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魔術師の功罪  作者: 尚文産商堂


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52/151

第52話

「今回、裁判所の令状もございます。ただ、話を聞くだけ、ということですので、できればこの強制力に縋りたくはありません」

 そう言いつつも、見えやすいように令状が入った封筒をポンと膝の上に乗せる。少なくとも、それを脅迫のように感じつつも、前田医師は最低限のことは話すが個人情報屋法に触れるようなことについてはできるだけ答えたくない、ということで、質問に答えることを了承した。

「本来ならば本人に聞きたいのではありますが……」

 まずは放出が前田医師に本人のことについて尋ねる。

「彼はなかなか人前に出ることを嫌がっております。さまざまなことを経験なさっておられますし、治療の妨げになるようなことについてはできるだけしたくないというのが本音です」

「確か、あるコール依存症になっておられたと聞きましたが」

「そうです。本院に入院して、加療を行っているのも、主にその方面です。最近は魔術薬もさまざまなものが出ており、それによって治療も幾分か楽になりました。しかし、精神をいやしても、根本的原因を取り除くことは、非常に困難が伴います。必要以上の苦痛を与えることは絶対に避けなければなりません」

 断固たる思いがその言葉の裏にはあるようだ。そのうえで、必要な話をしようとしている。

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