第25話
手野コンビニに入ると、まずは風が吹いてくる。外とは違い、涼しい、クーラーがしっかりと効いた風だ。
「ぃらっしゃいませー」
レジ裏で何か作業をしている店員が、ドアの開閉に合わせてなる電子音に気づいて声をかける。だが、4人の姿を見ることはない。少なくとも、本物の目では。
「やっぱりコンビニ、とえいう品ぞろえだな」
平塚がきれいに並べられている棚の中をみながらつぶやく。とはいうものの、外のコンビニではお目にかかれないようなものも売っていた。
「おい、これは合法なのか……いや、ここで合法とか聞くほうが間違ってたな」
売っていたのは、明らかに軍仕様の拳銃だった。さすがに実物が並んでいるわけではなく、写真と値段表だけではあるが、それでも買うことはできるだろう。外から持ち込みができるのは手野武装警備の限られた人数だけだから、他の人らはこうしてこんなところで買うしかないのだろう。
「あ、これ外じゃもう販売終了になったやつだ」
かたや女子勢2人は壁際のお買い得と書かれたコーナーを眺めている。そこでは人形が何列かにわたり積まれていた。どうやらその中の一つが、すでに終わったキャンペーンのものらしく、興味津々でつついている。
「緒方、これだな」
その中で仕事をしているのは平塚ぐらいなものだ。緒方はというと、飲み物コーナーでコーヒーの棚をじっと見つめ続けていた。
「ああ、これだな」
平塚は手にはこの地域の詳細地図を持っていたが、緒方は冷蔵庫の棚からキャップ式の缶コーヒーを一つ取り出した。
「まとめて買っておこう。と、ここはポイント溜まるのかな……」
だが、ポイントカードは今は持っていないことに気づいた緒方は少し残念そうな顔でレジへと向かった。




