11話 迷宮挑戦ってね
11話 迷宮挑戦ってね
令嬢の私が、迷宮に訪れているのにも関わらず、誰一人意義を唱えることがありませんでした。普通、か弱い令嬢が迷宮に居れば、怪訝に思うはずですが。
まあ、アンリが居ますし、同じように思われているのかしら
「あれが破壊女王か。噂にたがえぬ、美しさだな。だけど、後ろの人威圧感ヤバすぎるだろ」
「あれが、王子様か。少しでも、近づけば不敬罪で葬られても可笑しくないくらい、座った眼をしているな」
「あんなの、誰も批判できるわけねえ」
と、冒険者は遠目から二人を見ては、小さく息を吐く。
流石に、他国の王族といえど、あの目を見ては文句など言える訳もなく。
少しばかり、変な空気ではあるが、おおきな問題が起きることなく、順調に迷宮攻略が進んでいる。
「ねえ、アンリ。この先に迷宮のコアがあるの? でも、それを取れば、迷宮が崩壊するのよね」
「はい。正確には、ダンジョンが蓄えたエネルギーですので、取っても問題はないですよ」
「そうなのね。それをどう有効活用しているのかしら?」
「街灯などの光源に使われますね。その他には、ええと」
「アンリ様。そのくらいで、この先です」
と、後ろから野太い声を掛けられる。
貴族とは異なり、全身が筋肉隆々であり、その辺の魔物を一振りで倒す騎士。
バルディアがいつの間にかに前線から戻っていた。
「バルディア、今回の規模はどのくらいでしたか?」
「少しばかり小さな。だが、炎の魔力が僅かに含まれていた。あれが成長すれば、新たなコアとなる可能性もあるだろう。それと、トオルが言うには、構築に役立つから欲しいとのことだ」
「そうなのね。でも、今回の報酬は山分けだから、無理かも。トオルには、私から話しておくわ」
「そうか。その方が無難だろう」
二人が話す内容は、難しく、意味が分からない。
構築が何を指すのか、コアの本当の目的すら、隠しているようだ。
まあ、他国の貴族なのだから、そう簡単に自国の情報を明かさないのは当然ですが。
「アンリ、迷宮ってもっと広いものだと思っていたのだけど、それ程ではないのね」
「そうですね。迷宮って、冒険者の魔力を吸い取って、大きくなっていきます。この迷宮はまだ子供のようなもの。だから、階層も少ないのでしょう」
「ほう、流石は迷宮攻略者。その情報は、我が国にとって、大きなものだ。できれば、もう少し教えて欲しいものだ」
レイフォード様が話に加わる。
先ほどまで、私たちの話を興味深く聞いていたが、どうやら直接聞き出す方針にしたようだ。
ゲーム内では、交渉術はあまり書かれていない為、どこまで情報を聞き出せるか興味深い。
「あまり詳しくは無いですよ。迷宮攻略者といっても、私たちはとある方の冒険に同行していただけですから……。最後の部屋を通ったのも、その方ですわ」
「ほう、それは貴方の師匠かな?」
「違いますわ。彼は友達です」
「殿下、そのくらいで……。ここは迷宮だ。少しの気の緩みで、命を落とす」
必死に情報を隠そうとするも、とある方が男性だと割れた。
この調子で話せば、分が悪いと感じたのか、バルディアが間に入る。
どうやら、ここまでのようだ。
「ああ、悪いな。私の悪い癖が出てしまったようだ……。レミリア、準備はいいか?」
「ええ、勿論。既に魔力構築は終わっていますわ」
「そうか、ならば頼む」
「はい。……。」
遠くに見える大扉。
それが迷宮のコアへと繋がる、最後の関門。
それを見据え——体内の魔力循環を高め、一気に解き放つ。
それは、ゲーム内では高威力魔法の一つであり、高魔術師しか扱えない。
「あれが、最強の器か……」
「そうね、勇者と並ぶ程の素質が見える。それこそ、私よりも上かもしれない」
「かつて斧が発動したアレに似ているな。だが、あの時とは違い、自我を保っている」
「そうね、私たちの国とは違って、自然な魔力に見えるわ」
アンリとバルディア。
二人は話す先、そこではレミリアが魔法陣を宙に描き、複雑な紋様が刻まれていく。
「——空から地に落ちし、亡霊。世界の果て、広がる足跡。余は世界の中心にて待つ。これはかつての咆哮。全てを無に帰し、新たな空を導くもの」
長い詠唱を唱えていく。
普段、簡略詠唱でしか魔法を使わない私にとっても慣れない。
噛まないよう、丁寧に唱えていく。
「全ては世界の終わり——“アンノーン”」




