第32話
フッと男の右手は振り下ろされた。瞬間攻撃が始まる。最初の攻撃はロケットのようなものだった。魔法を使うことは困難が伴う状況であるため、どうしても物理攻撃が主になる。それでも攻撃力を強めようとすると、ロケット弾のような、とにかく爆発力が大きいものを選択するのも一つの手だろう。
「来たぞ」
「はいはい」
これらの方東組からの攻撃を、緒方は何もせずにただ平塚に告げる。すると平塚は少し疲れた顔をしつつも、再び体を変化させる。まるで防潜網のような形になると、飛んできたロケット弾を全て受け止めていく。着弾と同時に爆発するようにセットされているのか、その着弾をしたという認識がないままにロケット弾は沈黙をしていく。根来と放出はその網のおかげで攻撃を受けずにすんでいた。
この光景を見た方東組の組員らは少しの驚きと、次の攻撃を指揮する声が入り混じっていた。
「次、どうする」
何かから声が聞こえてくる。
「落し物は落とし主に返すのが筋だろう」
「了解」
平塚は網だった体をまた変え、今度は投擲をするかのような投石器の形をとる。
「では、お返ししましょう」
投石器ではあるが、石の代わりにロケット弾をそのまま投げ返していく。ドンドンと落ちていくたびに爆発する音が聞こえてきた。




