21話 入学試験ってね
王立魔法学院。
各国の王族、貴族が通う学院。ゲーム内では、対象キャラとデートして、親密度を上げる為の場所として描かれていた。
そして、ゲーム内のほとんどの出来事はこの学院で起こるのだ。
今の所、レイフォード様しか出会えていないが、その他にも多数、キャラが居た。
まあ、私の目的は魔界の王子様に会うことだから、そんなに必死に攻略はせず、ひたすら地道にコツコツ進めただけだが。
それでも、魔界に向かう何か伏線があると信じて、全てのルートを攻略済みだ。
そんな私からすれば、どのキャラがどのような事情を抱えているのか、全てわかり、どのようなことをすれば好感度が上昇するかも分かる。
「完璧ね。やっぱり、どの世界でも持つべきものは情報ね! それに——」
「姉さま、そんなに意気込んでどうされました?」
「ええ、少しばかり気合が入ってしまったの。だって、魔法学院よ? この世の全ての魔法書を保管した魔導図書館がある場所よ? 誰だってテンションが上がるってものよ」
攻略キャラクターには興味は無いが、魔法書は興味津々だ。
ゲーム内では、一部の魔法書、魔導書を読むことが出来たが、内容を理解するのではなく、数時間の経過とともに、魔法式をゲットする方式だった。
だから、どのように魔法式が構築されて、結論が導きだすか。調べようがなかった疑問が晴れる。あの開発陣のことだから、面白がって、本気で書いている可能性もある。
現に、初心者向け魔法書ってタイトルで、一般本として発売した経緯があるし。
その内容は、この世に存在しない言語で書かれており、その解読本も用意はされていなかった。
噂では、外国の有名大学生が解読を行い、数ページは読めたらしいが。
「魔法書ですか? いつも読んでいるものでは無いのですか?」
「そうね。確かに、王宮にも魔法書は大量にあるわ。だけど、学院には魔導書があるのよ。魔導書なんて、どこにもおいていない貴重品があるのよ!」
「は、はい」
「魔導書って、フィアナも知っているわね。原初のルーンを用いた魔法。現魔法の基礎となった魔法、魔術とも言われるものよ⁉ それが読めるなら、現存する魔法を改良する足掛かりになるに決まっているわ!」
ゲーム内では、魔法を開発することはできた。
だけど、魔術は高難易度とされ、明らかにはならなかった。
唯一、戦争編で、王族が使う魔術だけだ。
それすら、一瞬で大陸を燃やし尽くしたという、荒唐無稽な説明文が少し流れるだけだった。
誰もが、魔術は知らない。それを知るチャンスなのだ。
あのゲームをやり込んだ人なら、誰もが喉から手が出る程に欲しい情報だ。
「あの姉さま、試験対策は大丈夫なのですか?」
「ん?」
「いくら姉さまでも、試験を受けるのでは? あのレイフォード様も試験は受ける必要がありますし」
「試験? 誰が? 私が?」
浮かれていた気持ちが縮まる。
試験、何それ?
レイフォード様は君なら受かると、しか言って……受かる?
あれれ?
「姉さま、王立魔法学院に入学する為には、試験を受ける必要があります。申請は私がしておきましたが、来週試験がありますよ」
「そう、申し込みをしていなかったってオチは避けられたのね。流石、フィアナね」
「ありがとうございます。それで、試験ですが……」
「魔法なら問題は無いわ。私が落とされるのなら、フィアナしか入れなくなってしまうわ」
「そんなことはありません……」
魔法を使う試験であれば、ここまでフィアナが狼狽えるはずがない。
何か、別の理由がありそうね。
「それで、試験の内容はどんな感じか分かる……?」
「魔法試験と筆記試験ですよ。姉さまなら魔法試験は問題ないと思います。でも、筆記試験がですね、国の情勢に関する問題も出るんです」
「国の情勢ね……」
ああ、そういうことか。
この国の知識、それは正直言って、ゼロに等しい。
ゲームでは、恋愛か魔法研究に没頭した私にとって、地名くらいなら分かるが、歴史などは分からない。
ゲーム内で、歴史年表が用意されており、数百年の出来事がスラスラと書き連ねてあった。
勿論、全て目を通した。だけど、その情報が記憶にはない。
……魔法には関係ないものは全て覚えていない。
その状態で、試験を受ける。
魔法と筆記が半々であれば、50%は間違いない。
「ねえ、合格点ってどれくらい?」
「ええと、去年の場合は7割以上、です」
「そう、そうなのね。」
……。……。…
「フィアナ、楽しいお勉強の時間ね。大丈夫、フィアナの回復魔法を使えば、数日くらい寝なくても何とかなるわ」
さあ、勉強の時間だ。
フィアナは覚悟していたのか、強く頷いてくれた。
後は、私の覚悟次第ね。




