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異世界を神視点にて  作者: 雨蟲 乙(うちゅう きのと)
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片翼の魔王

 少女がいた。人間の街の一般的な家庭に生まれた少女。しかし誰も彼女を愛さなかった。誰よりも少女を愛していただろう両親はとうの昔に悪魔を育てた者として処刑された。


 少女の容姿は他とは違った。人にはないはずの特徴、白い翼に白い2本角。

 人は自分達とは違うものを恐れ排除しようとする。その結果が少女を一人にしてしまった。

 悪魔と呼ばれ、それでも少女だけが処刑されなかったのは教会が彼女を保護したからであった。

 全ての魔物を滅するという教義を掲げておきながら、悪魔とされる少女を保護することに疑問を持つ者も多くいた。当然ながら教会内でも争いを産んだ。


 そんな時いつも少女を庇ったのは教会の最高権力者、教皇だった。

「私だけはお前を見放しはしない」

 その優しい笑顔があったから、少女は生きることを耐えることができたのだ。


 あぁ、だから……だからこそ絶望した。

 少女は殺されかけた。他でもない教皇に。首を絞められ意識が遠退く中聞こえたのは、教皇の狂った笑い声と騙されていたという真実だった。


 少女は翼と角に尋常ならざる魔力を秘めていた。それを見抜いた教皇が、いつか神を降ろすための器にしようと手元に置いておこうと考えたのだと。


 全て偽りだった。唯一信じていたものが崩れ落ちた瞬間だった。絶望に染まっていた思考は一瞬で憤怒に変わり、それに反応した魔力が溢れ周囲を破壊した。


 教会と呼ぶのに相応しかった場所は跡形もなく消え去ったが、教皇以外の人間は誰一人として死ぬことは無かった。

 破壊が起こった中央には片翼と片角を失った少女が佇んでいた。白かった翼も角も、今や黒く変色し、しかし魔力の量は2倍程に増えていた。


 この場所を去った少女は大陸の果てに城を建てる。道中で力を魅せる事で仲間となった亜人や魔物達を配下に王となった。


 各国は少女の脅威を認め、少女を「魔王」と呼称。「魔王討伐軍」を結成する。

 対して少女は亜人や魔物達を守るために、自身を将とする「守護の軍隊」を編成。魔王討伐軍に対抗した。


 だが次第に守護の軍隊は崩れ始める。一部の力が突出した者達が人間に侵略を開始したのだ。少女の命令には従わなくなったが、自分達を「魔王軍」と自称。各地に災厄を振り撒き始める。


 少女はそれを止めようとしたが、魔王軍は守護の軍隊の戦力を遥かに凌ぎ、既に止めることはできなくなっていた。

「私にもっと力があれば」


 魔王軍には新たな魔王を自称する者が現れ、各地の強力な力を持った人間を殺して回った。そんな事を知らない人間達の矛先はもちろん少女に向かい、守護の軍隊は瞬く間に数を減らしていった。


 しかし暴れまわっていた魔王軍も一人の人間の青年によって終わりを迎える。青年は勇者と呼ばれ、1年の間災厄を振り撒いた魔王軍は僅か1ヶ月で終わりを迎える。


 そして遂に少女は青年と邂逅を果たす。全ての魔を極めた少女と全ての武を極めた青年。戦いは熾烈、二人は一言も会話をする事なく戦い続ける。

 少女は青年の怒りを知っていた。少女は誤解だと、それをやったのは私ではないと叫ぶ権利があった。

 それでも心優しき少女はこれは受け止めるべきものだと戦う道を選んだ。これで青年の怒りが少しでも和らげば……と。


 そして少女は負けた。わざとでもなんでもなく、魔力が尽きたのだ。だが青年は止めを指さなかった。

 青年は泣いていた。そして口を開く。

「君はどうして……」




名:アリス・ホワイト

魔王と呼ばれた少女。罪を被せられた者。

迫害と裏切り。深い絶望を味わった彼女の本質は白から黒へと変わった。

しかし生涯の内に自らが望んで殺したのは教皇のみ。それ以外は自らの身を守るためでしかなかった。

彼女は勇者と出会い何を思ったのだろうか。

作者はハッピーエンドが好きなんだ。

短編集だけど、魔王と勇者の話はまだ書くつもりだからご期待を!

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