22話 試験当日ってね
フィアナに勉強を教えてもらい数日が過ぎ、試験当日となった。
国の歴史という、私の目的からは程遠いどうでもいい情報も、今ではだいぶ覚えることができた。一夜漬けならぬ、三夜漬け。
少しでも疲労がたまれば、回復魔法を流し込まれ、脳の限界を超えた勉強の成果もあり、今では、数百年前の出来事すら覚えてしまった。
「姉さま、頑張ってくださいね」
同じく自分自身に魔法を掛けることで、なんとか意識を保ったフィアナは最後にそう送り出してくれた。
来年には、私も合格しますねという嬉しい言葉と共に。
「ここまでして貰って、落ちる訳にはいかないわね。気を引き締めないと」
試験会場は、王立魔法学院の大講義室で行われる。
私と同じように豪華絢爛な洋服を身にまとう貴族令嬢たち。彼女らは、同じくビシッと決めた男の子たちに目が点々としている。
その中には、唯一の知り合いであるレイフォード様の姿もある。
いつもとは違った雰囲気を醸し出し、王族故に誰一人近づけないようだ。
「お、レミリア。久しぶりだな」
「ええ。お久しぶりです殿下。その節はご迷惑をお掛け致しました」
「なに。あれは、アイツが暴走した結果だからな。レミリアが気に病むことでないさ」
大精霊との戦いで、私は全魔力を使い、顔面を殴り吹き飛ばした。
その際、だいぶ施設を損傷させてしまったことを詫びるも、レイフォードは問題ないと言ってくれた。
良かった。後から考えれば、王族保有の設備にダメージを与えてしまったことを、ぐちぐち言われるかと恐れていたのだ。
「あれが、魔女の姉か」
「最強の魔法使いか」
「レイフォード様と親し気に話すなんて許せないわ」
「……殺し屋を退けた女傑か」
私がレイフォード様と話すのを見た子らが小声で言う内容が聞こえる。
別に、こんな独り言まで拾う必要は無いのだが、精霊たちは分からないようだ。
それにしても、最強の名はここまで浸透していたようだ。
そこまで、成果を出せていないと思うが。
やっぱり、フィアナの姉であることが大きいだろう。
「そういえば、レイフォード様は試験の自信はどうですか?」
「うん。そうだな。君ほどではないが、十分なレベルだと思うよ」
「そうですか。私は、筆記試験が不安ですが……さすがは殿下ですね」
「これでも、英才教育を幼き頃から受けてきたからね。当然のことさ」
レイフォード様と雑談を楽しむ。
大精霊や殺し屋の話は表沙汰にはできない為、何を話せばいいか分からなくなってしまう。
「そろそろだな」
気づくと、周りの令嬢たちは減っている。
どうやら、試験の時間のようだ。
◇
試験は実技と筆記があり、先に実技から行われる。
天が開いた闘技場のような場所に集まった私たち。一人ずつ、得意魔法を使い、その出来栄えに対して、点数を付けるようだ。
今の所、一位はポニーテールの令嬢であり、20点中10点となっている
私が思うより、点数評価は厳しめのようだ。
「次、レミリアさん」
試験官は有力貴族の嫡男であるアルベルさんだ。
見た所、魔力循環は活性化している為、魔法が暴走した時に真っ先に止める役割のようだ。
もしかしたら、教諭のような役割もあるかもしれない。
息を整える。
使う魔法は、炎最上級魔法の一つである“フレア”。
他にも魔法はあるが、攻撃力を示すのであれば、これで十分だろう。
「レミリア。期待しているぞ」
と、足を踏み出した私に声をかけるレイフォード様。
その情景は既視感があった。
確か、これは。
「当然、本気を見せてくれるのだろ?」
ゲーム序盤のイベントだ。
主人公のフィアナ操作時に見せる一枚絵。だけど、それはレイフォード様が二年となった頃の話だったはず。
ここでも、記憶と異なる。
でも、この激励は後々ゲーム内のストーリーを左右するのだ。
ここで、本気を出すか出さないか、その選択肢により変化する。
最悪の場合、退学になる可能性すらあるバッドエンドに繋がってしまう。
「ええ。勿論です」
だからこそ、本気を出さないと。
イメージするのは、空から落ちし火の玉。
——、“流星”
大量の魔素を糧に、空へ熱量が延びる。
太陽に照らされた青空に、輝く一筋の光。
高密度の魔素の塊が落下し、夥しい熱量を纏い落ちてくる。
「“流れる星の欠片。灼熱のごとく燃え上がれ”」
短文詠唱により発動される。
それは、目の前に落ち、大爆炎を巻き起こす。
「……」
それを見るレイフォード様たち。
だが、アルベルさんだけは、即時行動する。
私の前に飛び出ると、土魔法を発動したのか、地面がせり上がり、瞬く間に障壁が現れる。
直後、衝撃音と爆風が轟音と共に来る。
「……レミリアさん、何か言うことはあるかな?」
眉間にしわを寄せ、私を見つめるアルベル。
表情を見る限り、困惑の方が大きそうだ。
「すみません。少しばかり、本気を出し過ぎてしまいましたわ。以後、気を付けます」
最悪、同じような魔法で相殺することを考えていたが、それを知らなかったアルベルさんに迷惑をかけてしまったようだ。
次からは気を付けないと。
何故か、遠くでレイフォード様がため息をつく音が聞こえたけど。
何がダメだったのだろうか。




