替えて、詠唱しなおせば、高威力に置き換えられる。

どんな魔法でさえ、効率をよくするには詠唱と魔法紋章を書き換えればいい。

それだけだ。


ああ、疲れました。

早く、フィアナの作るお菓子を食べたいなあ……






試験が終わり、今日はこれで解散のようだ。

後日、試験結果が発表されるとのこと。これは、現実世界と同じ仕組みのようだ。

てっきり、あの開発陣のことだから、即時発表みたいなことになると思っていた分、拍子抜けだ。


「それにしても、広いわね」


一人、学院を探索する。

今日は試験会場となる事もあり、生徒は見当たらない。

時折、教諭のような年配の方が歩いているのが見えるだけだ。


「ほんと、平和ね」


ここ最近、気が休まらない分、静かな道を歩くことで気分転換になる。

そんな中、とある少女の姿が目に入る。

金色で緑色の少女は、地面を強く見つめながら、歩いている。


「変な子ね。何かあるのかしら……」



少女の後を付け、様子をうかがう。

地味な格好から察するに、有力貴族とは思えない。だけど、一般入試は明日のはず。


「ねえ、そこの貴方……!」


声をかけるも、聞こえていないのか振り返ることは無い。

それ程までに集中しているのだろう。その証拠に、地面を強く睨みつけている。

まあ、可愛らしい姿な分、嫌悪感は抱かないけれど。


「貴方、大丈夫?」

「え、は、はひ。大丈夫れす」


いきなり話しかけたせいか、思い切り立ち上がると挙動不審な対応だ。

だけど、この子からは悪意は感じ取れない。あるのは、絶望かしら?


「そう? 何か大事な物を落としてしまったように見えたのだけど」

「そ、それは……いや、初対面の方にご迷惑をお掛けするには」

「ん……。それで……?」

「はひい」


少しばかり魔法で身体に魔素を纏う。

それだけで、少女は恐怖心を持ったようだ。

ということは、魔法使いの素質を持っているようですね。

やっぱり、私と同じように試験を受けに来たのかしら?


「困っている貴方を見つけたから話しかけただけよ。そんなに怖がらなくても……」

「す、すみません……!」


大きな声をあげ腰を直角に折り曲げ、最上級の謝罪をする少女。

周りから見れば、私が恐喝しているように受け取られるかも。

ただでさえ、少しばかり本気を出したことで、暴力令嬢みたいに思われている節があるし。


「それで、いったいどうしたの?」



少女の話をまとめると、不思議な声に導かれて、ここまで来たようだ。

長い距離、時間にして数時間ばかり。ずっと謎の声が響き、無視しようとすれば、足元が揺れてポルターガイストみたいな減少に陥ったようだ。


十中八九、精霊の仕業でしょうね。

流石に、この世界には幽霊はいないはずでし。

私の魔素を見ることができる少女であれば、精霊を認識できる程、魔法使いの素質があってもおかしくありません。


「そうなのね、それでその声は何と言っていたの?」

「それが、怖い、暗い、助けてって、同じような言葉を何度も言っているような気がして。無視しようとすると、その声がより一層強くなったんです。誰に言っても信じてもらえませんでしたけど」

「そう。それは、たぶん精霊の仕業ね」

「精霊? あの魔法使いと一緒に戦う精霊ですか?」

「それ以外に、何の精霊が居るのよ。……精霊なら、遠くに声のようなものを届けることもできるし。それが自然でしょうね」

「そうなのですね……でも、なんでわたしなんかに……」


明らかに私では不釣り合いだという感情が乗る。表情も困惑が大きそうだ。

普通、精霊に話しかけられたら嬉しく思うのが普通なのに、変な子ね。


「それで、声を聞いて来たけど。ここで、いきなり声が途絶えてしまったの」

「そう。ただの悪戯の可能性もある。精霊って、その場の勢いで行動することが多いし」

「で、でも。声がとても辛く寂しく思えました。あの声が悪戯だとは、とても思えません」

「そう。だから、必死に地面を見ていたのね」

「ッ……。み、見ていたのですね。は、恥ずかしいです」


不思議な行動を指摘され、少女の頬が赤く染まる。

それにしても、可愛い子だ。

似たような子を見た気がするのよね。


「なら、私も協力してあげるわ。私、暇だし」

「そ、そんな悪いですよ!」

「別にいいわ。一応、私は魔法を使うのですし。ここで見捨てることはできませんわ」

「あ、ありがとうございます」


やっぱり一人で探すのは不安だったのだろう。

朗らかにほほ笑む。


「私は、レミリアよ。よろしくね」

「わたしは、シルフィアです。よろしくお願いします、レミリア様」

「ええ。よろしくね」


礼儀正しい少女はシルフィアを名乗る。

その名は聞き覚えがあった。

なんせ、その名は。


――光の巫女となるメインキャラの一人

ゲーム内で、女神と称されることになる光属性最強美少女。

将来、魔界を亡ぼす立役者の一人。


つまり私にとって、要注意人物の一人だ。


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