14話
「“フレア”」
無数の魔法に斬撃が死精霊騎士へ損傷を与える。
だが、黒鎧が瞬時に損傷を修復し、その敏捷な身のこなしは、アンリの視界から突如消え失せる。
「ハアアアアアアア!」
頭上からの全霊を込めた一撃。
だが、それを遮る影。
「グォオオオオオオオオオオッ」
バルディアの魔剣アスカロンが死精霊騎士を吹き飛ばす。
そして、一振りで無数の傷跡が刻まれていく。
「これが魔剣……いや、違うな。彼の技量か」
思わずレイフォード様が零す。
それ程に技量を感じさせる剣跡だ。大剣にも関わらず、繊細な動きは死精霊騎士の俊敏な動きを逃さず、正面から叩き潰す。
怪我を顧みず、正面から挑む姿は英雄譚の一頁のようであり、自然と兵士の士気を上げていく。先ほどまで困惑していた兵士らも加わり、陣形を組み、敵を取り囲む。
「流石の耐久力なのですね。レミリア様、あの敵……死精霊騎士でしたか。どの程度、魔力を持つのでしょう?」
「そうね。ただの精霊なら今頃力尽き果てるでしょうね。だけど、あれは大精霊。それも、とある国を守護した精霊王よ。ちょっとやそっとじゃ、倒れないわ。だから、いつまで経っても戦いは終わらないの」
かつて、旧帝国と戦い。
王族を皆殺しにした経緯を顧みるに、少しでも攻撃を緩めれば、くびを斬られる。
今、拮抗しているのは、バルディアの大剣アスカロンの相性が良いからだろう。
「そんな……!」
アンリの表情が青ざめる。
少しずつ押している気がしていたのだろう。
だが——私の眼に映る死精霊騎士の体内には高密度の魔素を感じる。
アレが全て解放されれば、この場にいる全ての生物は吹き飛ぶだろう。
「だけど、攻略法はある。だから、その為に力を貸してほしい」
「攻略法ですか? それは先ほど、レイフォード様にお話しされていた契約でしょうか?」
「ええ。あの精霊と契約できるのは、この場ではレイフォード様だけよ」
「どうして、分かるのですか?」
「それは私がゲー……図書室の歴史書に書いてあったのよ。旧帝国の祠に眠る大精霊の逸話。灰色の精霊が居るってことを」
思わず、ゲーム内で知ったと暴露するところでした。
まあ、ゲームで知った知識と話しても、この世界にはテレビゲームが無いから、カードゲームとか盤上ゲームとかの方でしかイメージが付かないけど。
それでも怪訝に思われるのは間違いないでしょう。
もし魔女の称号があれば、死精霊騎士の仲間と勘違いされ、国家反逆罪として追放される可能性すらあります。現に、似たような追放イベントがありましたし……。
「そうなのですね」
すんなりと納得してくれた。
さっきから、私の発言力強すぎでは?
王子ですら疑わないとは……嘘ではないけど。これで間違えていたら極刑ものね。
「契約するには、一時的に動きを止める必要があるの」
「動きを止める。それは、魔鎖を繋ぐという考えでしょうか?」
「ええ。魔鎖をアイツの首根っこに繋いで、重力魔法で地面に押し付けてやるわ」
魔鎖。
それは、魔力で出来た契約の鎖だ。本来、契約を結ぶときに、縁を切らないよう呪い的な役割として使う。
一度、繋いだ鎖は相手の魔力を通し、しばらく外れない。
無理に外そうとすれば、大量の魔力を持っていかれる。
——この魔法は、ゲーム内の魔法創作コンテストでプレイヤーから応募されたものを開発陣がノリノリで改悪したものだ。
デメリットとして、術者は一時的に体内の魔力を全て持っていかれる。
勿論、自然治癒で回復はするが、数週間は魔法を使えず、魔力回路がギシギシ悲鳴を上げ、最悪、魔力枯渇による激痛が来るだろう。
だから誰もが使いたがらない。
だからこそ、勝機がある。
——なんせ、亡霊である死精霊は魔鎖を知らない
「——私がアイツを繋ぐ。だから、その為の時間稼ぎをお願い」
「はい!」
アンリが参戦し、情勢が良くなる。
バルディアとは違い、アンリは魔力が尽きれば終わり。
だから、限られた時間で勝負を決めなくては——
「契約者。汝に記す。これは全ての権能。過去を閉じ、今に刻みもの————」
契約を結ぶべく、詠唱を唱える。
本日二度目の魔法は、ゲーム内では最悪と罵られた呪い。
「——汝は我の僕となる。ここに盟約を結び、証を刻む。“コネクト”」
私の魔素を全て昇華し。
目に映るほどに純粋な魔素が鎖となり、宙を走る。
「繋ぐ、繋ぐ!繋ぐ!!」
魔鎖をイメージし、怪物へと向ける。
俊敏に逃げるが、アンリとバルディアが動きを狭める。
それに、兵士も逃げないよう包囲網を作る。
「——これ……ね」
感覚が変わる。
暗く深淵に至りそうな程に深い闇。
その最奥。
「“コネクト”」
私の魔鎖が掴んだ。
大精霊の存在を。




