第33話
ロケット弾を返却し終えてから、平塚は元の人間の形へと戻る。ロケット弾の反撃は想定外だったようで、大騒ぎになっていたが、次第に落ち着きを取り戻しているようだ。方東組側の交渉役をしていた男は攻撃中向こう側に隠れていたようで、攻撃が終わってからようやく顔を出して、それから緒方らに話しかけてきた。
「なぜだ、魔術が使えんはずだが……」
「一つ、忘れているようだな。魔術を使えるのは5つの種族。うち魔術を使わなくても身体を変化できるのは2つ。化狼と精霊だ」
「……そうだったな。となれば貴様は精霊か。化狼は決められたもの、おおよそイヌ科の動物の1種類しかならんからな。それぐらい大きく変えられるのは精霊族だけしかおらん」
どうやら彼は魔術の最低限の知識はあるようだ。
「さあ、分かったところで銃を降ろしてもらおうか。それと、製作者に合わせてもらうか、魔術ドラッグそのものをよこしな」
警察や警吏といった物事ではない。しかしここは負犬地区。それを気にする者なぞ、誰一人としていない。男は舌打ちをして、少し待っとけ、とだけ言い残して向こう側へと降りた。




