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魔術師の功罪  作者: 尚文産商堂


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第45話

 翌日午前中、アポイントメントをとって、手野大学へと4人は訪れていた。

「久しぶりだなぁ」

 感慨にふけっているのは緒方と平塚だ。二人は、ここの卒業生なのだから懐かしがるのは当たり前なのかもしれない。一方で、根来と放出は、卒業生ではないため、周りを珍しそうにキョロキョロと見まわしている。一行は校門そばにある警備員詰め所で中に入るための書類にサインをして、それから教務員室に向かった。


 アポを取っていたおかげで、聞きたい人は、すでに待ってくれていた。

「お待たせいたしました、どうぞこちらへ」

 応接室のような、向かい合いにソファが置かれた部屋に通され、少し待っていると男性が二人ほどやってきた。

「今回は、ありがとうございます」

 礼を言いつつ、名刺交換となる。やってきていたのは、一人は北山鈴の指導教官、もう一人は手野大学文化学部長だ。どうやら北山をよく知る人物ということと、成績関連などの学校生活の話ということで、話が通っているらしい。それぞれが座ってから、緒方が話を切り出す。

「いえ、うちの卒業生のお話でしたので。確か、北山鈴、でしたね。10年以上前に卒業した」

「そうです。彼女について、何かご存知でしたら教えていただきたく、今回参りました」

「彼女については、成績も中の上、平々凡々としていて良くも悪くも目立たない性格でした」

 詳しいのは個人情報ですので、開示はできませんが、と言いつつも、文化学部長がそのあたりを、当たり障りのない言葉で教えてくれた。

「……そのあたりの事情はよく分かっています。ので、話せる範囲でいいので、なにか覚えていることはありますか。本人だけでなく、ご家族の関係であっても構わないので」

「家族ですか……ああ、そういえば、一度、自分はガン家系だから、いつの日か癌になるかも、って言ってましたね。ただ、それを治すための薬も作りたいとも」

「薬ですか」

 緒方が継続して、それを教えてくれる指導教官へと質問をする。

「ええ、詳しいのは分かりませんが、薬学部との共同開発をしたいとのことで、結局、医学部、薬学部、文化学部の共同研究として卒業研究をしました。大学院に進まないのかと話をしたんですが、やりたいことがあるから、と言われて断られまして。それ以降は、同窓会でも見かけませんね」

「卒業研究とは、どんな内容だったんですか」

「卒論のテーマは『将来における癌の発生を予防するための魔術薬の開発について』ですね。ラットを用いた研究などで結局3回生と4回生の研究時間はあっという間に終わっていった印象があります」

「それって、御札を使った薬になりますか。それとも、科学薬ですか」

「御札ですね。専用の魔法陣も、このときに考えていて、そのまま製薬会社に入社するつもりでした」

「でした、ということは、しなかったんですか」

「ええ、できなかった、と言うべきかもしれません。その会社に最終面接で落とされました。それから彼女は意気消沈していて。でも、一つの会社が雇うという連絡をくださったんです」

「その会社、教えていただいてもよろしいでしょうか」

「あー、教えたいのはやまやまなんですが……」

 何か言いにくそうな感じだ。となれば、その会社はもうないということなのだろう。それを指摘すると、無言でうなづいた。

「いわゆるベンチャー企業でした。薬学で世界に冠たる会社になるという触れ込みだったんですが、その実、会社の経営は火の車。数年も経たない間に、債務超過、不良債権がどんどんと積みあがっていき、結局5年くらいで倒産して、今や清算も完了してます」

「一応、名前だけ教えていただけませんか。こちらのほうでも調べてみたいので」

「いいですよ。これが当時の社長を名乗る男から渡された名刺のコピーです」

 それを受け取りながらも、放出が驚いた声で指導教官に言った。

「よく残していましたね。こういうのは終わったらさっさと捨てるものとばかり」

「今後とも、と言われたのと、面倒を見ていた子らがどうなったのかは気になりますからね。各年度ごとにファイリングしていて、それぞれどこの会社に行ったかを把握しているんです。こういう形で活躍することは想定外ですが」

 警察や警吏の厄介になることは、指導教官や大学側としても不本意なのだろう。何はともあれ、緒方らはそのコピーを受け取り、さっそく調べることとした。

 そのため、礼を言い、大学をさっさと離れた。

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