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第2話

 パトカーの1台を借り、緒方と平塚はすぐに自分が所属しているところへ戻る。大阪府手野市にある手野警吏所だ。警吏所というのは、要は警察署だと思えばいい。到着するなり、そこの所長室にすぐに向かい、ノック3回でドアを開ける。

「お帰り、御二方」

 待っていたのは椅子に座った50近くの男性、それと二人が見たこともない女性2人だ。男性はその服装から警吏官で、手野警吏所所長だ。だが、女性二人は背広を着ていて、どこの所属なのかはわからない。ここにいるということから推定するに、彼女らも警察かあるいは警吏か、そのどちらかだということのはずだ。

「所長、そちらの女性の方々は」

 所長は緒方からの質問に答えた。

「警察だ。実はな、大阪警視庁からの正式な依頼があった」

 警察。その言葉で一瞬ではあるが露骨に嫌な顔をしたのは平塚だった。こういう言葉を聞くときに、いい思い出がないのだろう。それが気取られたかどうかを確認する術はない。

 そもそも大阪警視庁は俗称で、本名を大阪府警視庁という。その名の通り、東京にある警視庁と同様に、大阪府の警察組織だ。大阪府公安委員会により管理されており、他の都道府県警察と同じく、警吏官とは法的には協力関係にある。

「わざわざそれでこちらに出向いてくれはったんですか。お疲れ様です」

 似非関西弁の口調だ。平塚がこういう時には、たいがい嫌だという意思表示。しかし、それでもこれは仕事だからしなければならないということのようだ。特に、公式な任務としての共同捜査となるらしい。

「……まず、こちらの紹介といこう。この女性二人は大阪警視庁手野警察署からの出張という形で合同捜査班を組んでもらう。根来一二(ねごろひとふた)警部と放出桜(はなてんさくら)警部だ。二人とも一般人だ。魔術耐性は常人並み」

「よろしくおねがいします」

 まず放出が手を差し出し握手を求める。

「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」

 握手をするのは緒方、それから平塚の順番だ。放出の握手に引き続き、おなじようにして根来とも握手を交わす。所長が今度は放出と根来に二人を紹介する。

「それで御二方、こちらは緒方正史警吏官員と平塚沢辺警吏官員だ。緒方は魔術師、平塚は人形精霊に分類される魔術種族だ」

 所長がそれぞれを紹介する。先ほど握手を交わしたとあってか、今度はそのままお辞儀をするにとどめた。

「人形精霊は言葉には聞いていましたが、初めてお会いしますね」

 根来がまじまじと平塚を見ながら言う。この世界には2種類の知的生物がいるとされる。魔術を使えるものと使えないものだ。使えない者を一般人と呼びならわし、使える者を魔術種族や魔族と呼ぶ。この魔術種族には、最も人数が多い魔術師、次いで化狼(かろう)、夢魔、吸血鬼、精霊、そして獏の6種類いるのが分かっている。これらのほかに、魔術種族の家系外で突然魔術が使えるようになった者を超能力者と呼ぶことになっている。ちなみに、全世界で魔術師は8億人登録されており、精霊であっても3000万人いるが、獏だけは特殊で全世界でおおよそ10万人しかいない。これは魔術種族の最大の謎とされる。精霊はその標準状態と呼ばれる本人が最も落ち着く状態での大きさによって小型から大型まで区分される。おおよそ150cmを超えると大型とされ、精霊の形をとる際に人形である者を人形精霊とよぶ。平塚は身長160cmを超える大型の人形精霊である。そのため、根来よりも頭ひとつ高く、放出ともほとんど同じ身長になっていた。

「さて顔合わせが終わったところで、本題に入ろう。この資料を読みたまえ」

 所長が、それぞれに冊子を配る。表には魔術ドラッグの販売についてとのみ書かれていた。冊子としても20ページくらいの、ホッチキス留めされた手作り感あふれる冊子だ。

「これは、最近判明した魔術ドラッグの冊子だ。中はその作り方、作用方法、より効果的な方法がイラスト付きで書かれている」

 所長の言葉を聞きつつ、それぞれはそれぞれのペースで冊子を読み進める。何かの小学生向けの教科書のような体裁だ。中身はまったくもってロクでもない代物なのだが、ほんわかした牧歌的な雰囲気すらかもしだしている。

「作り方まで書いているなんて、親切ですね」

 パタンと閉じた放出が感想を言った。

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